格差拡大というキーワード考

ニートと ホリエモンがいる風景ー

今年は、「格差拡大」ということがキーワードにな る可能性がある。「下流社会」という新書が売れているらしい。

簡単な言葉でいえば、日本が「中流社会」から脱却したということになる。もちろん元々、日本人には、どこか均一性を志向する国民性というものがあって、 「自分も中流」、「あいつも中流」と思って暮らしてきたようなところがあった。

ところが、世の中は、まったく変化してしまった。一方で「ニート」と呼ばれるような就学も就職もしていないという社会層がどんどんと増えてくる中で、特に IT企業を立ち上げて上場したホリエモンなどに代表されるように、一夜にして億万長者になって、古参企業を脅かすような力を急につける人物もチラホラと現 れるようになった。

ニートとホリエモンという構図だけではなく、東京と地方という格差もある。地方からは、どんどん若者が減って、いるのは高齢者だけという有様である。本来 であれば、IT社会の到来は、中央と地方の格差を無くす絶好のチャンスだった。

前提は、ITインフラの整備だった。ところがITインフラの整備すら、どんどんと格差が広がっているのだ。例えば、東京の中心部にいれば、パソコンを持ち 歩くだけで、インターネットに常時接続できるサービスが、そちこちで受けられる。しかし地方では、パソコンの常時接続どころか、携帯電話すら通じないエリ アが多く存在するのである。

そこでNTTに「何故、携帯すら開通させられないか」といえば、「利用者が少なく、ペイできない地域もある」との一点張りとなる。このようなことでは、地 域間の格差はますます拡大する一方となるのは仕方のないことか。

鉄道の線路や電線、道路というものは、公共のもののはずだ。ところが地域間格差を無くすための努力は、十分になされていない。いやむしろ地方への財源移譲 が叫ばれるようになって、地域間格差は広がっている。昨日NHKで、ガン治療の地域間格差のレポートとそれを討論する番組があった。県名を出しては悪い が、秋田と東京では、死亡率が桁違いに違うのだという。素人から見れば、ガン治療の日進月歩の進展とIT技術の進歩が、ガン治療の水準を均一なものにして いるかと思っていた。しかしこれはとんでもない誤解であった。最先端の医療を地方は絶対的に受けれていないのである。

これも格差拡大の事例のひとつである。先端医療をどのようにしたら、日本全国均一に受けられるか。医療の話で言えば、子供を産むということでも、今や地方 では、産婦人科医のいない地方病院も数多くあり、そのために田舎を離れて、子供の教育もできないと、都市部にばかり、人口が集中することになったのであ る。

このところ、連日のように新潟などの大雪のニュースが流れているが、いつも死亡者として登場するのは、高齢者であり、テレビに映るのも、やはりお爺さんや お婆さんばかりである。この分かり易い例ひとつをとっても、格差はますます拡大の一途を辿っているのである。

別に私は中流社会に戻れと言っているのではない。かつて日本人が実感していた「中流意識」を媒介とした「中流社会」は幻想に過ぎなかった。
資本主義社会の中では、創意工夫や個人の努力に対し、それ相応の対 価があるのは、当然のことだ。そうではなく、私が問題にしているのは、個人の創意や努力 に関わりなく、否応なく広がっていく市民間格差地域間格差のことだ。せっかく格差是正の技術としてのIT技術も、インフラ整 備が中央集中型で展開されているために、ますます地域間格差は広がっていく傾向にある。そのために、ガン治療の地域格差は、もはや法の下の平等を唱った憲 法の精神に反している疑いすらある。その意味において、現政権の社会政策は、結果として、日本社会の「格差拡大」を招いてしまっているということは疑いの ない事実である。06.1.16 佐藤


2006.1.16 Hsato

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