相撲界先取の精神エールを

【欠点をあげつらうのではなく長所をさらに伸ばすこと】

相撲界の問題が、先代貴乃花の死を契機として、取りざたされている。もちろん、角界には様々な問題があるようである。だが、私は相撲界に、古い体質はあるものの、他のスポーツ団体と比べてみれば、素晴らしい先進性(先取性)を持った団体であると思う。それは次に挙げるふたつの点を考えてみればすぐに理解できるはずだ。

第一に、取り組みにビデオテープを導入しているということである。そのために、相撲では、際どい勝負に関して、間違いというものが皆無である。それは、際どい勝負には、検査役や、手を挙げて「物言い」をつけると、別室では、様々な角度から撮影していたビデオを再生して、勝負を緻密に検証しているのである。その結果、誰もが納得のいく、判断がなされる。見ていても大変気持がよい。それでも同時と見なされた勝敗については、「取り直し」が宣せられる。これと比べ、野球やサッカーでは、審判の瞬間的なジャッジが全てであるために、しばしば致命的なジャッジミスによって、勝負が台無しになるシーンを数多く見かける。ビデオの導入という先取の気風を持った導入の決断は素晴らしかったと思う。

第二に、現在、相撲の世界に強い日本人力士が少なくなってしまったが、少し前には、ハワイ勢が、この間隙を埋めてくれていたが、最近では、モンゴル勢や、欧州それも旧ソ連圏の外人力士が台頭してしてきて、相撲の国際化が進んでいる。野球などは、外人枠などというみみっちい一国社会主義的な制度を保持していて、情けない閉鎖性を持っているが、古い体質を持っていると言われている相撲界が、実はサッカー界以上に国際化が進んでいるということは、これまた素晴らしいことではないか。

相撲界は、文化の違う国の人を受け入れ、ハワイ勢の横綱でも、現横綱の朝青龍でも、当初は、様々な問題を指摘されていたが、これを辛抱強い教育によって、国技相撲の横綱として、見るに耐へ得るレベルまで鍛え上げてしまった。先の朝青龍の優勝インタビューなど、実に堂々としていて、「心技体」の充実振りが、言葉の端々に顕れていた。これもまた実に素晴らしいことではないか。

私の見解を褒めすぎではないか、と見る向きもあるだろう。しかし野球界の凋落振りと比べた時、多くの問題があったとしても、世界に相撲を開放してきた関係者の努力と先取の気風には敬意を表したいと思う。

日本人は、人の欠点ばかりをあげつらって、その人間を根っから腐らせてしまうことが多い。そうではなく、長所をさらに伸ばすことによって、それまで欠点と思われていたことも、一気に解決してしまうこともある。私は今後とも相撲界の先取の精神を信じたい。今古いと思われる体質も、国際化を進める過程で、自ずからその解決策が見えてくるはずだ。落とさなければならない古い角質が垢のように自然に落ちるということだ。相撲界の今後にエールを送りたい。

2005.7.26 Hsato

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