リクガメ飼育環境への太陽光採光システムの導入について


太陽エネルギーの利用が、環境問題にからんで、注目されています。

太陽エネルギーの建築設備への利用方法には、太陽熱温水器、太陽発電システムおよび太場光採光システムの3つがあります。いずれも、l年間に1.5x10の18乗kwという、世界の総発電量の10万倍を超える莫大な太陽エネルギーを積極的に活用し、省エネルギーと地球環境保全を画ろうというもので、近年活用が進んでいます。その一つである太陽光採光システムは、反射鏡やレンズやプリズムによって太陽光を採光し、それを空気中あるいはケーブルなどの媒体を通して伝送し、建物内および建物周辺に照射するものです。年々二ーズが高まっていて、機器の開発と商品化も進んでいます。今後ますます利用が高まることでしょう。
これが、リクガメの飼育にもなんらかの形で役立つのではないかという観点から、以下に、太陽光採光システムの仕組みとその導入のポイントについて見てみます。


太陽光採光システムのニーズ

太陽光採光システムのニーズが高まっている理由には、以下の点が挙げられます。

■建築上のニーズ
一つは、都市の過密化や建築物の高層化、地下空間の利用増加などにより、そのままでは太陽光の届かない空間が増加し、自然採光の要求が高まっていることです。具体的には、以下のような場所および状況が挙げられます。
●建物の北側などで、陽が当たらない居室や室内空間
●建物の北側で日影になる周辺空間
●地下空間
●吹抜けや中庭
●トンネルや高架下歩道

■特殊な環境条件の創出のためのニーズ
 もう一つは、室内での日光浴や植物栽培、自然光による演色を必要とする商品の照明、また、太陽光による褪色や劣化への配慮が必要な美術品・家具の照明などです。リクガメ飼育へのニーズというのもこの範疇です。
特殊なケースでは、コンピユータのモニターに人り込む直射光を嫌って常にブラインドを降ろしているオフィスの室内照明、さらには、室内空間のアメニティを高める演出のためなど様々です。
これらはいわば環境上のニーズといえるもので、具体的には以下のようなケースがあります。
●人の室内日光浴、日照の確保
●リクガメなどの爬虫類の室内日光浴、日照の確保
●室内での植物育成や水槽内の水草育成
●自然光の下での演色性が求められる商品の照明
●美術品、家具等の照明
●アメニティのある空間づくり

■省エネ化のニーズ
地球環境保全や省エネ化、また、健康指向は年々高まっていて、今後も太陽光採光システムの利用は拡大していくと思われます。特に、最近では、住宅用の小型軽量化された太陽電池組み込み型の機種も商品化され、戸建て住宅およびマンションへも導入されています。今後は、これら住宅への設置を中心にしたものとなると見られています。

この幾つかのニーズを考えると、リクガメの飼育環境への利用も十分考えられそうです。特に日当たりのあまり良くない飼育環境しか確保できない住宅事情である場合には、考慮してみる問題でしょう。


太陽採光システムによって得られる光とは

太陽採光システムによって集められた光は、そのまま空気中を伝送して照射したり、あるいは光ファイバーで伝送して、任意の場所に照射できます。どのシステムにおいても、集光部は太陽の動きをセンサーによって自動追尾するコントローラーを備え、日中を通して効率的な採光をするようになっています。
これらの採光システムの具体的な構成と原理については後述しますが、採光システムによって得られる光の特徴をまず考えましょう。

■人の健康に有効、かつ、自然な光
採光方式により若干の違いはありますが、太陽光を構成している可視光線が伝送され、紫外線・赤外線は大幅にカットされると考えてよいでしょう。したがって、人にとっての健康や植物の育成に有効な光だけで構成された光といえます。 また、赤外線も大幅にカットされるため、熱くないクールな光が得られることになり、採光によって室内の温度が上昇して冷房に負荷をかけるようなことはなく、長時間の日光浴も快適にできることになります。
ただし、平面鏡などによる採光方式のもので、採光部に樹脂ドームなどを使用しないものでは、紫外線や赤外線など特定の波長の光線がカットされることはありません。
どちらかというと、この採光方式のものが、リクガメ飼育には現在利用が即できるタイプといえるでしょう。

■表情のある光
採光される可視光線の領域では、太陽光線のスペクトルに非常に近いものが得られるので、正午をはさむ昼間は白色に近く、夕方になるにつれて黄色、オレンジ色、赤色と光線の色も変化していきます。いわば「表情のある」太陽光が室内でも得られることになります(プリズムやレンズで採光するものでは、虹を照射することもできる)。
こうした表情のある光は、情緒的な意味だけでなく、動植物の生理のリズムにも合ったもので、その生体リズムを回復するのに役立ちます。
光を光ファイバーで伝送するもの以外は、反射光をそのまま直線的に照射します。トップライトと同様に屋根に取り付けるものでは、室内全体に光りを拡散させる工夫をしているものもあります。光ファイバーの伝送によるものでは、照射部に任意の照明装置を取り付けることが可能で、部分的な照明や室内全体に拡散させるものもあります。

これらを考えると、ビタミンD3の生成という用途には現在は対応していないのがわかりますが、光周期の再現には、とても効果的であることが分かります。

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太陽光採光システムの概要と特徴

太陽光採光システムは、採光部とそれに付随する太陽追尾装置、伝送部、照射部の三つの部分から成り立っています。

■採光部
採光部には、反射鏡、プリズムまたはレンズのいずれかが使われます。以下に特徴を解説しましょう。
(1)反射鏡方式
この方式は、平面鏡や曲面鏡を用いて太陽光を反射し、必要に応じて二次反射鏡などを使って所定の場所に太陽光を送り込む方式です。
光の伝送は空気中を通して直接行なわれます。比較的長距離の照射も可能です。
集光部と照射面との距離は、30m以内が望ましいと言われています。また、長距離になる場合は、照射したい場所に正確に光を導く設置精度が施工のポイントになります。
反射鏡の原理上、太陽高度が高いと鏡の受光面積が少なくなるため、太陽高度が高い夏期や南中時の採光量は低下します。
(2)プリズム方式
反射鏡方式で、太陽高度によって採光量に変化が出ることを補うため、2枚の平板プリズムを組み合わせ、それを別々に制御することで、多くの光を真下に屈折させる方式で、規格品の天窓用の枠に取り付けられます。比較的に採光量は大きく、リモコン調整による2段階切替・調光機構付きです。
(3)プリズム・反射鏡併用方式
全反射プリズムシートで入射した太陽光をシート面のプリズムで直下方向へ伝送し、水平方向の光は平面反射鏡によって直下に反射する方式です。この方式は、反射鏡方式における太陽高度による採光量の変化が少なく、大容量の光量が伝送でき、しかも直線的な長距離照射・短距離照射のいづれも可能です。
(4)レンズ方式
凸レンズを使用し光を濃縮して集光します。レンズは常に太陽に正対するように制御されるので太陽高度の影響は受けません。また、レンズは光の波長によって結合する焦点位置が異なるので、その性質を利用し、緑を中心にした可視光のみが焦点を結ぶように調節して、紫外線や赤外線をあらかじめ排除することができます。それだけに逆に考えると、紫外線や赤外線を集める技術も可能性があるわけです。
また、伝送路や伝送距離の制約がほとんどなく、設計の自由度が高いこともこの方式の特徴です。

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■追尾制御装置
太陽光採光システムは、採光方式の違いはあるものの、すべて太陽の自動追尾装置を備えていて、太陽の方位、高度を正確に捉えて太陽の位置に関りなく採光するように工夫されています。太陽の追尾制御装置には、以下の方式があります。
1、光センサーによって太陽の位置を確認しながら制御するタイプ
2、設置場所の緯度・経度と時刻からコンピューターで太陽位置を算出するプログラム方式
3、上記の2つの方式を併用するもの

1のセンサー方式では、太陽が雲に隠れるとその位置で停止し、再び太陽が現れた時点で追尾を再開するため、多少の時間的なロスが生まれます。
この点、2のプログラム方式と3の併用方式は、太陽が隠れている間も追尾を継続しているので、再び太陽が現れたところですぐに採光を再開します。また、日没後は自動的に翌日の日出に備えて採光部の向きを変えるようになっているため、いったん設置すれば、人間の操作は不要になります。ただし、プログラム方式は、太陽の位置を常に計算する必要があり、停電に備えたバックアップ電源の蓄電池も必要になります。追尾のための採光部の駆動方法は、いずれの方式でも省エネルギー設計が進み、小型モーターを使用し、AC100Vで数ワット程度の小さな動力で動き、中には太陽電池を利用したものもあります。

■伝送部
採光した大陽光は、空気中またはケーブルなどの媒体中を伝送されます。
1、空中伝送方式のものでは、採光部の断面積と同じ程度の断面積で遮断されない直線路が必要になります。
2、光ファイバーケーブルを使用する方式では、伝送路は曲線でも良く、柱や梁に邪魔されることもありません。ケーブルが通る細い管路が確保できればOKです。
光ファイバーケープルを使用する方式では、あらかじめ建物内部に配管する方が、施工には手間がかかりません。その点、空中伝送式は、特別の工事の必要はありませんが、光の照射する方向を変える場合は、反射鏡を取り付ける必要があります。

■照射部
散光部に多くの種類があるのは光ファイバーを伝送路として使用したもので、スポットライト(天井埋め込み型、スタンド型)から、ダウンライト、天井取付型で部屋全体を照明するハニカム型の照射器具などがあります。空中伝送式のものは、一般的には特別の照射器具を用いていませんが、配光板により光を拡散させているものもあります。

製品スペック1


製品スペック2


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導入コストとメンテナンス

光ファィバーは、その使用延長が長くなればイニシャルコストはかかります。その他の反射鏡やプリズムを用いた空中伝送式のものは、機構も単純です。いずれの装置も、メンテナンスはほとんど不要であり、駆動部の電力消費も少なく、電気代もせいぜいlカ月数十円程度で、気になるほどのものではなく、ランニングコストは極めて安いといえます。施工も、住宅用でポールに取付るものや、屋上、屋根面に設置するものは、重量も20〜30kg程度で簡単にできます。トップライト方式のものは、トップライトの設置と施工方法は変わりません。

導入のポイント

太陽光採光システムは、自然の恵である太陽光を簡単に伝送し、室内や日陰でもそれを楽しめるもので、利用範囲は非常に大きいといえます。しかし、言うまでもないことですが、あくまでも「太陽が出ているとき」に限られた装置であり、夜間、曇天、雨天の時は機能しません。したがって、建物内での生活や移動、執務等のための通常の照明計画とは全く別個に考えるか、併用させるか、明確にして使用する設備ということが前提になります。なお、太陽光採光システムを規制する法規は現在ありません。
導入の検討に当たってポイントとなるべき事項を以下にあげておきます。
・採光部が日照と伝送路を確保できる
・伝送路に制限があるか
・照射エリア周辺の光環境の調査
・照射される光の質に要求があるか
・照射部のデザインや機能に要求があるか
・どの程度の予算を考えるか
・光量と照射面積
厳密な光の質と照射部の機器のデザインを要求せず、居室やアトリウム等にとにかく日差しが欲しい場合、直線的な伝送路が得られれば、反射鏡方式およびプリズム,反射鏡併用方式のものが工事も簡単です。また、プリズム方式は従来のトップライト感覚で設置でき、室内に明るい太陽光を得たい場合に適します。
一方、伝送路の曲がりが多い、遮蔽物があるなど、空中伝送路の確保が難しければ、レンズ集光の光ファイバー方式を選択するしかありません。また、たとえ伝送路が容易に確保できても、スポットライトやダウンライトなど照射部のデザインや照射配光を工夫したい場合は、光ファイパー方式になるでしょう。 いずれにしても、目的と設置条件次第ですが、それぞれの方式の特徴を活かし、検討して、ケースごとに選択していくことになるでしょう。

こうして見ると、太陽光採光システムのリクガメ飼育環境への導入は、リクガメの光周期サイクルの安定化を目的とするのが1番のメインの理由になります。 また、部屋が北向きで、昼でも薄暗い環境などの場合には、その効果は大きなものであると言えます。
なにかすごそうな装置のような気がしてしまうかもしれませんが、年々ポピュラーな装置になりつつありますので、導入を考えても損はないと思います。

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