白
いバリウムを呑む恐怖
定期健康診断に行く。あの白いバリウムを呑まなければいけない胃のレントゲンは、いつ
もながら、自分がトサツ場に牽かれてゆく牛になったような気分にな
る。
並んでいて、順番がやってくると、本当に「モー」と鳴きたくなる。見れば、先に牛となった男達は、次々と苦虫をかみ潰したような表情で、口に白いバリウム
を付けてレントゲン室を出て、洗面所に駆け込んで行く。そこで下剤二錠を飲まなくてはいけない。
毎年恒例の行事となってしまったが、それにしてもこの白いバリウムは何とかならないものだろうか。ふと、最近問題になっているアスベストのことが脳裏をよ
ぎった。それまで日常的に接していたものが突然発ガン物質となり、社会問題となる。聞けば、だいぶ前から、当時の厚生省は、アスベストの危険性を知ってい
たが、余りにも広く使われているものだけに、これを急に禁止とは出来なかったということのようだ。
戦後虱退治と称して進駐軍が日本人の頭にふりかけたDDTも、ひどいがアスベストによる被害もひどいものだ。周知のようにDDTを開発した学者は、ノーベ
ル賞を受賞したが、社会に広まって14年後の1962年、レーチェル・カーソンが、「沈黙の春」という本を出して、このDDTの危険性を告発した。この本
は全世界でベストセラーとなった。この本によれば、DDTは、急激な毒性は少ないが、長期に渡って体内に残留し、食物連鎖などを通じて、ガンを誘発した
り、奇形の原因、免疫力の低下などを誘発すると言われる。今日環境ホルモンとして問題を指摘されている内分泌錯乱物質のひとつである。
あの白いバリウムも、何年かして、実は・・・には、・・・という物質が含まれていて、人体に大きな影響を与える物質であった、などということになるかもし
れない。大体が、体内で下剤などを飲まなければ排出しない物質をそのまま呑み込ませるという不自然な診断法が時代遅れだと思うのだがどうであろう。
2005.7.21 Hsato
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