国会でミャンマー問題が協議されない 奇妙

− 日本はもっと影響力を行使すべきだ−

佐藤弘弥

ミャンマー(ビルマ)軍事政権は、国際的に批判が高まっている自国民への弾圧を一向に止める気配はないようだ。


国連のミャンマー和平工作不調

国連から派遣されたイブラハム・ガンバリ国連事務局長特別顧問のアウン・サン・スー・チー氏ら民主派勢力指導者との対話への説得も不調に終わった。

10月5日、国連安保理事会では、ガンバリ氏が、ミャンマー状勢を報告した。今回の訪問で、ガンバリ氏はミャンマー軍事政権のトップタン・シュエ国家平和 発展評議会(SPDC)議長との会談で、民主勢力との対話の条件を引き出した。その内容は、アウン・サン・スー・チー氏ら民主派勢力が「政府への敵対行 為、破壊活動、経済制裁への支持、その他あらゆる妨害行為をやめる」と公に宣言することだ。

ガンバリ氏は、このことを、アウン・サン・スー・チー氏にも伝えたのだが、民主派勢力が、この条件を呑むとは思えず、単なる軍事政権の国連安保理での制裁 発動を牽制する軍事政権の狡猾な動きと考えてよさそうだ。

ただガンバリ氏の訪問で、アウン・サン・スー・チー氏の消息が確認されたことはひとつの大きな希望だ。

今後、安保理では、この問題が協議される予定だが、強い制裁を求めるアメリカやイギリス、フランスなどに対し、中国やロシアなどが拒否権を使用することも 考えられ、制裁が中途半端なものとなり、結局、軍事政権の非民主的な政権への居座りが続くことが懸念される。


日本の国会はもっと影響力を行使せよ

さて、わが国は、自国のジャーナリストがデモの最中に至近距離から殺害されるという事件に遭遇したにもかかわらず、外務省も国会も音無の構えに近いとしか 思えない動きだ。長井氏が事件に見舞われる際に保持していたビデオテープも戻されていないなど、日本政府は、もっと強い態度で、このミャンマー政府の対 応を非難すべきだ。

また国会で、自民党政権はおろか野党各党も、ミャンマー軍事政権の人権弾圧に対する批判の声が出ないのは、実に不思議で情けないく思った。国際情勢の空気 が読めない国会では困る。今こそ、国連安保理の決議に魁けて、与野党のワクを越え、日本の国会としてふたつの決議を採択してもらいたい。もちろんその第一 の決議は「ミャンマー軍事政権に対する民主化要求」。そして第2の決議は「ジャーナリスト長井健司氏殺害事件の真相究明を求める」決議である。

日本が何ごとに対しても事なかれ主義を採るばかりでは、国連の常任理事国になるなど夢の夢である。今回のミャンマー問題を契機として、日本という国が、そ の経済力に相応しい影響力を行使し、国際平和に貢献してもらいたいのである。

2007.10.6 佐藤弘弥

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