COP10の翌日クマが 日本各地で一斉蜂起?!
  COP10の翌日クマが日本各地で一斉蜂起?!

名古屋で、10月11日からCOP10(国連生物多様性条約第10回締約国会議)が始まった。ふしぎなことに、同日、静岡県三島市では、8月から2ヶ月ほ どで100人以上の人の足を囓った「かみつき猿」が捕獲された。また12日には、日本各地3ヶ所で、クマが人里に現れ、人間を襲った。まるで生存を脅かさ れたサルやクマが何かを訴えているかのようだ・・・。

生物多様性条約の喫緊性
2010年10月11日、この8月から2ヶ月の間に静岡県三島市付近で100人以上の人の足などを囓るなどして、20万の捕獲懸賞金まで掛けられていた「かみつき猿」が、やっとのことで捕獲された。前代未聞のふしぎな事件だ。

そんな矢先、今度は、10月12日、全国各地でクマが示し合わせたように大暴れをした。まず福井県勝山市では介護施設にクマが乱入して、介護士の職員が重 傷を負った。次に富山の魚津市のりんご園など二カ所にクマが現れ、二人の男性がケガをした。最後は、山形県飯豊町で、田んぼに中の路上で60代の夫婦が襲 われ、夫が重傷を負った。乱暴な見方をするならば、まるでクマが示し合わせて人間社会に叛乱を起こしたような事件だ。

いったい、何故このような事件が、相次いで起こっているのか。山に詳しい友人にこんな話を聞いた。

クマという動物は、臆病な動物で、経験的に人間が一番怖い存在ということを本能的に知っている。だから、山に入った時には、ここに人 間がいるよ、というシグナルを常に発している必要がある。鈴などを持って行く。仲間と歩く時には、声を発するなどを心がける。偶然に顔を合わることのない ようにする。

なるほど、と思った。でも、今回の事件は、普段のクマの心理とは意味の違う事件だ。何しろ、人が一番怖いはずのクマが、人里に下りてきているのである。そ れは、おそらく奥山のクマの住処周辺の開発が進み、クマのエサが少ないために、やむを得ず、人里にエサを求めて下山したことから始まったかもしれない。そ こで人間の残した美味なエサを食した時、クマは「こんなうまいものがあるのか」と、いつの間にか、怖さを忘れてしまって、クマと人間の境界線を越えてし まったものと推測される。

つまり、今回のクマの一斉蜂起のような人里侵入事件は、日本の奥山の環境問題に起因していることは明らかである。

折りから、10月11日、名古屋市で、COP10(国連生物多様性条約第10回締約国会議)が開幕されている。1992年に採択された「生物多様性条約」の骨子は、第一に「多様な生物を、生息する環境とともに守ること」、第二に「生態系の恵みを持続的に使うこと」第三に「遺伝資源が生みだした利益を原産国にも配分すること」の3つである。

まさに、生物の多様性にとっての最大の脅威は、人間社会の度を越した開発主義がもたらした環境破壊である。日本各地で、クマという種が、まるでCOP10 開催とタイミングを合わせたように起こした事件は、「このまま人間の開発第一主義と人間社会の利害を優先するならば、人間以外のあらゆる種は、絶滅しかね ない、生物の多様性など、そもそも維持することなどできない」との、人間に発せられた人間への緊急メッセージということになる。

やはり、私たち人間は、傲慢極まりない開発最優先の考え方を、その根本から考え直さなけれならない。そうでなければ、クマやサルなどの種を絶滅に追い込む ばかりではなく、地球そのものが、多様な命を育むことを止めてしまいかねないのだ。是非、今回のCOP10では、実のある議論を通じて、生物多様性を維持 して生態系が失われる速度を著しく減速させるための中長期計画書(「名古屋議定書(=「名古屋・クアラルンプール補足議定書)」を成功裡に採択してもらい たいものだ。

2010..10.12 佐藤弘弥

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