私の好きな平泉 1
 中尊寺大長寿院脇の竹林

中尊寺大長寿院脇の 竹林
 (2003年12月30日 佐藤撮影)


 
 中尊寺で私の好きな場所がある。大長寿院だ。金色堂を拝観し、経蔵拝んで、芭蕉さんの銅像にちょっと会釈をして、旧さや堂を出る。そこからなだらかな坂道を少し下ると、左に山門があって、奥に大長寿院の本堂が見える。

この寺は、歴史ある中尊寺の中でも、最初院と呼ばれる多宝塔の次に古いもので、初代清衡公が嘉承三年(1107)に建立したとされる。この本堂の奥(今でいえば白山神社の能舞台の前の附近だろうか)には、あの頼朝を驚かせたという阿弥陀堂(二階大堂と称される)という高さ15m(5丈)にも及ぶ巨大な伽藍が天に向かってそびえていた。当時、そこには何と9m(3丈)もあるという巨大な阿弥陀仏が安置され、周囲には、4.8m(1丈6尺)の脇侍が九体控えるという壮大なものだった。余りの荘厳ぶりと巨大さに、奥州を侵略した頼朝は、腰を抜かさんばかりに、驚いたということだ。もちろん今は焼失してない。

現在の大長寿院は、小さくもなく大きくもない程良い大きさの御堂で、周囲には竹林が空高く真っ直ぐに伸び、竹林の向こうには、巨大な杉の大木が白山神社の参道を形成している。その杉の大木の根本は、まるで鞍馬山のような木の根道のようになっている。昼でも薄暗い参道から見ると、竹林と杉の大木に囲まれて、大長寿院の姿はまったく見えない。余分な枝を刈り整えられた竹林の清冽な美しさに、しばし見取れていると、首が少々痛くなっていた。頼朝もこんな風に9mの阿弥陀仏を仰ぎ見たのであろうか。

大長寿院は、庭がいい。春に芽吹いた紅葉が、秋には真っ赤になって、この庭を染める。この庭から見る旧さや堂の屋根の反りが実に風情がある。800年という気の遠くなるような歳月をひたすら金色堂を守るために凛としてこの地に聳えていたのだ。役目を終えた今も、この旧さや堂の美しさは変わらない。竹林を揺する風の音が、訪れる者を、別世界に誘ってくれる。とかく喧噪の中であくせくとしている現代人にとって、この清々しさは格別だ。佐藤

来て見よや奥州掠めし大盗が腰を抜かしし二階大堂
月見坂歩き通して中尊の古寺に祈らん幸多かれと

 

 


2004,1.18
 

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