偽装マンション事件と日本経済

建設・不 動産業界グローバル化への第一歩ー

マスコミの論調を見ると、本年の日本経済や景気に 対し楽観論が大勢のようだ。必要以上の悲観論は論外だが、本当に日本経済は新たな上昇局面に入ったとみてよいものか。私は少し懐疑的にみている。

例えば、偽装マンション事件ひとつ速やかな解決が図れず、今年の日本経済の躍進はあり得ないとさえ思う。

確かに日本経済の懸念材料は、銀行の不良債権が解消されつつあり、トヨタのような輸出型企業の絶好調に支えられ て、完全に払拭されたかにみえる。反面、公共事業の大幅な見直しの中で晴れ間の見えない建設業界や暮れになって大騒ぎになっている偽装建築マンションは、 日本経済に大きな影を落としている。

この事件は、日本経済の構造的問題といってよい。つまり「姉歯一級建築士」を媒介とした「ヒューザー」、「木村建 設」という偽装のトライアングルは氷山の一角に過ぎないということだ。もっと云えば「姉歯一級建築士」は、まだまだいる、ということになる。結果、考えら れることは、マンション販売に急ブレーキがかかり、日本経済の成長率を押し下げる効果を発揮する。同時に政治家や大手ゼネコン、国土交通省なども巻き込ん だ大がかりな事件に発展する可能性がある。

銀行危機から今や日本の銀行界は、世界中のバンカーがひしめき合う市場が形成されつつある。一方建設業界は、慣行 とまで云われる「談合」や「複雑な法制度」が災いして、グローバル化とはほど遠い状況が続いている。ここに来て、アメリカのマスコミも、この偽装マンショ ン事件を、「小泉政権に大打撃」などとエキセントリックに報道し始めているが、この報道の背景には、次は日本の建設業界を開放させるというアメリカの建設 業界の思惑やアメリカ政府の国家的な意図も感じられる。でもそれは悪いことばかりとは思われない。

建設マンション業界がグローバル化され、外資企業が入るようになれば、少なくても、日本の建設業界からは談合が消 え、よりフェアーな形でマンション価格が形成されるようになるはずだ。むしろ消費者によってはその方のメリットが大きい。これまで日本の消費者は、建設業 界の古い体質によって、高値で一生に一度か二度の買い物である住宅を購入していたからである。つまり偽装マンション事件の真の解決とは、建設不動産業界の 古い体質を一掃し、フェアーな市場を形成し、消費者が安心して居住できる住宅を供給する仕組みを再構築するところにある。

年明け早々、国会で再びこの事件が取り上げられるそうだが、日本人の知恵の見せ所だと思われる。より国民にとって 分かり易い速やかな処方箋が示され、実行されることを望むばかりだ。


2006.1.6 Hsato

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