ロロ・ジョングラン

ジョグジャカルタ特別州のチャンディ・プランバナンは、別名「チャンディ・ロロ・ジョングラン」と呼ばれる。「チャンディ」とは「寺院」という意味で、ここには9世紀頃に建てられた寺院建築群がある。

プランバナンはヒンドゥーのシバ神に捧げられた聖域で、そこにある寺の数は約200。それらの建造については、次のような話が伝えられている。

偉大なる王ラツ・バカの娘ロロ・ジョングランは、若い貴族のバンドゥン・バンダワサにプロポーズされた。彼はハンサムで金持ち、権力もあったが、ロロは彼と結婚したいとは思わなかった。

ラツ・バカはバンドゥンを遠ざけようと、彼に難題を課した。ロロと結婚するのに、一晩で1000の寺院を建てるよう命じたのである。バンドゥンは霊力を使って精霊を呼び集め、ものすごいスピードで寺院を作り始めた。

そこでロロは、 古典的なやり方で彼の邪魔をしようとした。彼女は召使いたちに米をひくよう命じ、料理を始めているかのような音を立てさせた。精霊たちは朝が来たと思い、仕事が終わらぬうちに帰ってしまったのである。

すでに999の寺院を作り終えていたバンドゥンは彼女の仕打ちに怒り狂い、彼女を呪って1000個目の寺院に閉じこめてしまった。

プランバナンの最大の寺院には、シバの妻の一人である ドゥルガの像があり、これはロロ・ジョングランの姿だと信じられている。

歴史家によると、この言い伝えは、史実に基づいているそうだ。
9世紀の中央ジャワで、ラカイ・パタパン・プ・パラルという男が、シャイレンドラ王朝に反旗を翻した。サマラトゥンガ王は恐れをなして、娘のプラモダワダハニをラカイの息子、ラカイ・ピタパンと結婚させたのである。ラカイ・ピタパンはやがて中央ジャワと東ジャワの王となり、915年にプランバナンの寺院群を完成させた。


マリオ・ルスタン



チャンディ・ロロ・ジョングラン
ロロ・ジョングランはインドネシア最大のヒンドゥー寺院で、仏教寺院ボロブドゥールと並ぶジャワ島の観光名所。 BACK

古典的なやり方
音を立てて精霊の仕事を邪魔するのは、インドネシアの神話では常套手段の一つ。「タングパン・パラフの山」でも、結婚をいやがる女性が麦をひいて幽霊や精霊の仕事を邪魔しています。 BACK

ドゥルガ
ドゥルガは女神と言えど「破壊」を象徴し、10本の腕に武器を持ち、トラまたは獅子に乗ったブキミな姿で表されます。 BACK





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