世相を斬る2

2.未来を託すリーダーの不在

 
別に私は権威主義の人間ではないが、いささか昨今の政治を巡るいざこざには腹を据えかねるものがあり、一言申し述べる次第である。

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21世紀も間近というのに、日本社会は経済も世相も、本当にお寒い状況が続いている。

それにしても自民党の加藤紘一議員の反乱はいったいなんだったのか、日本国家のために森総理には即刻退陣してもらうと大見得を切って起きながら、いざ国会で野党が「森内閣の不信任案」が提出され、戦う段となった時、ささっと波が引いていくように、一挙にトーンダウンしてしまった。当然の如く、不信任案は否決され、一部で囁かれていた政変劇は、自民党の中の「コップの嵐」で終わってしまったのである。

所詮、「自民党は絶対に出ていかない」という前提があった為、そこを野中広務自民党幹事長という人物に切り崩されてしまった感がある。それにしても戦いなどとは言えぬ、情けないほどの腰砕け状態では、見ているこっちが腰砕けになる有様であった。

加藤紘一氏は、父も国会議員をした二世の東大法卒のエリート議員である。英語もどこで勉強したのか、流ちょうにこなすスマートさも持ち合わせている。でもやっぱりエリートのひ弱さが、最後の最後で出た感じだった。

それにしてもひ弱さを露呈した加藤氏もみっともなかったが、もっとだらしなかったのは、森総理その人だった。こともあろうに、事実上の最高権力者と見られている実力者野中広務氏は、その直後の講演で「別に森総理は、党内で全面的に指示されているわけではない。これからもしっかりとやってもらわなくては困る」とマスコミの前で語った。昔であれば、最高実力者の内閣総理大臣に対し、このような無礼極まる言動を吐く人間など、いなかったはずだが、どうしたわけでかくも、総理大臣の坐は、軽いものに成り下がってしまったのだろう。

その後に、ASEANの会議に出発した森総理は、みっともなさを通り越して哀れにさえ見えた。そこで今回の政変劇を中国や韓国のリーダーから慰められたらしいが、これは単に自民党というだけではなく、日本という国家そのものに対する失望と、「どうしたの?」という一種の嘲笑に他ならないのである。

このような情けない日本の現状を見せ付けられるにつけ、未来を託せるリーダーのいない日本社会の21世紀はどうなってしまうのか。権威のなき社会日本の夜明けは、まだ遠くにあるようにしか見えない。
佐藤


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2000.11.30