文明病国家アメリカの行く末

京都議定書を拒絶するブッシュ政権


ブッシュ政権の高圧的な性格が少しずつ露わになりつつある。このほど(3月29日)ブッシュ大統領は、クリントン政権が承認した京都議定書(1997年:気候変動枠組み条約)を拒絶する方針を明らかにした。 
曰く「我々の経済を損なう計画を受け入れるつもりはない」 

京都議定書は、1997年に京都で開催されたことから、この名称が使われるようになった条約だが、その内容は、文明によってもたらされた世界的な気候変動に懸念し、90年度のCO2(二酸化炭素)値を目安として、各国が削減目標値を定め、日本であれば6%、米国7%、EU8%という具合で、削減しようとする条約である。現在世界33ヶ国が批准しているが、米国はまだであった。 
元々アメリカは、この条約に対して国内の産業界から早々に反対の声が上がり、腰が引けた態度で終始してきた。そこに来て産業界との結びつきが強い共和党ブッシュ政権になって、態度がより鮮明になった形だ。そもそも米国のエネルギー消費量とCO2の排出量は圧倒的な第一位であり、もしもこの条約に米国が参加しなければ、この条約自体が意味のないものとなってしまう。

それにしても国家としてのアメリカのエネルギー消費は文明病と云うほど凄まじく、最近でもカリフォルニア州における電力の過剰消費により停電騒動は記憶に新しいところだ。このままの状態で米国が、エネルギー消費を続けると、地球環境はCO2のもたらす温室効果により、平均温度が上昇し、大規模な気候変動が起こることは、多くの専門家が指摘する怖ろしいシナリオだ。南太平洋の小さな島国などは、極の氷が氷解することによって、沈んでしまいかねないほどの危機感を持って、この条約の推移を見守っていると聞く。

京都議定書の批准に積極的なEU諸国は、今回のブッシュ大統領の態度に危機感を募らせて、早速いち早く懸念の声を次々と表明している。なかでもドイツのシュレーダー首相は、直ちにホワイトハウスに飛んで、ブッシュ大統領に再考を促した。しかしもちろんこのようなもので、ブッシュ大統領の態度は変わらなかった。 
文明というものは、この二千年、とにかく生産力を右肩上がりで上げることで、すべての問題が解決するのだ、という前提で遮二無二突進してきた。しかし時代は21世紀となり、余りにも狭い地球に、如何せん人間が増えすぎ、しかもその人間達が、すべて文明という恩恵を享受しようとやっきになるものだから、もうどうにもならないレベルまで、到達してしまったのである。

考えてみれば、人類の文明史上、その文明を形成したきた科学思想そのものが、その根底に生産力主義という業を背負っている。そうである限り、この文明の辿り着く先は、環境の破壊というカタストロフィー(破局)そのものではあるまいか。このシナリオの前では勝者も敗者もなく、また得する者も損をする者もない。ただ人間だけではなく、あらゆる地球上の生物が、ひたすら損をするだけの絶対負の世界である。

現代の文明の業そのものを象徴するアメリカという国家は、これからの21世紀において、己の欲望を針が振れる究極まで開放し、第二のローマとなって、静に歴史から消えて行くのであろうか、それとも地球上の人類のすべてを破局へと導いてしまうのであろうか。佐藤 
 


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2001.3.30