資 源最貧困国日本
中国石油企業の躍進


− 日本のエネルギー政策の貧困−

佐藤弘弥

ニューズ・ウィーク誌10月10日号に、「グローバル最強企業ランキング」として、世界の300社の順位と利益が掲載されている。

ぱっと見てすぐに思ったのは、石油関連企業の好調振りである。確かにこれだけ原油が上昇すると、石油会社が空前の利益が転がり込むのは当然だ。

一位の「エクソン・モービル」(アメリカ)から2位は電気GE(アメリカ)を挟んで、3位「ロイヤル・ダッチ・シェル」(オランダ)、4位トタル(フラン ス)、6位BP(イギリス)と石油メジャーが並んでいる。

そこで私が驚いたのは、7位に中国「中国石油天然気」がランクされていることだ。また中国系石油関連企業として、35位に「中国石油化工」、85位に「中 国海洋石油(香港)と100位以内に三社が並んでいることだ。

この10年来、中国政府は後発ながら、国策として全世界の石油油田や天然ガス田などに集中的に投資を重ね石油利権獲得に躍起になっている。日本列島の近く でも、「中国海洋石油」が、「東シナ海ガス田開発」として、ほとんど強引に掘削を始め、日本との間で政治問題化しているほどだ。日本は完全に出し抜かれた のである。

その結果、世界の300位までに、日本の石油関連企業は、一社もランクインをしていないのである。日本は石油ガス関連部門で、後発の中国企業に遅れを取っ ていると言わざるをえない。

資源のない日本にとって、石油ガスは、まさに死活の問題である。第二次大戦があれほど拡大した背後にも、「石油資源」などの問題があったと言われている。

考えてみると、ここに来て、日本の食料自給率が40%を下回る状況になったのも、コメ生産一辺倒の農業から転換できなかった戦後農政の政策の失敗がある。 もちろん戦後農政の背景には、同盟国(?)アメリカへの穀物への過度の依存関係があったのである。

食料と同じように、戦後において、石油や天然ガスの世界的企業が、日本において育たなかった原因もまた、国家的エネルギー政策が失敗であったと言えるので はあるまいか。

結局、日本においては、民間製造業の「トヨタ」が12位に、38位にNTTが、57位に「ホンダ」、66位に「日産」、68位に「NTTドコモ」、77位 に「キャノン」と続いている。

日本丸という巨大な船を動かす石油エネルギーも残念ながら、穀物同様、すべて外国の石油メジャーに握られてしまっている。これでは、アメリカに言われたこ とに何でも「イエス」と言わなければならないのは、仕方のないことだ。それは「同盟関係」というよりは「主人と手下」の関係と言うべきものだ。

それに対し中国は、少々アメリカやEUとギクシャクすることも覚悟で、世界中で油田・ガス田を独自の買い漁っているのである。もちろんこのことが、アフリ カのダルフールの虐殺事件の温床となっている。またミャンマーの軍事政権を存続させる影の力になっていると言われているのも事実だ。

日本政府は、中国のなりふり構わぬ資源ナショナリズム的発想のマネをするべきではないが、少なくても中国政府のハラの据わり方は学ぶ必要はある。日本政府 は、もう少しアメリカへの過度の依存関係を見直し、独自の資源開発政策立案に本腰を入れなければならないと思うのである。


2007.10.11 佐藤弘弥

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