
正門方向から西に東京ドーム方向を望む

正門を池の東に見る |
水戸光圀ゆかりの小石川後楽園に行く。この回遊式庭園は、江戸期のものとしては、初期のもので、現在国の
「特別史跡」、「特別名勝」にしていされている貴重な文化財である。もちろんかつては水戸藩のものであったが、現在は都立公園となっている。
回遊式庭園の特徴は、中央に池を配し、この池の周囲を廻りながら、季節ごとの景色の変化を楽しむ仕掛けが凝らされているものである。この様式で特に有名な
のは桂離宮がある。
ところで、小石川後楽園は、東京のど真ん中と言ってもよい位置にあり、隣には、昔後楽園球場と呼ばれた東京ドームがあり、その左に高層化した文京区役所。
右に東京ドームホテルが聳えている。それ以外にも、トヨタの東京本社ビルなど、この景勝地を取り囲むように、ビルが林立し、庭園としての価値は、想像以上
に下がっている。
一番まずいのは、この庭園の池(大泉水)に、ビルが映り込んでしまうことだ。まず正門より入ると、東の池越しに東京ドームの丸いテントが、不格好な雲のよ
うに見える。その右には、丹下健三設計の43階建て、高さ155mの東京ドームホテルが否が応でも目に入る。
それではと、池の周囲をさまざまな角度から見たが、どこから見ても、この水戸黄門ゆかりの名園が、近代建築に囲まれてしまって、息が詰まりそうな状況に置
かれていることを感じた。これでは美を感じるどころではない。
柳澤吉保ゆかりの「六義園」も行って見たが、この後楽園ほどひどいと感じことはなかった。六義園も同じ文京地区にあるのだが、小石川後楽園よりは遙かに、
高層ビルによる庭園美の消失という悪影響は少ないように思った。
この公園の歴史を紹介する「小石川後楽園」(吉川需・高橋康夫著 東京公演文庫 28)にも、しっかり「景観論争」という一項があり、高層ビルによる弊害
が述べられていた。
今後は、やはりこのような貴重な歴史的価値のある文化財を守るために、法律整備も含めた抜本的な対策が講じられなければならないと思った。
※資料写真 小
石川後楽園の夕景 |
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