中小企業における戦略的パソコン活用のすすめ

パソコン通信、インターネットを活用する―情報化社会に対応せよ―

情報リテラシーの決め手、パソコン通信

 前回説明したパソコンLANが情報の共有と業務の連携を実現するための道具だとすると、今回のパソコン通信やインターネットは情報の収集と発信のための道具であるといえる。

 仕事に情報収集は不可欠だが、なかなか今必要な情報は手に入らないものだ。
 あるメーカーの新製品についての情報が知りたくてそのメーカーの電話してみたら担当者を探して電話をたらいまわしにされた経験はないだろうか。
 新聞、雑誌の記事はたいてい忘れた頃に見たくなる。
 本屋に行ってもよく売れる入門書はたくさん並んでいるが、欲しい専門書は見当たらない。

 情報とはそのようなものなのだ。
 あるようでない。
 問題は欲しい情報がどこにあるのかがなかなかわからないことにある。

 パソコン通信はまさにこうした情報砂漠をさまよう旅人を救ってくれる救世主である。
 ニフティサーブなどのパソコン通信サービスの会員になればその日から数多くの商用データベースを利用することができる。

 パソコン通信はもはや一部のマニアだけのものではない。
 操作方法も数年前と比較すると格段に簡単になった。
 提供されている情報サービスも数はもちろん質も高い。
 企業や人物、技術データベースの他、新聞・雑誌記事、産業統計、天気予報などはどんな企業でも活用価値があるだろう。
 新聞・雑誌記事のサービスではキーワードを指定して自動的に新聞や雑誌から関連記事だけをスクラップすることもできる。
 地域新聞や業界新聞もある。

パソコン通信の花形、電子会議室

 データベース検索サービスは非常に威力のあるものだが、頻繁に使われているわけではない。
 パソコン通信上で最も利用されているサービスが電子会議室である。
 電子会議室は文字どおりパソコン通信によって運営されている会議室サービスである。

 電子会議室では文字をとおして熱心な議論が行われている。
 しかし実は、電子会議室の利用価値は議論そのものよりも書き込まれた意見の可読性にある。
 電子会議室はニフティサーブを例にとればフォーラムという300ほどの大きなジャンル別の中にさらにテーマ別に数10室の電子会議室が用意されている。
 そこではそれぞれのテーマの下に終結した専門家や同業者などなんらかの形でそのテーマに関係する人たちが終結しているのである。
 中にはメーカーなどが自社製品のサポートのために運営している電子会議室もある。

 そこに起こることはどのようなことか。
 マーケティングならマーケティングの、品質管理ならば品質管理の、財務管理ならば財務管理の専門知識や質疑応答のやりとりがそのままノウハウとして蓄積されているのである。
 実際、ニフティサーブの教育フォーラムには教師が、医療フォーラムには医師が集まっている。
 マーケティングフォーラムやビジネスマンフォーラムには企業のエキスパートたちが知恵を交換し合っているのである。

 電子会議室への参加では何も発言を強制されるものではない。過去に発言された意見や質問をキーワードで検索できるので情報収集のためのデータベースとして利用しない手はないのだ。もちろん、直接質問や問題提起してもよい。
 電子会議室での発言には発言者のIDが表記されており、直接その人に電子メールを送ることもできる。
 私自身、電子会議室で知り合った仕事仲間が何人もいるくらいだ。

 電子会議室はまさにノウハウの宝庫である。過去に誰かが質問をし、それに対して誰かが回答する。
 何か知りたいことがある場合、関連する電子会議室を探して過去の議論について調べてみればよい。
 そこには自分が知りたい質問が既にされているかもしれない。
 もし自分が知りたい質問がない場合にはじめて自分が質問すればよいのだ。

パソコン通信とインターネット

 パソコン通信が専門業者が運営する情報のデパートだとすれば、インターネットはさしずめ商店街といったところだろうか。
 今ではその商店街にパソコン通信というデパートまで参加してきたため、パソコン通信とインターネットとの違いを語っても無意味になってきた。
 もう少し正確に述べると、世界中のコンピュータが標準化されたネットワーク上に接続された世界がインターネットということになる。
 インターネットの電子メールを利用すれば世界共通の郵便局のようにどこの国でも配達される。

 パソコン通信とインターネットのどちらをやればよいのかという質問をよくされるが、これは間違いだ。
 デパートと商店街のどちらがよいかと聞かれても困るのと同じだ。どちらにも魅力的な情報という商品が並んでいるけれども、商品の種類もサービスの形態も異なる。
 電子メールや電子会議室など似たようなサービスもあるが、電子メールでは利用できる機能に、電子会議室では運営されているテーマにそれぞれ違いがある。
 デパートでしか買い物をしないというやり方もあるだろうし、商店街しか行かないという人もいるかもしれないが、それぞれ並べられている情報という商品が少しずつ違うのだから最初は両方とも回ってみるべきなのではなかろうか。

 もちろん、回ってみた結果、どちらかだけにする選択もあって当然だ。
 パソコン通信だけでもデパートと同様に多くのサービス局が存在するし、インターネットという無限のネットワークに立ち並ぶホームページの数は現実の商店街の商店や事務所とは比べようがないほど無数ある。
 パソコン通信でもインターネットでも収集できる情報はいくらでもある。問題はその情報源を自分の制御できる範囲にすることである。

 また、ニフティサーブやアメリカオンラインなど大手のパソコン通信サービス(最近はオンラインサービスと呼ばないといけないらしい。)ではインターネットからWebベースで情報が発信されている。
 電子会議室もインターネット用のブラウザで閲覧、発言が可能になっている。

電子メールを誤解していないか

 パソコン通信でもインターネットでもまず電子メールから始めてみようという人は多いはずだ。
 しかし、電子メールはその本質をよく理解していないと失敗する。
 コミュニケーション手段として電子メールを考えた場合、必ずしも電話やFAXに勝っているわけではない。
 確実に相手と連絡とりたい場合は電話が一番であるし、重要な事項であれば会って話すにこしたことはない。
 電子メールには電子メールが得意とする舞台があるのであり、電話やFAXが得意とする舞台で使ってもだめなのだ。

 インターネットには電子メールの他に現在、インターネットフォンやテレビ会議といったリアルタイムなコミュニケーション方法が注目されている。
 電子メールはあくまでも郵便であり、今すぐ相手と連絡をとりたい、相手と直接話しをして確実に連絡事項を伝えたいといった場合はやはり電話の方が適している。
 また、電子メールでは電話のように相手の反応を聞きながら言い直したり補足することができないため、誤解や不満を生むことがある。
 電子メールを使う相手とは信頼関係がなければならないのだ。

 しかし、電子メールを信頼関係のある相手と利用すると絶大な効果がある。
電子メールを使うと一度に複数の相手に送ることのできる同報通信や関係者に参考送付ができるcc(カーボンコピー)を指定することができる。
 また、添付資料としてワープロや表計算ソフトで作成したパソコン文書、あるいはデジタルカメラで撮影した写真なども同封することも可能だ。
 表計算ソフトのワークシートを送れば計算式のリンクや串刺し計算機能を使った業務の連携も可能となる。

 電子メールは電話やFAXの代わりになると考えるよりも連絡会議のかわりになると考えた方がよい。
 社員が皆、業務報告を上司に電子メールで行うときに、同僚や関係部署にカーボンコピーで参考送付しておけば連絡会議を開かなくても誰が何をやっているのかみんながわたっているはずだ。
 営業情報としてメールの内容を蓄積すれば営業ノウハウのデータベースができあがるかもしれない。

 インタ−ネットの電子メールの場合、さらに世界中に対してプロバイダに対する一定料金だけで通信できるという大きなメリットがある。
 輸出入に関係する企業であればインターネットの利用価値はコスト面からも大きいはずだ。
 国際FAXを電子メールに置き換えることができれば通信コストが劇的に下がるだろう。
 実はこのことはインターネットフォンやテレビ会議の機能にもいえることだ。
 遠隔地に拠点を持っている企業であればインターネット上の電話やテレビ会議を検討してみる価値があるだろう。
 CUSeeMeというインタ−ネット用のテレビ会議ソフトは数万円で入手できる。
 スピーカー付きのWindows95パソコンかマッキントッシュパソコンであればビデオカメラとマイクを数万円で追加購入するだけで利用できる。

検索エンジンはホームページをデータベース化する

 インターネット喫茶に入ってみた人はいるだろうか。
 ホームページをできるだけ多く見ようと思って行ってみてもなかなかそうはいかない。
 チャンネル数の少ないテレビと違って星の数ほどあるホームページの中から自分の興味のある情報を取り出すのは簡単ではないからだ。
 これからインターネットを始める人は検索エンジンと呼ばれるホームページの登録が必須だ。
 Yahoo(ヤフー)と呼ばれる検索エンジンを使えばキーワードを指定して見たいホームページを呼び出してくれる。
 また、ジャンル別の目次も用意されており、不必要な検索も必要ない。

 検索エンジンを使いこなせば世界中のホームページを自分のデータベースとして活用できるのだ。
 企業でホームページを情報収集の手段として活用する場合は自社用のホームページ目次を作っておくことをお薦めする。
 探すのに時間がかかっていては情報の価値が半減するのは説明不要だろう。

ホームページは企画で決まる

 自社のホームページを作成したいという企業は単なる電子広告としてホームページを作成してはいけない。
 必ず失敗する。

 新聞やテレビの広告や折り込みチラシは必ず視聴者や読者の目に飛び込んでくるが、ホームページの場合には広告自体が独立してしまい避けられてしまう。
 ホームページは広告欄としてとらえるのではなく、自社ショールームとしてとらえるべきだ。
 ショールームの場合にはそれ自体で客を呼べるものを持っていなければならない。

 たとえば衣料品の販売業者のホームページ企画を想定してみよう。
 いきなり自社商品の宣伝をするのではなく、ファッションについての説明やお薦めの組み合わせなど専門家としての情報を提供する。
 ファッションショーは流行を作り出す意義もあるがホームページも同じだ。
 自社商品が売れるような流行を間接的に作り出せれば成功だ。
 そしてお薦めのファションや組み合わせが自社店舗で購入できること、会員になれば割引などの優待サービスが受けられることなどをアピールすればよいだろう。
 割引券を記載したページを作成しておき、そのページを印刷して店舗に持参した人に特別割引を行うという手もあるだろう。

 今回は衣料品の販売業者を例にとりあげてみたが、どのような業種でもホームページをショールームとして考えることである。
 製造業であれば工場見学がホームページ上でできるというのもいいのではないか。
 ホームページ自体の作成はフレームやjavaといった高度な処理を除けばWordやExcelといった普段使用しているパソコンソフトで十分作成できる。問題は企画にあるのだ。

イントラネットに気を付けろ

 最後に最近よく耳にするイントラネットについて触れておきたい。
 イントラネットとは社内のコンピュータシステムもインターネットと同じしくみにしてしまおうというものだ。
 ホテルなどに内線テレビがあるように自社にWebサーバをたてればホームページ社内掲示板として社内だけに流すことができる。
 電子メールも電子会議も可能だ。ホテルのホームページで予約サービスがあるが、これと同じように入力画面をホームページ上で作成して販売管理や生産管理のデータベースにデータ登録したり、検索・参照するしくみを構築できるのだ。

 エレクトロニックコマースもイントラネットによって実現される。
 エレクトロニックコマースの場合、電子通貨など決済方法が問題となるが、社内における受注入力や売上・請求処理などのしくみはイントラネットで可能だ。
 電子通貨もサイバーキャッシュ社ジャパンネットなど簡単に利用できるようになってきている。

 イントラネットが今、話題となっているのはその開発の容易性と導入コストの安さにある。
 中小企業こそ検討の余地ありなのだ。
 しかし、イントラネットには前提となるものがある。
 いきなりイントラネットというわけにはいかないのだ。

 まず、電子メールにしてもホームページにしてもワープロや表計算ソフトといったパソコンの基本的な活用ができることが必要だ。
 まだ1台もパソコンを導入していないのにインターネットもイントラネットもあったものではない。
 最新のホームページ技術にActiveXというものがある。
 これを利用するとホームペ―ジとしてWordやExcelなどのパソコンソフトで作成した文書をがそのまま表示することができるようになる。

 イントラネットはまず1台のパソコンを十分に活用し、パソコンLANで情報を共有、業務を連携した後に考えればどうか。
 パソコンLANならばケーブルとネットワークボードさえあればすぐにでも始められるのだ。
 また、イントラネットの開発が容易であるといっても、Webサーバなどのネットワークに関する技術、OracleやSQLServerといったデータベースシステムに関する技術は不可欠である。
 どこの開発業者でも構築できるというものではないことに注意していただきたい。


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