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今世界で一番輝いている人物

−ルドルフ・ジュリアーニ、ニューヨーク市長−



今、世界で一番輝いている人物は誰だろう。ふと、そう考えて、すぐに頭に浮かんだのは、ニューヨークを襲った同時テロで、連日テレビ奮闘中のルドルフ・ジュリアーニ、ニューヨーク市長だった。彼は現在57歳である。市長としては二期目にあたり、八年の在任中、犯罪都市と言われたニューヨークのイメージを一変させたリーダーとして知られている。彼が前立腺ガンを患っていることは周知の事実だ。そのこともあって、昨年ヒラリー・クリントンとの一騎打ちとみられていた上選挙院議員選挙も辞退した。そしてこの12月で市長の座を退任することが決まっていた。

ルドルフ・ジュリアーニが、94年に市長となり、ニューヨークは、大きく変ったと言われる。彼の政治敵手腕により、ニューヨークは、犯罪の街という汚名を返上し、名物ともにアメリカの繁栄そのものを象徴する世界一の都市となった。かつては名物とまで言われた通りや地下鉄の壁の落書きもきれいに消えた。一時期、彼は支持者の強い勧めもあって、大統領出馬も考えたこともあると言う。
 

2001年9月11日、早朝のことだった。突如、ニューヨーク・マンハッタン上空に、二機の民間旅客機が、安全飛行空域を越えた低空から飛来し、マンハッタンの象徴ともいえる二棟の世界貿易センターに次々と衝突した。そして爆発炎上・・・。また小一時間もしないうちに、400mを越える巨大な資本主義社会のモニュメントは、二棟ともに、巨大な黒煙と粉塵を周囲にまき散らしながら倒壊してしまった。むろんそこで働いていた人や観光客を呑み込みながら・・・。それはまさに地獄絵図をみているような信じられない光景であった。

静にニューヨーク市長という栄光の座から降りようとしているジュリアーニは、前代未聞のテロ事件に遭遇ながら、一切の逡巡もなく立ち上がった。それにしても歴史とは、実に不可解だ。自分の役割は終わったと思っている人物に、その人間にしか出来ない使命を科した。彼は全能の神によって、最後の使命を与えられたとでも感じたのであろうか。ともかくニューヨークには、強いリーダーが必要だった。ジュリアーニは、自分がどんな行動をしなければならないかを直感していた。

事件発生後のジュリアーニの行動は実に素早かった。さっそく防塵マスクをつけ、現場に急行し、不休不眠で陣頭指揮をとった。火焔渦巻く中、現場で起こっている惨事をレポートしては、次々とマスコミを通じて全世界に惨事の有様を発信した。同時に、市民には平静になるよう説得し、市と市民が一丸となって、被害者の救済に立ち上がる必要を率直に訴え続けた。

連日、世界貿易センター付近の瓦礫の中を駆け回るジュリアーニの顔は、青白い顔をしていて、悲壮な感じさえ受ける。しかしそれだからこそ誰もが、ジュリアーニのひたむきで献身的な行動に、感銘を受けるのである。瓦礫の前に仁王立ちする彼の姿は、ニューヨーク市民とアメリカ国民に、大いなる勇気と希望を与えた。それはまさに緊急事態における理想のリーダーの姿だ。砂塵の舞う中を奮闘する市長の中に、神の姿をだぶらせた人だっているかもしれない。

先頃、新しい市長を決める予備選挙が行われた。ジュリアーニは立候補していないにもかかわらず、15%の市民が、「ジュリアーニ」と書いたと言われる。
ある新聞の投書には、こんなものがあった。
私たちはあなたがガンであることを知っている。でも今ニューヨークにはジュリアーニ、あなたが必要だ。私たちは全力であなたを支える。だからどうかジュリアーニもう一期市長を続けて欲しい」と。

ニューヨークは、今まだ、混乱の中にある。ジュリアーニが、発表したように、同時テロで、6千人以上の市民が犠牲になっている。事件から二週間が経った今、以前として、行方不明者の救出活動は、思うようにはかどっていない。ニューヨーク市民は、こんな時だからこそ、タフな精神を持ったジュリアーニのような強いリーダーを必要としているのだ。佐藤

 ジュリアーニ市長に捧げる
ジュリアーニ病抱えしリーダーはひん死の街を励ましてゆく
 

 

 


2001.9.26

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