Daily Care


日常の世話について

ここでは幾つかのテーマに分けて日常的なリクガメの世話について紹介したいと思います。 お風呂のことや、爪やくちばしのケア、食事の時間などについてもふれてみたいと思っています。 また、簡単なリクガメ用の家具の作成方法なども紹介できればと思います。


        ●排泄物に関する世話について
        ●リクガメのお風呂
        ●もし溺れさせてしまったら
        ●ツメの世話
        ●甲長、体重のチェック


排泄物に関する世話について

広い庭で飼育できる場合は処理についてはそれほど問題はないように思います。屋内飼育や屋外でも バルコニーなどで、それほど広いスペースではない場合は、毎日の世話が必要になります。 リクガメの排泄物は大きく分けて

糞
尿
尿酸
の3つです。糞についてはさほど説明の必要はないですが、尿と尿酸については、リクガメを飼育 されたことのない方には、かなり奇妙に感じられるかもしれません。ここでは世話ということに 話を限ってすすめることにいたします。尿と尿酸に関して、興味のあるかたは、リクガメの尿酸 と尿素の項目を参照して下さい。
健康なリクガメにおいては通常毎日上記の3つを排泄します。リクガメは我々に言葉をかけては くれませんから、飼育者は彼らの様々な行動や食欲や排泄物から、彼らの体調や要求などの情報 を推測する必要があります。その点で単に掃除する対象としてのゴミとは、リクガメの排泄物は 基本的に異なります。大変貴重な彼らからの毎日のメッセージとして受け取りたいものです。


糞について
糞の日常のチェックで、彼らの体調を把握することができます。健康で体調がよいリクガメは、 適度な水分をもった、適度な硬さの便をします。人間の便と似たような硬さです。草食性の 地中海リクガメは、緑の野菜や雑草を主食としていれば、濃いモスグリーンから黒に近い色の糞を します。カボチャなどを与えた時には、その色素がかなり残った糞をするため黄色っぽい茶色に なることもあります。適度な硬さを保っており、特に妙なものが混じっていない場合には、まず 健康と考えられます。リクガメはその体にしてはかなり長い腸をもっています。よって食べたもの が体内に留まっている時間もかなり長いため、通常の生活においては3日から4日前に食べた物の 糞であることが多いようです。冬眠期間に近い場合や夏場で本来は夏眠する季節などでは、話が違い ます。食欲がない場合などではもっと以前に食べたものが排泄されます。水分の節約のために、かな り長く腸内に留まっていることもあります。冬眠前のリクガメの排泄機能から考えると3週間から 4週間程の間、体内に留まっているものもあることになります。
これが、軟便になると、何らかの異常がある可能性があります。1日2日程度で解消されれば、大し て気にする必要はありません。飼育下では軟便になりがちですが、食事を考えて与えることによって 調整できます。数日から1週間の単位で軟便が続く場合には、食事を見直してみるとともに、病気の 可能性を考慮する必要が出てきます。
また、大変硬い糞になっている場合にも異常の原因を探す必要があります。リクガメは糞も尿も尿酸 も総排泄孔から排泄しますから、過度な便秘の症状があれば、いろいろな可能性を考えてみる必要も でてきます。尿酸が腸内で固まりになって詰まってしまっていたり、知らないうちに妙なものを飲み 込んでいたり、内蔵の病気であったりする可能性がある訳です。またカルシウム摂取が過剰であった りと様々な可能性がでてきます。食事のページを参照して下さい。
次に寄生虫のチェックをすることが可能です。一般的なリクガメの寄生虫については  SICK TORTOISE のページで詳しく述べますが、肉眼で確認できる寄生虫として線虫が挙げられ ます。たいていのリクガメには寄生している方が普通な程です。特に輸入したての個体に多く見られ ます。購入したての幼体のリクガメでは、糞をするたびに数匹5mm程度の線虫が糞に混じっている のが見られます。食生活が安定してきて、環境に慣れてくると、大抵は糞に混じって肉眼で確認でき るといったことはなくなってきます。寄生虫と宿主の関係が、線虫に限って言えば、安定した関係に なってくると言えます。ところが、何らかの原因で過剰に増えてしまう可能性があります。すると 糞に混じって排出される線虫の数が肉眼で目に見えて増えます。このような時には駆虫する必要が あります。一口に線虫と申しましても、線虫類は約50万種と非常に多種です。雌雄異体であり、細長 い円筒形をしています。最外層の角皮の筋細胞の配列によって、蛔虫、鉤虫、鞭虫の3種に大きく分 けられます。いずれも見たところツルッとした白色から半透明の色をしています。ウネウネと動き ますので、すぐに糞の中の繊維質の物質とは見分けがつきます。
リクガメの糞には線虫の卵や、肉眼では見えない原虫やその卵、様々な微生物などが含まれています から、屋内飼育をしている場合など、そのままにしておくと、他のリクガメがいる場合には、口から 感染してしまいます。また、傷が脚や甲羅にあったりしてもそこから病原菌に感染してしまうことも ありますので、糞を見つけたらすばやく取り除き、チェックしたのち処理することが大切です。
また、寄生虫の話題になると、決まって出てくる話に、そんなに寄生虫がいるのでは、とても怖くて リクガメなんて飼育できないじゃないかという話題があります。ところが人体寄生する寄生虫とリク ガメに寄生する寄生虫はほとんどだぶっているものはありません。哺乳類に寄生する寄生虫では、人 に感染するものも中にはありますが、爬虫類から人間に感染する寄生虫はまずないに等しいのです。 人間とその他の脊椎動物の間を移行する疾病を人畜共通感染症(zoonosis)と呼びますが、哺乳類、 鳥類、昆虫類、魚類、と人間の間では見られます。寄生虫が宿主を選択するに際して、大多数の 寄生虫が宿主を厳格に選択する宿主特異性(host specificity)を持っており、中間宿主への感染に おいてもこれは特異性を持っています。ここでは詳しくは述べませんが、リクガメを宿主、もしくは 中間宿主にしている寄生虫で人間に人畜共通感染症を引き起こす寄生虫はまずいません。
衛生動物学的に見た場合、爬虫類が問題になるのは、毒が主になります。一部の毒蛇、トカゲはよく 知られていますが、リクガメで有毒なものはいません。現在までにリクガメが原因の疾病は報告があり ません。わが国においてカメさんが原因である疾病で報告があるのは、沖縄においてタイマイ、 アオウミガメ、アカウミガメなどの肉、内臓を食することにより、極めてまれに食中毒がおこるという ものだけです。爬虫類と人間の間の寄生虫にしても、有棘顎口虫(Gnathostoma spinigerum)の第2中 間宿主として、クサガメ、シマヘビ、ヤマカガシ、カナヘビ、ヤモリが知られています。またマンソ ン裂頭条虫の第2中間宿主としてヘビ類が知られていますが、リクガメに関しては皆無です。そうい う意味においては、リクガメは人間にとって、犬や猫に代表される哺乳動物よりも安全で清潔です。


尿と尿酸について
リクガメは尿と尿酸を排泄します。尿はほとんど透明な液体です。尿酸は白いドロッとした半個体 状のものです。鳥の糞のようなといえば分かりやすいと思います。事実鳥も尿酸を排泄しますので、 同じ感じなのですが、リクガメを始めて飼育する方は、最初ビックリさせられるようです。
健康なリクガメの場合、尿も尿酸もほとんど気になる臭いはありません。しかし何らかの病気の症状 としてのチェックができますので、毎日観察することをお薦めします。分かりやすいのは尿酸の水分 です。ドロッとしているのが普通ですが、少しジョリジョリした感じになっていたり、個体化した粒 が多く含まれていたりする場合は、脱水気味であったり、内臓の病気の症状であったりします。 また、尿も尿酸も色がついていたりする場合は、まず何らかの病気を考える必要があります。血液が 含まれていて赤っぽくなっていたりする場合には早急な治療が必要になります。
また、臭いもチェック事項です。普段はほとんど臭いがないのですが、ある種の感染症にかかって いたりすると、強いアンモニア臭を発するようになります。放っておくと腎臓障害が発生してしまい 致命的なケースもありますので、毎日のチェックが大切です。
糞同様に病原菌を含んでいたりしますので、早期の始末をこころがけて下さい。屋内で飼育している 場合、尿酸はそのままにしておくと、酸であるため、床材などを傷めることになります。また、ガチ ガチに乾燥してしまいますと、なかなか掃除してもとれなくなってきます。
フローリングの床などでは、スプレー式の床用の洗剤などを吹き掛けて5分程放置した後拭き取ると きれいにとれます。ジュータンなどを敷いてある場合には、掃除が難しくなります。健康なリクガメ の尿酸であれば、(あまりお薦めはできませんが)ガチガチに固まって乾燥してしまうのを待って 掃除機でこそぎ落としながら吸い取るときれいに処理できます。


排泄物の処理については、温室などで飼育している場合には、リクガメはすべての行為をその中で 行うことになりますので、清潔に保つようにしなければなりません。いろいろな感染症の原因になり ますので、飼育場所の床材には気を使って下さい。HOUSINGのページを参照して下さい。
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リクガメのお風呂

お風呂というと、どちらかと言えば Enjoy Tortoise Life のコーナーの題材のように聞こえてし まいますが、リクガメとの生活の中では、かなり大切な世話の一つです。 少し範囲を広げると水浴びということも含まれることになります。
リクガメは、その体の構造上、体に付着したものを自分で取り除くことができる部分は、大変限ら れています。いかにも取り除けそうな顔の周りにしても、彼らにとってはなかなかうまく取り除く ことができません。前脚の腕の部分の鱗でこする動作で口の周りを拭きますがリクガメの嘴の下側 となると、けっこうお手上げで、首をひっこめる動作で取れないものは付着したままになってしま います。嘴にも餌さの切れ端などがピッタリと張り付いてしまうと、とれません。目の周りも彼ら にとっては苦手です。時に汚れを掻き落とそうとして、擦ってしまい、目をいためることもあります。 これらはまだ、何とか自分で対処ができる部分ではありますが、甲羅は腹甲、背甲とも自分でどうに もなりません。自然界においては、その乾燥した気候と生息地の土壌のため、腹甲に付着したもの は自然にこすれてとれますが、特に屋内で飼育しているリクガメの場合、とれにくくなってしまいま す。屋内でフローリングの床の場合はかなり汚れるのが普通でしょう。糞をした上にデンと乗っか ってしまっていたり、シェルターの中で糞をした時などは、糞まみれになってしまったりします。 また、尿や尿酸はフローリングですと床にしみ込まないため、その上に乗ったり、歩いたりすると 脚の裏にも腹甲にも付着してしまいます。

ギリシャリクガメなどを屋内飼育していると自分で甲羅を様々な物にこすり付けるという動作が、 かなり頻繁に見られます。激しく擦った後を見ると、甲羅の継目などがささくれて、わずかに出血 したりしていることもあります。また成熟したオスのギリシャリクガメは、メスに対して自分の甲羅 をガツガツぶつける行動をとります。その結果メスの甲羅はかなり傷んでしまいます。ホルスフィー ルドリクガメは、成熟してくるとオスはメスの脚や顔に噛みついたりして、傷をつけてしまうことも 多いのです。健康なリクガメの場合はそれほど問題はないようですが、上記のような傷が急に何らか の理由でついたりした場合にトラブルの原因となります。
傷のある部分から感染症をひきおこすこともあるからです。甲羅の病気は屋外飼育している場合に は起こりやすくなります。つまり、リクガメのお風呂の効能の一つに、体を清潔にしてあげること があげられます。
また、ある程度の温度のお湯に浸からせてあげることの効能の一つに、排泄行為を即すことがあげら れます。暖まることによって、腸の運動が活性化されるようです。また、腸内にあるガスが外に出や すくなることもあるようです。定かではありませんが、陸上生活をする生物は水辺で排泄行為を行う 傾向がみられます。これは、水が排泄物を洗い流すことを本能的に知っているという説もあります。 屋内で飼育するペットにトイレの仕付けをさせる時に、トイレの場所に水入れを置いておくと早く トイレの場所を認識する傾向もありますので、リクガメにも本能的な要因があるのかもしれません。 これについては、詳しい研究はリクガメにおいてはあまりされていないようですが、経験的には お風呂に入れるとかなり高い確率で排泄をしてくれます。
さらに、水分の補給の意味でもお風呂は有効です。水分が不足していたり、水分を欲していたりする 場合には、お風呂に入れると自分で水を飲みます。冬眠後のリクガメの水分の補給には、飼育下では 大変有効な方法です。


お風呂の入れ方
お風呂の設備ですが、私達は洗面所のシャンプードレッサーを利用しています。水深の調節が個々 のカメさんごとに可能ですし、温水器による温度調節も楽であることと、お湯がよごれたら、すぐに 変えることが可能であることなど、大変便利です。糞を中でしたとしても、排水栓の空きの調節で、 お湯だけを流して、糞はティッシュペーパーで取り除くことができます。
お湯の温度は、季節によっても異りますが、私達は手を入れてあたたかい程度にしています。水深 は、カメさんの顔が水没しないようにしています。リクガメはあまり深い水深にすると、溺れる ことがあります。人間の浴槽などを利用する場合には注意が必要です。
お湯を張っておいて、カメさんをそっと中に入れます。しばらくそのままにしておき、腹甲に付着し た糞などがふやけるようにします。水分を欲している時には、お湯につけると早めに飲みますので、 その間は、お湯が汚れないようにカメさんを洗ったりしないで静かにしておきます。自分で顔をお湯 の中に入れたり、前脚で擦ったりして付着したものを取ろうとしたりする行為も見られます。お風呂 に入れた時の反応は、かなり個体差があり、いつまでも気持ち良さそうに浸かっているカメさんから 少しするとジタバタ始めるカメさんまでいろいろです。排泄をする時は大抵お湯に入れて2、3分の間 に排泄することが多いようです。
お湯の中で動き始めたら、カメさんを洗ってあげます。もちろん石鹸などは使わないで、お湯だけ で行います。リクガメの頭を自分の方に向けて両手でカメさんを側面から掴むようにします。腹甲を 指でこするようにして、まずお腹の方から洗います。汚れの大半は、腹甲とシッポの近く、脚に集中 していますので、まずそのへんを洗います。
お湯はかなり汚れるので、一度水換えします。そして背甲の方を洗います。この時には甲羅の継目の あたりを擦るようにしてあげましょう。洗ったお湯がカメさんの顔のほうにあまりかからないように しましょう。人間用のツメブラシなどを使用するのも効果的です。さっと洗ったら水換えして下さ い。この間に排泄するカメさんもいます。あまり驚かすことのないようにしてあげて下さい。カメさ んは、ひっくりかえされるのを嫌います。よってできるだけ通常の姿勢を保って洗ってあげて下さい。 後は、きれいなお湯に浸からせてあげます。口の周りなどをゆっくり指で擦るようにして洗ってあげ ましょう。お風呂が好きなカメさんなら、気持ち良さそうにしてますが、あまり好きでないカメさん は、この地点でかなりジタバタし始めますので、そのようになったら、出してあげます。
お風呂から出したら、よく拭いてあげて下さい。このときもできるだけ通常の姿勢を保つようにし ます。ビックリさせると、お風呂から出た瞬間に糞をしてしまうカメさんもいます。よく乾くように ホットスポットの下に置いてあげて下さい。
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もし溺れさせてしまったら

万が一、水深を深くしていてうっかりリクガメを溺れさせてしまった場合の対処方法については、 SICK TORTOISE のページで詳しく述べます。ここでは、一般的な処置についてに止めますが、 もし、グッタリして、呼吸をしていない状態であれば緊急を要します。リクガメの頭を下にして 首を引き出して、できるだけ水を吐きださせます。お腹をけっして上には向けないで下さい。 そして、人工呼吸します。人工呼吸は腹甲を下にして(通常の姿勢です)前脚を引き出して延ばし、 次に、曲げて甲羅の中に押し込むという動作を続けることによって行います。すぐに獣医さんの ところに行って下さい。その間も人工呼吸をとにかく続けてください。
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ツメの世話

屋内飼育をしているリクガメはしばらく飼育していると脚のツメが伸びてきます。前脚はいろいろ なところをひっかいたりするので、かなり自然に摩耗してくれますが、後ろ脚のツメはかなり伸びて しまいます。そのまま放っておくと、関節に変な方向からの力がかかるようになり、少しずつ歩行 に問題が出てきます。脚全体が接地しにくくなり、歩きにくくもなってきます。かなり伸びたと思っ たら、ツメ切りをしてあげましょう。ツメ切りは、ペットショップで売られている犬や猫用の器具 が使いやすいと思います。円錐型のツメをカットするのに適したタイプがよいでしょう。

ツメの先から2から3ミリ程をカットします。ツメが白っぽいホルスフィールドリクガメなどは、 ツメを見ると先端から数ミリの間は半透明で、生え際に近づくと黒っぽい部分が中に見えています。 黒っぽく見える部分には神経が来ていますから、そこまで達しないように注意して、半透明になって いる部分の先だけをカットします。ツメによってはほんの数ミリしか半透明の部分がないものもある ので、深爪には注意しましょう。またギリシャリクガメのようにツメが黒っぽい種のリクガメは、 神経の来ている部分と先の部分の境目が注意しないと分かりにくいため、1ミリ程度ずつカットする 方が無難です。それでも深爪しやすいため、もしカットした後に、ツメのカットした部分に血が出て きたり、にじんできたりした場合は、消毒薬を塗ってあげるとよいでしょう。あまりに深くカットす るのは論外であると思って下さい。写真はツメ切りバサミとカットしたツメです。ほんの1ミリ程度 のカットです。

カットした後は、ものにひっかかったりしやすいため、ヤスリを少しかけます。一本、一本丁寧に かけてあげて下さい。ツメ切りを行うタイミングを、リクガメが眠そうにしている時や、バスキング をしている時などを見計らって行うようにすると、ツメの処理は比較的楽にできます。

わが家のツメ切りセットを紹介しておきます。まずツメ切りですが、ペットショップで売られている 犬用のものです。人間用のものでも代用できますが、専用のものは刃が円形になっていてカメさんの ツメをカットするのに適しています。カットしたツメが飛ばないような工夫もされています。 次に、ヤスリです。これは、女性のツメのケア用のものでもよいですし、大きくなければどんなもの でもかまわないでしょう。また深爪してしまった時用にオキシフルや止血剤、綿棒を用意しておきます。 オキシフルは、それ以外にもいろいろ役に立つので、1本備えておくと便利です。綿棒もいろいろな 用途に使用できますのでそろえておくと重宝します。

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体重、甲長のチェック

甲長と体重は、もっとも日常的にチェックがしやすい項目です。測定した値をどうとらえたら よいかについては、幾つかの指標が示されています。その指標の算出された根拠をはっきりと つかんでいませんが、おそらく統計的な数字の分析であると考えられます。正確なデーターとする ためには、より多くの個体の情報が必要でしょう。 たとえば"Jackson Ratio" graphというグラフがあります。これは
   ●ヘルマンリクガメ(Testudo hermannni)
   ●ギリシャリクガメ(Testudo graeca)
   ●イベラリクガメ(Testudo ibera)(現在、ギリシャリクガメの亜種とする著作もある)
に限って使用されるグラフです。  グラフの作成にあたっては、健康なリクガメの統計を使用したというコメントがあります (TORTOISE TRUST GUIDE TO TORTOISE & TURTLES  by A.C.Highfieid) が、その以上のことは、 現時点では確認できていません。
 もちろん、上記以外の種でこのグラフを使用すると、誤解が生じます。横にミリ単位で甲長をとり、 縦にグラム単位で体重をとります。2本の線の中にその個体のプロットした点が入っていれば、その カメは冬眠するのに充分な体重があると判断できるというものです。たとえば、マルギナータリクガメ に適用すれば、実際は健康体であっても、体重が軽すぎるという結果になってしまいます。逆に、ホル スフィールドリクガメに適用すれば、体重が重すぎるという結果になります。つまり、チェックに使う 式やグラフはそれぞれの種において算出する必要があるということです。またその統計的数字が自然界 に生息するリクガメの現地での数字を元に算出したものであるか、飼育下の個体のデーターであるのか は定かではありません。

 リクガメの形態の違いを考えると、体高の高い種と低い種、細長い種と円に近い体型の種など、明ら かな違いがありますから、一つですべての種に適するグラフや式を算定するのはむつかしい話でしょう。 日本ではサイテスの関係もあり、また現地でも厳しい管理体制がひかれているため、あまり馴染みは ないリクガメですが、ゴファーリクガメ(desert tortoise)について一つの良いチェックの式があります。

(L×W×H)×0.66/1000=理想の体重(Kg)(5〜10%以内の範囲)
     L:甲長(cm)
     W:甲羅の幅(cm)
     H:甲羅の高さ(cm)
(By Dr.Todd Driggers, Dr.Doug Mader, Greg Stoughtenburg)

私達も会員になっているTHE NATIONAL TURTLE & TORTOISE SOCIETY の機関誌 "THE CARAPACE" 1995年 9/10月号に掲載されたものです。
この式のすぐれた点は、リクガメの長さ関係を甲長と幅と高さとで測定している点です。これにより、 個体による微妙な形態のちがいも考慮されますし、理解もしやすいと思います。


 では、日常自分の飼育しているリクガメが、適切な成長をしているか判断できないものでしょうか。
体重の測定は、2キログラムまでは調理用の秤が数多く売られていますので利用できます。2キロ を越えると測定用の秤は少し探しまわることになりますが、4キロ程度までの秤は入手可能です。そ れを越える体重のリクガメは、人間の体重計や荷物用のはかりなどが利用できます。

 甲長はSCL(Straight Carapace Length)の値で測定します。直線距離で測定します。背甲のカーブに そって測定することはしません。
 リクガメは排尿したり、便をしたり、また食事をした直後などにおいては体重の10%程度の増減が 平気でみられます。それゆえ、体重については数回の測定を行い、平均値を求めるなどの考慮が必要 です。正確をめざすならば、10回程時間をずらして測定することをすすめている文献もあるようです。
 簡単な日常のチェック用にホルスとギリシャについて、独自に考察した資料を公開しておきます。 これは、体重と甲長に関して何らかの規則性を見つけようという試みで、成長の異常や太り過ぎ、 痩せ過ぎなどのチェックの指標を手探りするものです。
 方法は、まずできるだけ多くの個体の体重と甲長の資料を収集し、甲長をX軸に、体重をY軸にとり、 各々のデータをプロットします。そのプロットした点の集合をもとに、近似関数を求めてみます。 数式は、体重は「単位容積当たりの重量」(密度)に容積を乗じた数字であるという考えから、3 次関数が適切であろうという前提で、Y=aX^3 にしています。求めた数式のグラフを作成し、その グラフと元のプロットした点を重ね合わせて、検証します。
 甲長の数字のみから算定を試みているのは、種によって甲長、甲幅、体高の間にも何らかの関係が 存在するはずであるという前提に立っているからです。よって、その3つを掛合せた数字と甲長を3回 掛合せた数字の間には何らかの法則が存在するはずですから、3次関数の比例定数aは、それを考慮し た値になっているはずです。
 要するに、甲長を3回掛けた数字を使った時と甲長、甲幅、体高を掛けあわせた数字を使った時とで は式の係数(比例定数)が変わるだけであるということです。

体重、甲長のグラフ

 あくまでも現地点では1つの目安ですが、カメさんの飼育の参考にして下さい。データーはすべて 日本国内で飼育されている個体のデーターです。

ホルスの場合は、甲長(cm)を3乗したものに0.23〜0.24を掛けた数字が、 その甲長に対する平均的な体重(g)という結果になりました。
ギリシャの場合は、甲長(cm)を3乗したものに0.18〜0.19を掛けた数字が、その甲長に対 する平均的な体重(g)という結果になりました。

 結果を検証すると、海外でのそれぞれの健康なリクガメの数字と比べて比例定数が小さめの結果に なっています。現段階でははっきりとした理由は断定できません。今後も研究をすすめるつもり です。国内の飼育環境によるものと思いますが定かではありません。よってどちらも10%程度の幅で 考えるとよいでしょう。そしてこの数字を切っている個体については、少し注意が必要だということは 言えると思います。その他の種類のリクガメについてもデーターを収集して数式を算出してゆきます ので、しばらくお待ち下さい。

 また、飼育記録として、毎日の食事で、何をどれぐらい食べたかチェックしていき、月に1度日を 決めて、体重と甲長を記録して行くとよいでしょう。それによってカメさんの成長を把握できます し、その個体に限ってのことにはなりますが、健康の目安にすることができます。ある月まで増えて いた体重が突然ある月に減少していたりすれば、原因を考えなければなりません。その際に食事の 記録があれば、かなりの確率で原因にせまることも可能になってきます。また甲長にしてもカルシウ ムが不足しているなどの目安にすることもできます。
 さらに、長く記録を取り続けていますと、カメの成長の度合が季節によって周期的に変動しているこ となどにも気がついてくることでしょう。毎日のチェックとして測定できれば一番良いのでしょうが、 月に1回でも、かなりいろいろなことが把握できる資料になります。

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