ヤンキース松井に神さま が与えた試練?!

【松井はヨブ記のヨブか?】

ここ最近、ヤンキース松井が面白い。一時、絶不調に陥っていたが、夏の到来と共に別人のような活躍をしている。松井の見違えるような好調振りをみるにつ け、ベースボールにも神さまというものがどこかに存在しているのだな、という思いを強くした。

松井は、今シーズンオープン戦当初から絶好調で、周囲からもホームラン40本以上で、アメリカンリーグのMVP(最高殊勲選手)の最有力候補と目されてい た。開幕直後には、立て続けにホームランを打つなどして、日本でリハビリ中の恩師長島茂雄氏から、「五〇本もいける。自信をもってガンバレ」と、松井にお 祝いの電話をしたほどだった。

ところが、しばらくすると、急にホームランが出なくなり、打率も二割五分を切るほどの不調に陥ってしまった。せっかちで気の短いニューヨークのマスコミ は、「いったいどうなっているんだ」という松井批判の論調に変わり、トーレ監督に、「なぜ松井を休ませないのか」と進言するほどの批判調の記事を書くよう になった。

それでも松井は、腐ることなく、マスコミ対応をするなどしていたが、何せホームランがまったく出ない状況が、つい最近まで続いた。私はこれを見て、旧約聖 書の「ヨブ記」を思い出した。読んだ人もいるであろうが、このヨブ記は、神さまが「ヨブ」に次々と試練を与え、これでもかこれでもかといじめ抜くような内 容である。神さまはヨブの信仰を試しているのである。

周囲には平静を装っていた松井だが、ヨブのように神を疑いはじめたかもしれない。おそらく、内面では相当の葛藤があったものと想像される。「どうしてこれ まで練習をして、あれほど自信があったのに、打てないのか、打球が上がらないのか」、と練習を放り出してしまいたいような気持ちに陥ったに違いない。ベー スボールの神さまは、まるでヨブに試練を与えて鍛えた神さま同様、徹底的に松井を打ちのめし続けた。

そして最悪の事態が起こる。足のケガである。レフトの守備で、前に来たライナーを捕球しようとして、足首を捻ってしまったのである。松井は日本時代から、 ずっと連続出場を続けている。このニュースを聞いた時、いよいよ松井の連続出場も途絶えるのか。運の悪いことは続くものだな、と感じた。

しかし実はこれがきっかけとなり、ここからゴジラ松井の逆襲劇が始まった。テーピングをして試合に登場した松井は、指名打者として打席に立ち、怪物振りを 周囲に示した。そこから松井の快進撃が始まった。理由については、右足をケガした結果、左足に体重が残るようになったことなどが指摘されている。確かにそ うかもしれない。私はそんな専門的なことよりも、松井が絶不調の最中でも、自分をしっかりと保持して、努力をし続けたことに不調から脱した原因があると考 える。ベースボールの神さまの思いで言えば、「あいつも、もうこれでいいだろう。いよいよ本物になったな」と、祝福を与えてくれているのである。

神さまというものは、時に人に大いなる試練を与えるものである。しかしどんなにもの凄い試練でも、自分がこいつはと目をかけた人間が乗り越ることも不可能 な試練をかけることはないということかもしれない。現在松井は今日も13号ホームランを打ち、打率は3割2分近くまで急上昇をしている。人は試練の時に 腐ってはいけないということを松井を通して学ばせてもらった。

2005.7.8 Hsato
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