パソコン時代の終焉?

TI社の経営に学ぶ


もうパソコンの時代は過ぎた

本日(2000.2.2)の朝日新聞に、そのような見出しが踊っている。発言者は、TI社(テキサス・インスツルメンツ社)のトップ、トーマス・エジンバラ(CEO=最高経営責任者)という人物である。当初TI社は、メモリーチップのトップメーカーだった。それがいつの間にか、メモリー事業を日本企業などに売却し、携帯電話などに使うDSP(デジタル信号処理装置)という半導体チップを生産する企業に変身した。そして今や、DSP市場で世界50%のシェアを握るまでになっている。

一方先に売却したメモリー市場は、競争が激しく値崩れをして採算割れの状態が続いている。流れに乗り遅れた日本や韓国などのトップメーカーは大いに苦しんでいるが、これも時流というものを読めなかった経営者の経営ミスによるものだ。すべからく経営者とは時代をいち早く読む能力を要求されるどんな良いアイデアでも時流に合わなければ意味がない

確かにパソコンの心臓部であるメモリーは、人間で言えば、主食の米に当たるものだが、世界中の農村が米を作り始めれば、値段は大幅に下がって採算が合わなくなるのは当然だ。時流に合わなくなったということだ。そこでTI社は、数年前にメモリー事業部を売却し、替わりに日本の企業を20社程買収したのであった。また今後三年間で茨城の美浦に400億円の資金を投入して、DSPをつくる工場を建設し生産力をさらに増強する予定だという。現在TI社の、DSPの世界シェアは50%に達している。これだけのシェアを握っているということは、パソコンの頭脳にあたるCPU(中央演算装置)を生産し圧倒的なシュアを誇って半導体市場に君臨している高収益企業インテル社と同じで、価格決定力を持つということになる。つまり言い値で売るだけの力があるということだ。

かくてTI社は、時代の流れを見越し、古くなった資産と見なしたメモリー事業を日本企業に売却し、別のモノを生産販売する企業へと変身を遂げたことになる。この中に大いなる経営のヒントがありはしないか…。

確かにパソコンはもう古い。携帯やテレビも含めたデジタル家電の時代がもうすぐそこまで来ている。私もiモードを研究するため、携帯をドコモに換えた。もうすぐソニーのプレステ2も販売となる。デジタル家電の時代となれば、日本メーカーの得意な分野でもあるから、日本企業が再び世界の中で注目を浴びる可能性もある。しかしその頭脳の部分が、依然としてアメリカ企業TI社に握られているのは、何としてもしゃくな気がする。これもすべては日本企業の先見性欠如した経営感覚から来るモノだ。佐藤
 


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2000.2.2