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ザ・ヘルプフルソウル "The Helpful Soul First Album 〜ソウルの追求〜"




 01.Blues for my baby
 02.Fire
 03.Peace for fools
 04.You got me floatin'
 05.Spoonful
 06.Kansas city
 07.Crossroads

 ●The Helpful Soul
  ジュニオ・ナカハラ(vo.g)
  チャールズ・チェー(vo.b)
  ジーン・ショウジ(g)
  司英一(ds)


 (LP/SJET-8118/Victor/'69)
 (CD/PCD-1532/P-VINE/'96)

 ◆missing link = ルパン三世(旧)、千夜一夜物語、電撃ストラダ5、荒野の少年イサム etc...




 結論から先に言ってしまうと、『ルパン三世(旧)』の主題歌歌手であり、近作『Lupin The Third - TAKEO YAMASHITA "Rebirth" From'71 Original Score』でも、衰えを知らぬ素晴らしい歌声を披露している、チャーリー・コーセイ氏が在籍していたバンドです。この盤でのパーソネル表記は「チャールズ・チェー」となっています。 '71年の『ルパン三世(旧)』初回放送から、数限りなく繰り返された夕方の再放送を通じて、我々の脳裏に徹底的に擦り込まれた「チャーリー・コーセイ」というナゾの名と、当時のアニメ主題歌の常識を完全に超越した、あまりにもカッコいい、オトナの歌声…… その音楽性のルーツがここにあります。

 「ザ・ヘルプフルソウル」は、'64年頃、神戸のアメリカンスクールの学生を中心に結成された"ザ・ヤングビーツ"を前身とするバンド。本盤のような4人編成になり「ザ・ヘルプフルソウル」と名乗るようになったのは'68年頃から。ビートルズのデビューが'62年、ようやく日本でメジャーになってきたのが'64年頃ですから、もうその頃には存在していたわけですよ。恐るべきキャリア! '66〜65年頃のベンチャーズ、寺内タケシ、加山雄三等のエレキインストブームを経て、'67年頃から、世は爆発的なGSブームに突入。百花繚乱のGSバンド群が、様々な珍プレー好プレーを繰り広げていた頃です。そんな中にあって、デビュー前のヘルプフルソウルがレパートリーとしていたのは、アニマルズシャドウズスペンサー・デイビス・グループ、ストーンズ、ビートルズ等々……とまぁ、見事にイギリスものばかり。めっちゃ硬派! 多くのメジャーGSバンドが、歌謡曲方面の職業作曲家によるアイドル歌謡ロックを演ってるので、その頃のアマチュアバンドも、みんなそんなんばっかし? ……とか思いがちですが、少なくともヘルプフルソウルは大違いだったみたいですね。ホンマモンのブリティッシュ・ビート、しかも若干R&B寄りな、ブルース的雰囲気の強いバンドにインスパイアされていたようです。

 '69年頃から、GS人気がだんだんとシボみかけてくるのと入れ替わりで、上記のようなブリティッシュ・ビート系のバンドの影響を強く受けた、本気のロックバンドが日本にも出現し始めます。GSのアイドル路線にヘキエキして、より高い音楽性や演奏内容を求めるミュージシャンが多かったのではないでしょうか。これらが俗に「ニュー・ロック」「アート・ロック」「ブルース・ロック」等と呼ばれるバンド群です。ヘルプフルソウルもこれらの中に位置づけられますが、GSからの転向組みとは違い、彼らが目指していたのは最初っから「ロック」であったことは上で述べたとおり。数あるニュー・ロックのバンドの中でも、希有な「筋金入り」だったわけですね。
 当時は、「ロックを日本語で唱うのはアリかナシか!?」なんてことについて、国論を二分するほどの大激論(←大げさ)になっていた時代、ネイティブ英語のヴォーカルが迫ってくるヘルプフルソウルのインパクトは、並大抵ではなかったようで、同じくネイティブの英語ヴォーカリスト、ジョー山中を擁するバンド「フラワー・トラベリング・バンド」と共に、 『東のフラワー・トラベリング・バンド、西のヘルプフル・ソウル』と、その実力を並び称されていたとか…… 

 さて、この『The Helpful Soul First Album 〜ソウルの追求〜』の内容ですが、ファズの効いたギター・サウンドを前面に出した、サイケデリック色の強いブルースロック……といった感じです。現在のようにMIXダウン時に余計なエフェクターをかけすぎたりしてないので、実に生々しい、ピュアな「バンド」の音がします。バンド経験者や、ロックギター好きのリスナーには、かなりタマらんものがあるはずです。全7曲中5曲がカヴァー曲です。内訳は、ジミ・ヘンドリクス2曲、クリーム2曲、ウィルバート・ハリスン1曲。残る2曲はヘルプフル・ソウルのオリジナル。当時、気鋭のニューロック・バンドであっても、アルバムはカヴァー曲ばかりで作るのが常識であった中、2曲のオリジナルが収録されているこの盤は、画期的だったとか。(つづき)

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