第一回「桑畑種まき桜賞」の発表





各位 様

この度は、桑畑種まき桜の和歌・俳句募集に、応募いただきまして本当にありがとうございました。選者の千葉徹夫先生が厳正に選考した結果、以下のようになりましたので、発表させていただきます。

応募総数は、51作品。
内訳は、和歌23作品。俳句28作品でした。
 

特選 (くりこま荘にペアでご招待)
       

いにしえの農のこころを今に咲く老桜まもるひとの優しく
高橋貞一氏(栗駒町桜田宿畑)
(選評)
桑畑の種まき桜は、昔から農事暦の役を果たしてきたと伝えられている。みちのくの遅い春を待ちながら、沼倉の里人は、この桜が咲くのを心待ちにしていた。まさに種まきの時節というものを桜が教えてくれていたのである。そしていつしかこの木を、誰とはなしに「種まき桜」と呼ぶようになる。若木だった桜も、四百年の年月を経て、老桜となってしまった。それでも桜は、周囲の人々に見守られながら、懸命に花をつける。しかも今年は延年の治療まで施されて・・・。ほっとするような暖かい歌である。
 
 

一席 (桑畑特選青畑味噌三ヶ月分)
 

散り惜しむ桜に昭和遠くなり
鈴木富子女史(築館町左足)
(選評)
この句を取るには、勇気がいる。一読では、中村草田男の「降る雪や明治は遠くなりにけり」に似ていることもあり、新鮮味に欠けると、思われるからだ。しかし味わってみると、初五の「散り惜しむ」が効いていて、桜の花が何とも言えぬ儚さを以て散っていく情景が浮かんでくる。思えば昭和という時代は、戦争という悲劇と、そこからの復興の六十有余年であった。今その記憶が猛烈な速度で薄れ始めている。人は桜が咲く度に、昭和の時代を思い出すべきだ。二度とあのような悲劇が起きぬように。秀句である。
 
 
神酒含み桜大樹の木霊かな(みきふふみさくらたいじゅのこだまかな)
佐藤玲子女史(一迫町)
(選評)
作者に依れば、この句は、種まき桜の花見会の折に、桜の幹(みき)に御神酒(おみき)が注がれ、た状景を、そのまま詠ったものだという。「みきふふみ・・・」という音の響きにも、心を癒される独特の感性が伺える。下五の「木霊(こだま)かな」が効いていて、大きな桜の景色が想像される。不思議な雰囲気を持った佳作である。
 
 
 

二席 (栗駒駒形漬け10袋)
 

語り部の昔噺を聞く桜人も桜も春に酔ひなむ
三浦 幹也氏(岩手県岩手郡)
素直な歌である。何の気負いもない。歌を難しく考えすぎると、返って混乱を来してしまう。
 
 
桑畑の種まき桜咲く頃は懐かしく思う故郷の山
菅原隆雄氏(栗駒町下中山西風)
これも何の説明もいらないような素直な歌。
以上


 
 

以上、選者の千葉徹夫先生が選ばれた五作品と、以下の三首を「速日集」に収載させていただく事といたします。

満開の萬栄の桜散りゆけば迫の川に花筏浮く

旧き家の門辺に生(お)うる老桜尊く思ふ四百年経ぬ

                  以上二首千葉徹夫氏詠

淡雪の如く雲ゆく春野辺に種まき桜散り給ふなり

                  佐藤弘弥詠


平成十二年七月一日

佐藤家当主
佐藤晃弥


追記 尚、賞品は、七月十五日頃までに発送させていただきます。
 



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2000.7.1