発見ガイド

準備探索場所歩き方見つけたら声をかけられたら

準備

■カメラ

 トマソンの探索にあたってはどんな準備が必要でしょうか。 トマソンはとにかく記録することが重要です。どこそこにトマソンがあるということを知っていても、あなたが知っているだけでは実にもったいない。またトマソンははかないものです。何ヶ月かたったらなくなっていた、ということも間々あります。
 ということでまずカメラは必携です。鮮明な写真がとれるようできればインスタントカメラよりはピントが合わせられるようなカメラがよいでしょう。私は35mmの一眼レフ、レンズは28〜35mmの広角ズームを使っています。広角は物件からのひきが十分とれない場合などに便利です。
 デジタルカメラも普及しましたが、100万画素でも情報量がアナログに劣るため、のちのち印刷するということを考えると、まだ私は使う気がしません。しかしWebサイトに載せるには非常に使いやすいアイテムでしょう。

■地図・メモ

 これらはオプションです。ある地区を網羅的に歩くのでなく、散歩がてらというのであれば地図は不要でしょう。またメモは物件の所在地をメモするのに必要ですが、私はカメラで住居表示板を写す方法をよくとります。
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探索場所

■どこを歩くか?

 トマソンの発見にはどんな場所を歩き回ればよいのでしょうか。
 まず対象とする地区ですが、これまでの経験では、ある程度以上の歴史をもったところに多く見つかる気がします。先日向島あたりの戦災の時にすっかり焼けて戦後復興した界隈を歩きましたが、あまり収穫はありませんでした。トマソンの発生には改修や改築の必要が生じる程度の街としての成熟が必要なのでしょう。あとはトマソンの匂いを求めて歩き回るのみです。
 以下に地区の性格ごとにトマソン探しの着目点を挙げてみましょう。

■業務地・商業地

 基本的に建物が軒を接して立ち並んでおり、外観にもそれなりに気を使っているのであまり大物は見つからない気がします。ただテナントが変わって改修をしたりしてトマソンが発生したりします。看板などにも注目です。

■公共施設

 特に歴史のある公共施設は要チェックです。公共施設には増改築をうけやすいというトマソンの発生に適した環境があります。またもとの建造物が、ある程度質の高いデザインの場合、いきおいトマソンも立派なものが生まれやすいということがあります。

■工場地帯

 これは歩きづらい場所です。街自体の面白みも少ないし、休む場所もないし、一つの区画が大きいため途中で引き返そうにもかなりの距離を歩かされます。ただ施設が大きいだけに思わぬ大物が見つかったりするので、なかなかないがしろにできません。
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歩き方

■見るポイントを決める

 トマソンは到るところに現れます。路面しかり、塀しかり、壁面もまたしかり。したがって、歩くときにはいきおいきょろきょろと周囲を見回しながら歩くことが必要になります。しかし初めての場合は、とりあえず見る箇所を決めて歩くとよいかもしれません。路面のみを見て歩くとか、壁面だけをチェックするとか。

■逆方向に歩いてみる

 また同じ道でも、逆方向に歩くと新たな発見があります。自分の進行方向をむいている壁面や歩いている側の物件は目立ちにくいものです。通勤路や通学路など毎日歩く道でも、歩き方や道筋を少し変えると思わぬ発見があるということです。

■各自のやり方で

 あとは決まった歩き方などというのはありません。経路を決めて歩くもよし、嗅覚にまかせるもよし。気合を入れて探すもよし、散歩がてらでもよし。それぞれが一番歩きやすいやり方で臨むのがよいでしょう。
 特に夏場や冬場に一時間以上連続で歩き回るのは辛いものがあります。頭がボケたり手がかじかんだりおしっこがしたくなったりして正常な判断が効かなくなります。喫茶店などで十分休養をいれながら気楽にダラダラ歩きましょう。
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見つけたら

■疑わしきは撮影せよ

 おやこれは?と目に留まるものがあればまず立ち止まって十分観察しましょう。その結果ただの門だったという場合もあるでしょうし、思わぬ名品の発見に至る場合もあります。
 しかしどうしてもその場では判断に困る場合もあります。疑わしい場合はとりあえず撮影しておきましょう。後から同じ場所に撮影に出向くのは億劫なものがありますし、場合によっては次に行ってみたらなくなっていた、ということもありえます。

■なにはなくとも鮮明に

 撮影は鮮明をもって良しとします。トマソンの撮影は芸術ではなく記録です。私はカメラは専門外ですので色々なテクニックのことは知りませんが、ピントを慎重にあわせ、絞りはできるだけ絞って写しておけばまあ間違いはないでしょう。物件に細かい構造が認められる場合、アップで写すのもよいでしょう。

■住所・状況を忘れず記録

 全体の撮影だけで終わってはいけません。状況の記録、少なくとも住所の記録は必須です。私などはノートを持って歩くのはかさばっていやなので、住居表示板を撮影して済ませています。
 発見から撮影までの一連の動作は堂々と行いましょう。自分にはこの建物を観察したり、撮影したりする当然の権利がある、というくらいの威厳が必要です。妙におどおどとしていると却って怪しまれます。
 それでも時々怪しんで声をかけてくる者がいます。次にそうした場合の対策を紹介しましょう。
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声をかけられたら(民間人対策)

■対応は余裕を持って

 実は今これこれこういう活動をしていて、と一から説きおこすのは不適切です。トマソンを知らない人に言葉でトマソンを説明するほど大変なことはありません。
 まず相手の質問をさらりとかわして、「このドア、変じゃないですか」「この階段、いつからこうなんですか」などと、自分の興味はこのドアや階段にあるんだよ、ということをそれとなく伝えましょう。実はトマソン所有者に物件のトマソン性を気づかせてしまうのはトマソンの保護上得策とはいえないのですが、この場合やむを得ないでしょう。
 そうしてうまく質問をかわせたら、もう一回物件をひとわたり眺める位の余裕をみせてから、今までと変わらぬ歩調で歩み去りましょう。

声をかけられたら(警官対策)

■食い下がらない

 大国の大使館や宮内庁関係の施設、官庁などが集中している地区(って、東京だけか)で建物を撮影していると、十中八九職務質問をうけます。敵もさるもので、最初に見つけた警官はそしらぬ顔でやりすごしておきながら、しばらく歩いたあたりにいる警官がやおら近づいてきて声をかけてきます。
 警官が近づいてきたからといって表情を固くし、立ちつくしてしまうのはいけません。質問の時間が5分は長引きます。さらにまなじりを決して「一体あなたは何の権利があって…」と食い下がるのはもっといけません。質問が20分は長引くでしょう。むこうも職務上見過ごすわけにはいかないのでやっているだけです。一介の善良な市民を装い、さらりと受け流すのが一番です。
 警官はまず、何をやっているのかと聞いてきます。ここでももちろんトマソンの説明は避け、「実は建築の写真を撮るのが趣味で…」というような説明をしておきましょう。大抵それで納得し、それ以上つっこんだ話は聞かれたことがありません。

■身分証明書の携行、本籍地を確認しておく

 次に身分証明書の提示を求められます。免許や社員証などは携行しておいた方がよさそうです。
 さらに本籍地を聞かれます(県、市まで)。普通本籍地のことなどあまり考えないので面くらうのですが、私はたまたま結婚時に本籍地を移動したので知っていました。住所とは異なることも多いので、本籍地は一度確認しておいた方がよいでしょう。
 相手が本籍地と名前をトランシーバーでどこかへ連絡し、確認がとれればそれでおしまいです。この場合も、その場で一枚写真を撮るくらいの余裕を見せて歩み去りましょう。
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