オバマ2011年一般教書演説走り聞き
オバマ大統領の一般教書演説を聞いた。さすがにオバマの演説はうまく説得力がある。それ以上に感動したのは、議場にムードだ。そこには民主党も共和党もない。親和的だ。ここには党議拘束もない。内容が良いと議員たちが判断すれば、与野党の区別なく、拍手が起こる。スタンディングオベーションにも及ぶ。日本の菅直人首相の施政方針演説の時のムードとは、別物だった。

日本の菅直人氏の演説の時、野党自民党は、ほとんどの議員の表情が「何を言ってるんだ」という小馬鹿にしたものだった。まるで違う。真剣に演説の内容に聞き耳を立てている。

オバマ演説の中で、教育改革について語られた。日本ではゆとり教育からの脱却が叫ばれているが、アメリカでも教育レベルの低下が叫ばれている。かつてはネガティブな「落ちこぼれ防止法」のようなものがあったが、これからはポジティブに「レース・オブ・トップ」の政策を導入すると語っている。つまりアメリカ全土で、子どもたちが切磋琢磨して、トップに昇るレースを実行するという。適正な競争原理を教育にも導入するということと解釈した。アメリカでは、教育の機会均等が日本以上に進んでいる。奨学金制度も充実している。アメリカにおいては、能力のある人物が、奨学金制度によって、より高い教育を受けることが可能だ。

今映画でも話題になっているソーシャル・ネットワーキング企業「フェースブック」の創始者マーク・ザッカ−バーグ(26歳)ではないが、アメリカンドリームの道は、アメリカの若者には、常に開かれている。もしもこのフェースブックが上場した場合、時価総額(総発行株数×現在株価)がいっきに3兆円になると言われる。参考までに言えば、ソニー昨日の時価総額が2兆9千億円弱である。要は、市場にソニーと同レベルかそれ以上の企業が、アメリカのIT好きのひとりの若者のアイデアによって、たちまち創業されたのである。

これもそれも、アメリカの社会システムとしての才能ある若者にチャンスを与える社会的伝統が為せる奇跡である。アメリカは、金融資本主義に陥っていて、再生不能。これからは中国の時代、と叫ぶ誤った人たちがいる。たとえばフェースブックは、ネット上に独自仮想通貨「フェースブック・クレジット」を発表している。このやり方が、今後の世界の通貨制度改革の走りになる可能性だってある。アメリカ政府による後押しがあれば、これは冗談ではなくなる。

かつて、同じように「グーグル」がスタンフォード大に通っている二人の若者によって創設された時、誰が今日のように、アメリカ国家の世界戦略に見事に組み込まれて世界を席巻する巨大ネットワークに成長すると予想しただろうか。現在中国は、中国社会が、グーグルのシステムによって丸裸になることを恐れて、中国社会での自由な企業活動を阻止する政策を取っている。

このことを考えた場合、21世紀も世界は、アメリカを中心に回ると考えて間違いない。

教育改革を叫ぶオバマ大統領は、教育演説の中で、韓国社会のことを述べた。それは「韓国社会では、教師は国を創る人として尊敬されている」とのことだった。その上で、アメリカでも、ベビーブーマ世代の教師が大量に退職期を迎えることもあって、優れた教師に敬意を払うようにしなければならないと語った。その場合でも、技量のある教師と能力の劣る教師は区別されていかるべき、とも言った。

オバマは、プロンプターを見ているのだろうが、まったく演説をそらんじているように思えた。自分のものにしているのだ。議場のあちこちで、スタンディング・オベーションが起こった。まだまだ、オバマは議会の信任を失っていない。最新の世論調査でも、支持率が53%と上昇機運に変わった。

何度も言うが、「平成の開国」と「消費税率のアップ」の原稿を下を向いて読むだけの菅直人首相とは残念だが、雲泥の差がある。オバマ演説では、聞いた範囲で、日本への言及もなかった。これはもう明白に、パッセング・ジャパン・・・。(2011.1.26)

2011..1.26 佐藤弘弥

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