縁は不思議

金メダリストとノーベル賞受賞者の縁

 
まったく縁とは不思議なものである。
あの女子マラソン金メダリストの高橋尚子と今度ノーベル賞を受賞した白川英樹氏は、遠い親戚だったとか。高橋の曾祖母と白川氏の祖母が兄弟だというのである。そして高橋の祖母が教師をしていて白川氏は、その教え子だったという。

確かにふたりは、どこか性格が似ているようにも感じる。とにかく、ふたりとも自分の目指している目標に対して一直線に突き進む点は大いに共通点がある。放って置いたら、何時間でも走っているという高橋に対して、白川氏は、昨日ノーベル賞の受賞会見で殺到した報道陣に向かって、何と懇切丁寧に、自宅の前で一時間半も今回の受賞した「伝導性ポリマー」の発見とその理論を講義したという。実に学者然とした不思議な人物である。しかも高橋同様屈託のない実に良い笑顔を持っている。

ふたりとも自分の天命というか、選んだ道を、とんでもないぐらい好きなのであろう。端(はた)から見れば、「ひとつのことに何であんなに夢中になれるの?」と言いたくなるようなふたりだが、人間というものは、福沢諭吉の言う如く「一生を貫く仕事」を見つけた時には、それこそ爆発的な力を発揮するものかも知れない。同時にそのような打ち込める性格を与えてくれたご先祖様に素直に感謝すべきであろう。

誰しも金メダルやノーベル賞を取れる訳ではない。それはむしろ高橋だって、白川氏だって、はじめからそんな目標を立てて、努力したのではないはずだ。特に白川氏は、とうの昔に終わっている研究に対して、このような賞がもられるなんて思わなかった、と謙虚に語っている。しかしIT時代の到来は、ノーベル賞を選考するスウェーデン王立科学アカデミーの注目する所となり、今回の受賞となったのである。同アカデミーは、白川氏の研究成果を「エレクトロニクスの起爆剤になる」とまで評価している。

「好きこそものの上手なれ」ということがあるが、大好きな道を一途につく進むことの尊さを教えてくれたふたりの人物に心からの敬意と賛辞を送りたいものだ。彼らふたりの屈託のない明るい笑顔は、まもなく訪れる21世紀の日本社会に対し、限りない好影響を与えるに違いない。その意味では、高橋尚子に持ち上がっている国民栄誉賞の授与問題も、私は肯定的に受け止めたい。佐藤
 


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2000.10.12