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天才達の戦い

長野オリンピック女子フィギュアを観て


 
 
長野オリンピック女子フィギュア・スケートを観た。

世界のトップクラスの選手は、ほとんどが天才的な才能を持った選手だ。そんな天才達が、たったひとつの金メダルを目指してしのぎを削っているのだから、彼女たちの真剣な演技を観ていると、自然と目頭が熱くなる。何でこれほど真剣に、ひとつのことに一心不乱になれるのだろう。と考えてしまう。

今回の見所は、アメリカの二人の少女の金メダル争いだった。一人は中国系アメリカ人のミッシェル・クワン(17才)で96年度の世界チャンピオンであり、もう一人は、タラ・リピンスキーという15才の天才少女である。彼女は、97年度、14才という史上初の若さで世界チャンピオンになったほどの才能の持ち主だ。二人の持ち味は、まるで違うもので、女性的な雰囲気と演技力のミッシェル・クワンに対して、妖精のような容貌とジャンプのテクニックのタラ・リピンスキーの戦い、ということになっていた。

 
一日目のショートプログラムでは、ミッシェル・クワンの方が、一位となり、リードを取った。二日目のフリー演技でも先に滑ったミッシェルが完璧な演技で、これは間違いなく彼女の金メダルと思われた。しかしタラ・リピンスキーは、持ち前の驚異的な集中力と天才性を発揮し、アグレッシブな演技で、逆転優勝を飾ってしまった。

 
彼女たちの演技に、甲乙を付けるのは、本当に難しい。普通の人間からすれば、どっちが勝ったなんてまるで分からない。最後はむしろ好みの問題と言ってもいいかも知れない。男子の金メダリスト、クーリック(ロシア)なども、「私はミッシェルの演技の方が好きだ」と破れたクワンの演技を評価している。

しかし破れたクワンは「少し大事にいきすぎたかもしれない」と自分の敗因を語り、リピンスキーの勝利を讃えた。りっぱな態度である。本人からすれば、自分が丁寧に滑りすぎたことで、スポーツとしての迫力やスピードに欠けてしまったことを素直に反省しているのである。さらに「いい課題を与えられたと思って、これからも2002年まで一生懸命努力したいと思います。これからも彼女とは(タラ・リピンスキーのこと)あらゆる機会で競うことになると思います」と続けている。

私は最初、ミッシェル・クワンを、妙に大人びていて、あまり好きではなかった。しかし先のような負けた後の彼女の弁を聞いて、いっぺんにファンになった。彼女は現在17才だが、名門ハーバード大学に入学するほどの秀才でもあるという。更に自分を磨いて、自分の内面までも表現できる史上最高の女子フィギュア選手になって貰いたいものだ。

たまたま二人の天才少女は、長野オリンピックでは、金と銀、そして勝者と敗者に分かれてしまったが、二人の芸術の戦いは、今まさに始まったばかりだ。

我々も、彼女たちのような天才とまではいかないにしろ、何かしらの才能は必ず持っているはずである。その何かしらを捜しながら、我々も、彼女たちに負けないように精一杯の努力をしてみよう。佐藤
 

 


1998.2.23
 

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