毛越寺の紅葉

浄土庭園の秋



毛越寺の紅葉(表門付近)
(2002年11月17日 佐藤弘弥撮影)



毛越寺の紅葉(大泉が池の淵)
(2002年11月17日 佐藤弘弥撮影)

紅葉真っ盛りの平泉毛越寺は息が止まるほど美しい。いったん武家様式の大きな表門をくぐって境内に入ると、私の言っていることが大げさでないことが分か る。

とにかく別世界に入った気分になる。色とりどりの紅葉が美を競い合っているように見える。広くて長い新本堂までの道をゆっくりと歩むのだが、何やら落ち着 かない。ご本尊のお薬師様に手を合わせ、大泉が池に向かう。この池は浄土の池と呼ばれる南北に80m、東西に180mほどの池だが、実際に行ってみると、 何故か宇宙を目前にしたような無限の広がりを感じる。

訪れる者に極楽浄土を観じさせる意図があって造られたものである。おそらくこの辺りは、元々湿地であったと思われる。そこに池を穿(うが)ち、地形に合わ せて設計させたのが、初代清衡公であり二代基衡公であり、その完成は三代秀衡公の時代まで続いたと考えられている。池の周囲に配置された巨大な伽藍は、当 代無双と形容され、藤原政権滅亡後、長い歴史の中で灰燼(かいじん)に帰してしまった。少し残念な気もするが、私は池の面に伽藍の影が映っているのをイ メージするのも悪くないと思っている。

それほどに訪れる者の想像力を刺激し、パワーアップさせてしまう何かの力が、毛越寺にはある。私は、ここに入ったら時間を忘れ、我を忘れ、刻々と移り変わ る光と影の舞踏に浸りきってしまうことにしている。これほど想像力を喚起する造型というものは、そうそうあるものではない。

ありがたき浄土の池に佇みて行く秋の日の 光と遊ぶ


2006.11.1 佐藤弘弥

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