怪物ミノタウルス

 

あなたは「ミノタウルス」を知っているか?

ピカソ作ミノタウルスギリシャ神話に、ミノタウルスという怪物がいる。頭が牛で体は人間という異形の姿をしている怪物である。ミノタウルスは、父であるクレタ島の王様ミノスが、ポセイドンの神(海の神)へ貢ぎものをしなかった報いとしてこの世に生を受けた。ミノス王が、貢ぎ物をしないことに腹をたてたポセイドンは、牡牛を使わせて、ミノス王の妻を誘惑させる。そして生まれたのが、怪物ミノタウルスだった。ミノタウルスは、生まれながらにして、人に疎まれ嫌われる宿命を背負って生きることになる。

そのことに驚いた父ミノスは、乱暴者のミノタウルスを、巨大な迷宮ラビュリントスに閉じこめてしまう。最後には、ミノス王も殺され、ミノタウルスは、テセウスという英雄によって退治されてしまう。これはミノス一族に降ってわいた悲劇である。

ここでよく考えてみよう。するとこのような悲劇は、我々のまわりでよく起こっていることではないか…。つまりミノスやミノタウルスのような運命を背負った人間は、世の中には大勢いるということだ。誰だって何かしら宿命のような欠陥を持って存在している。もちろんそれを他人が知るか知らないかは別である。ただミノタウルスは、牛の容ぼうをしているので、その欠陥を隠しようがないだけなのだ。要するに我々人間は、みなミノスやミノタウルスのような存在なのかもしれない

誰も完璧な人間はいない。人間は、人それぞれに、何かしらの深い悲しみを抱えながら、それでもその悲しみや絶望を、希望に見立てて…あるいはそれを何かで必死で隠しながら、生きている怪物なのだ。しかもミノタウルス同様、仕舞いには、死というどうしても避けられない宿命まで背負わされている。

我々人間は、みなミノタウルスだ。佐藤
 


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1999.5.20