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ジョージ・ハリスンよ永遠に!!

−My hero  "George Harrison"  last forever!−


ここに本当に悲しい話がある。元ビートルズのジョージ・ハリスン(58才)が、新聞によれば、あと一週間ほどの命だと言うのだ。実に悲しいことだ。どんなに成功しても、人間の命には限りがある。遅かれ早かれ、誰にも最期の時は、必ずやってくる。そこで彼の人生を思った。イギリス北部の港町リバプールに育ったジョージは、偶然天才ジョンレノン率いるロックグループのリードギターとして頭角を現し、まさに20世紀のポップス音楽界を革命するほどの成功を収めた。そしてさほど非凡とも思えなかった彼もジョンやポールの才能に触発されて、「サムシング」や「ヒヤ・カム・ザ・サン」という名曲も作った。もしも彼が、ジョンと会っていなければ、この成功はなかったであろう。

どんな組織でもそうだが、一時代を引っ張るほどのエネルギーに溢れていると思われた組織でも、中心にいた才能ある人物がいなくなると、組織の求心力がなくなって、たちまち衰退の一途を辿る。ビートルズも同じだった。いったん、ジョンレノンが、「ビートルズ」に自分が活動することの意味を脳裏の何処かで考えた瞬間、グループの解散は時間の問題となった。グループの屋台骨そのものだったジョンが抜けて、ビートルズというグループが存続し得ないことは明白だった。

しかしそれでもビートルズのメンバーは、信じられないような富みと名声を得て、何をやってもその惰性によって、一定程度の成功を収めることができた。人は彼ら成功を妬み羨み、詐欺師のような面々が彼らの周囲には群がったりもした。

当のジョージも、自らの音楽活動を通じて、バングラディッシュの難民救済のコンサートを主宰するなどして、自らの存在性を示した。様々なレコードをも録音し、いくつかのヒット曲を世に出しりもした。しかし今、普通の人が知っているジョージの作品言えば、先の二曲と名作「ホワイトアルバム」に納められている「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」くらいなものであろう。これが世の現実なのである。

そして私が思うのは、世界中に別荘を持ち、豪邸を構え、一生涯で使い切れない程の富みを持った彼の最期の悲しい行動だ。聞くところによれば、彼は、肺ガン、喉頭ガンを克服したものの、今度は脳腫瘍に罹ってしまった。そこで彼はイギリスから延命治療のためニューヨークの病院に移る。そこでも効果がなくてカリフォルニアに移る。そこにポールとリンゴの二人が訪れて、三人で泣いたと新聞記事には書いてある。そしてますます体力の弱ったジョージは、「ハワイの別荘で最期を迎えたい」と語ったというのだ。もちろんこの話がどこまで真実かどうかは分からないが、我々に多くの教訓を与えてくれているのではあるまいか。

まず富みも名声も、何の助けにはならないこと。そしてアイデンティティを持たなければ、人間はどこまでも死を怯える哀れで惨めな存在と化してしまうことだ。ビートルズであれほど輝いていた人間は、骨と皮になり、その富みを持ってしても、どうしようもない病状に陥り、気が狂うことも叶わずに、迫り来る死という怪物と戦っているのだ。彼の悲劇は、敢えて言えば、アイデンティティというものを持たなかったことに尽きているのではないだろうか。もしも彼にリバプールという港町に生まれたという誇りとプライドがあれば、「俺はリバプールで死にたい。そこでジョンが待っている。ストロベリー・フィールズで、ジョンが待っている」と語り、彼は永遠に生きることができたはずだ。しかし彼はそこでどのように考えてもアイデンティティとは縁もゆかりもない「ハワイ」を自らの死地と決めてしまった。そこが私にとってはたまらなく悲しいのである・・・。このようにどんな成功を収めた人物でも、アイデンティティという言葉を理解することは本当に難しいということであろうか。

彼のソロになってからの歌に「オール・シングス・マスト・パス」(All things must pass :全てのものは移りゆく)という歌がある。その最後で、彼は、All things must pass に「AWAY」(遠くへ)をつけて、All things must pass awayと歌って、この歌は終わる。まさに、すべてのものは消えて行かねばならぬ運命にある。ジョージだけではない。これを書く私も、そして読むあなたも、この世の人すべても、この広大無辺な宇宙すら、やがては、何処かに・・・。
All things must pass・・・。Away。

佐藤
 

 


2001.11.28

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