付三  栗駒の地名

 


郷土の地名を考えて見たい。伝説、民話につながる問題もあり少しばかり価値があると思われるからである。
 
   栗駒町沼倉字栗駒

1 栗駒 クリコマ この部落の北西方に栗駒山(標高1627米)がありこの山の故に町名となった。沼倉の
  菅原寿喜氏所  蔵の古記録に、「残雪に白紋の駒形が現れるにつき古歌に栗駒と詠まれていたので栗駒山
  と言う」と誌るされている。

     夫木集
 御狩する栗駒山の鹿よりもひとりぬる夜は悲しかりける
 いかでわか栗駒山のもみぢ葉を秋はたつともいろかへて見ん

     六帖
 みちのくの栗駒山の朴の木の枕はあれど君がたまくら
 もみぢみる栗駒山の夕影をいざわが宿にうつしもたさん

2 沼倉 ヌマクラ 往古より三迫沼倉邑と呼ばれていた。(前記に仝じく)
  栗駒山麓に鞍型の沼があるために沼鞍村と呼ばれる。
  「栗駒山麓に八十町歩の院宣を以て下向(恵美)小治郎忠道の設立にて
  満徳山沼鞍寺とあり四十坊ありた   り」

3 玉山 タモヤマ 一番奥の部落、栗駒山の麓の部落で明玉山があるので略して玉山と言われる。

4 明玉山 アカタマヤマ 往古、有る夜に大音響とともに天より光る物体が森の中に落ちて来た。その物体は
  七日七夜通して光ってその辺を明るく照らしていた。村人はその森を明玉山とと呼んだ。光る物体はやがて
  光を失って大きな医  師となって残った。これは流星のかけらと言われるが村人はこの石を、神に祭り明
  玉神社という。この神社は切支丹の神とも言われる。

5 落合 オチアイ 栗駒山より流れる貝堀川と、御沢が合流するところにあるので落合と言われる。

6 行者滝 ギョウジャタキ 往古、栗駒山を踏破する行者が行をした滝である。

7 腹見坂 ハラミザカ 栗駒山登山道で一番長い急坂であるので、後から登る者の腹を見るのでハラミザカ、
  と言う。又、腹の大きい女が落ちて死んだので、ハラミザカとも言うとあり、坂の上に祠が建ててある。 

8 駒の湯 コマノユ 往古放馬の足跡よりわき出た湯であると言われる。

9 窓滝 マドダキ 岩の内より流れる滝が窓より流れるように見える。御沢川にある。

10 股内 マタナイ 股内滝と言う滝があるのでマタナイと言われる。岩の形が極めて象徴的で水流の細い時
   は女性器を連想させる。九渡沢より迫川より合流する地点にある。

11 九渡沢 クドノサワ 岩手県の小猪岡に通じるに流れを九度渡らなければならない。

12 米粉立 コメゴタチ 

13  ナメリ

14 薄木 ウスギ

15 台麓嶺 ダイロクデン

16 源兵衛沢 ゲンベエザワ むかしこの沢に人間をだますむじながいて、多くの人間をだますので困っていた。
   玉山の源兵衛爺がある日このむじなをだまして生捕りにし木にしばりつけていた。
   むじなは口惜しがて泪を流して助けてけろと爺んつアさ、頼んだ。爺んつア決して許さねがったが爺んつア、
   煙草のんでいるに、むじなは木から逃げてしまった。逃げながら、ゲンベエ、ゲンベエ、叫んで逃げた。
   その時から源兵衛沢と言った。

17 長者森 チョウジャモリ むかし秋田の雄勝郡稲庭町に長者が居り、あるとき一人の若者が長者を尋ねて、
   ソウゾクトリ(注 作男のこと)に使ってもらうことになり住み込みました。ソウゾクトリは一ケ年の年極
   めで働く作男でありましたので、正月11日に長者と賃金の約束をして、12月20日に年期になることに
   なっているのでしたが、この若者は正月11日に長者との約束は秋の刈り上げまでとして一背に稲を背負う
   だけときめましたから、欲の深い著じゃは大変安くつく勧請でよろこんで約束しました。若者は正月中に堆
   肥作りし、2月には1ケ年に焚くだけの薪を伐り3月と4月は田打ちをして、5月は苦しい代掻きなど重労
   働もよろこんで一生懸命に働きました。長者は大変感心して田植もいつも6月までかかっていたのを5月注
   に済ませました。7月の炎天には苦しい田草取りも休みなく働きましたので、やがて秋の取り入れとなりま
   した。長者は例年にない豊作にすっかり満足していましたが、やがて若者は、長者に申し上げました。「だ
   んな様いよいよ約束の時となりましたのでお約束の稲をいただいて参ります」と言いました。長者は「ああ
   今年はお前のおかげで上作であったから、背負いに良いだけもって行きなさい」と云いました。若者は「あ
   りがとうございます。では荷縄をなう藁を少しいただきます」と言って、毎日毎日荷縄をなっていました。
   やがて藁にお、一つ分を縄作りに使って、長者の家で一年作付けした一野(いちの)の稲を一背に背負って
   奥羽山脈を越えて帰って行きました。長者は驚いて「そんなに持っていかねでくれ」と言いましたが、若者
   はお約束ですからと、取り合いませんでした。
   長者も此には困ってしまいました。泣く泣く来年の種もにだけでも置いて行ってくれと頼みましたので弐把
   だけは残して帰りました。そのむかしは長者のいた処を、稲弐把と、呼ばれていましたが、今は字を改めて
   稲庭とよばれています。若者は奥羽山脈を越えて栗駒に帰り、ようやく荷物をおろしました。そこが長者守
   と呼ばれております。今屋敷の跡でしょうが広い原になっています。

18 糠森 ヌカモリ 秋田から帰った若者が脱穀した場所と言われる森。

19 にお積森 ニオツモリ 脱穀した藁をにおに積んだ場所である。

20 焼込入り ヤッコマリ むかし山焼きしたとき此処で焼き終わりになった処。
   栗駒山から常時風が吹き付ける場所なので野火がここで消えるために言われる。

21 空堀 カラッポリ 雨が降れば水が流れるが常時は空である沢。(砂防学では野渓と言われる)

22 根堀沢 ネホリザワ 食用になるわらびの根を掘った場所。

23 根洗場 ネラッパ 凶作の年は食用に、わらびの根を堀り澱粉をつくって、露命をつないだ。
   そのときのわらびの根を掘った場所。

24 一枚平 イチマイヒラ 沼ケ森の迫川に面した斜面。

25 立沢 タツザワ 急斜な沢で、立っている沢である。

26 あてらくら 迫川に面した左岸にあるガケ。

27 赤つぶ アカツブ 常時湧き水が濁り、赤いカナが流れている。
   硫黄の臭いがある場所迫川まで赤く濁っている。

28 洞満 ドウマン 不明、下流に炯屋(けいや)あり。

29 折戸 オット ここから奥が、イリ山(奥山)であるので、萩山、萱山の期日を定めて柴を折り木戸を作
   り、木戸万人を置いて監守した場所。萩山は二百二十日の翌日、萱山は立冬の翌日鎌入れ、とされていた。
   鎌入前にイリ山の入山は禁止されていた。イリ山と、里山の境である。

30 上戸  アガト 九渡沢の道路から、迫川を渡ってここに上がった場所、あがりどころ。

31 法師腹 コッチサアハラ 行者瀧で修行の法師が大蛇に追われて逃げるとき倒れた場所。

32 鹿超戸 シシコエド 迫川の上流であって両岸が狭まり、迫川の最狭部わずかに4、5間巾
   であるので、栗駒山に住むアオシシ(注 カモシカ)など動物は自由に飛び越えて渡った。

33  造り滝 ツクリダキ 迫川の峡部に人工の滝を造り、鱒鮭や、
    鮎などを漁獲した場所。2尺くらいの鮭をとったことは良く見かけられた。鹿超戸の下方。

34  御附金 オフガネ むかし平泉に寄寓していた義経公が狩りにきた。
    沼倉は平泉に近く四季折々義経公が訪れている。その折あるとき、
    御附金不動を勧請し、川台の中腹の岸壁に不動明王をまつった。

35  毒水沢 ブシミツサワ この沢の水を飲んではいけない、と言われている。
    年に一度毒水が涌くので腹痛をおこすからといわれる。
    又は沼倉飛騨守、天正年中伊達政宗に攻められた際、
    この清水に毒をはなして秋田領に雄勝郡へ逃れ、追跡の敵の将兵を苦しめたと言われる。

36  鋳銭 イセン むかし仙台領にて貨幣を鋳造して場所、今は田畑となっている。そのときの鉄くずが出土する。

37  風穴 フウケツ 風穴あり、営林署にては、すぎ、まつ種、樹種子の保存に室を造り使用している。

38  大原 オオハラ
39  上田 カミダ
40  中堀 ナカボリ
41  新堀 シンボリ
42  畳石 タタミイシ
43  滝ノ原 タキノハラ
44  中田 ナカダ
45  兎沢 ウサギサワ
46  沼袋 ヌマブクロ

47  城内 ジョウナイ 沼倉村の城内の地である。城内の佐藤義衛宅には城主飛騨守の使用した手洗鉢あり、庭石にしている。
48  山下 ヤマシタ ヤマシタ一氏居である。

49  八幡 ハチマン 八幡社がある。

50  山田 ヤマダ 

51  松葉 マトバ むかし的場であったが字を改め、松葉。

52  長林 チョウリン 法華宗学花山長林寺の跡である。

53  宮野 ミヤノ 
54  似仙 ニゼン 

55  都田 ミヤコダ むかし惠美朝臣勅使として下向のみぎり開田された場所

56  高津屋敷 タカツヤシキ  (勅使の住まわれた場所)
57  勅使屋敷 チョクシヤシキ (同上           )

58  火の沢  ヒノサワ

59  桑畑   クワバタ
60  林    速日(ハヤヒ)神社を祀る。
61  日照田  ヒデリタ 
62  釘の子  クギノコ
 
63  菰張   コバリ

64  楠沢   クシガサ

65  岩倉   イワクラ

66  永洞   エオドウ
67  日向   ヒナタ
68  原    ハラ

69      キタ
70  反目   ソロメ
71  中財   ナカザイ
 

続く
 

 



 

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2000.01.23