中小企業における戦略的パソコン活用のすすめ

パソコンLANを導入する―LANは難しくない−

情報の標準化が合い言葉

 前回、データベースの目的はデータの一元管理のあると述べた。
 しかし、一台一台のパソコンがばらばらに運用されているとすればどうであろうか。

 パソコンの台数分だけデータベースが存在しては一元管理の実現は不可能である。
 そこで、データやシステムをユーザー同士で共有できるパソコンLANの環境がどうしても必要になってくるのである。

 パソコンを活用するという文化が社内に育ってきたならば、次のステップとしてパソコンLANによる情報の共有化を図るべきである。
 はじめからパソコンとともにLANも導入する企業もあるが、私はこれには疑問を持っている。
 パソコンがあまり活用されていない段階では、パソコンLANを導入しても期待されるほどの効果があがらないからだ。
 パソコンの命はアプリケーションソフトにある。アプリケーションソフトの活用能力が高くなければLANにしたところでメリットは少ないのである。

 たとえば電子メールについて考えてもらいたい。

 ワープロしかできない人に対して表計算ソフトも使える人は実績表やグラフもメールすることができる。
 ワープロすら十分に使えない人の場合、電子メールは電話や手紙よりもやっかいなものとなるだろう。

 ところで、情報の共有は何もパソコン同士にかぎったものではない。大型コンピュータからもゲートウェイという専用装置を介すれば必要なデータを直接やりとりすることも可能になる。
(ただし、ゲートウェイが存在しないコンピュータもあるので注意が必要。)
 またVANやインターネットといった外部ネットワークを通じて他社との情報交換も可能になる。

 従来、データ入力が発生していた業務でも、ネットワーク化することによって必要データを直接入手することができるだろう。
 誰かがどこかで入力したデータは、必要とする人全てが利用すればよいのだ。

 データベースの活用などによって、データを標準化・共通化できる範囲が広がれば広がるほど情報の共有や交換できる可能性は高まってくる。
 隣の同僚から隣の部署、隣の事業所、さらには取引先にまでも情報の共有や交換の可能性は広がっていく。
 EDI(電子データ取引)もCALSもデータの標準化による情報の共有・交換しようとする一つの形態にすぎない。
 データを標準化・共通化していくためには各部署における仕事について見直す必要がでてくる。
 情報化を推進するということは業務を見直し、標準化していく作業であるといっても過言ではない。
 情報化の成功はいかに標準化された情報を収集するかにかかっているのである。
 POSデータのような定量情報にしてもクレーム情報のような定性情報にしても、吸い上げられた生の情報を標準化、体系化されたデータとして組み立てることによって科学的な統計手法を用いた様々なデータ分析が可能になってくるわけである。

1台のパソコンからパソコンLANへ

 パソコンLANはまさに業務の標準化のためにあるしくみである。
 パソコンLANの導入は何も難しくない。
 マッキントッシュパソコンであればアップルトークと呼ばれるケーブルさえ買ってくれば2台のパソコンを接続することができる。
 Windows95の場合でもLAN用の拡張ボードとケーブルを購入すれば接続はいたって簡単である。
 2台以上を接続する場合でもハブと呼ばれる集線装置を購入すれば20台程度までならば特に難しい問題は発生しない。

 ただし、5台以上接続する場合はWindowsNTのようなパソコンLAN専用のサーバソフトを用意した方がよい。
 パソコンLANを導入する企業で、必要な機器はもちろんサーバソフトなどどこまでのものが必要になるのか判断できないと相談にこられるケースが多々ある。
 しかし、どれだけのコストが妥当なのかは何をしたいのかが明確でないかぎり答えは出しようがない。
 10台接続するパソコンLANでも10万円程度(パソコンを除いて)ですむ場合もあれば、数100万円以上する場合もある。
 自社にとって妥当なLANを導入しなければ安物買いの損をするか、金をドブに捨てる欠かせないものである。
 だからこそ、その導入には十分検討をしてほしい。

まずは情報の共有から

 パソコンLANによる情報の共有化は、従来のコンピュータのように、全ての情報を共有しなくてはならないというものではない。
 全社で共有すべきものは全社で、部署で共有すべきものは部署で、そして個人で持つべきものは個人で管理すればよいのである。
 全社共有のためにはパソコンLANのサーバ上に全社用のデータフォルダをつくっておき、部署共有のためには部署ごとのデータフォルダをサーバ上につくっておけばよい。
 個人のデータは自分のパソコンのハードディスクで管理すればよいだろう。
 パソコンLANで共有できる情報は、個々のパソコンで管理していたもの全てにわたる。
 ワープロ文書や表計算ソフトのワークシート、あるいはソフトウェアそのものも共有することも可能である。

 また、情報の共有は何も社内のパソコンLANの中だけで終わる必要はない。
 パソコン通信やインターネットを利用すれば他社と簡単に情報を共有できる。
 パソコン通信とインターネットについては次回、詳細に説明する。

業務を連携させる

 パソコンLANを利用する場合、情報を共有できるのと同じくらい効果的な活用がもう一つある。

 それは業務を連携していくことだ。

 従来のコンピュータ活用では、一台のコンピュータの上に業務のしくみを実現していた。
 この方式では自分のところのコンピュータに必要な機能を全て開発しないかぎり、その機能を利用できない。
 これに対して、パソコンLANを利用した形態では、別のパソコンで作られたしくみと自分のパソコン上のしくみとを連携させることが可能だ。

 人の仕事中には標準化すべき部分と標準化するよりも個々の独自性を尊重した方がよい場合がある。
 同じスーパーマーケットの店ではレジ事務はどの店でも同じなのに、目玉商品やバーゲンの時期が違うのがその例である。
 従来のコンピュータではこうした点を無視し、全ての業務を標準化してきた。
 これに対してパソコンLANでは人の仕事のうち標準的な部分だけを取り出して、それを関係する人の仕事に連結させていくことができるのである。

 たとえば、営業マンがパソコンを使って自分の営業活動に関する情報を管理している場合に、その情報の中から訪問した顧客の情報や見積情報だけを取り出して、受注業務の担当者に渡すことができる。
 この場合、営業マンは会社全体の取り決めとして決められた標準的な事項の他に、営業マン一人一人ごとに独自の事項を設定して記録することも可能である。
 標準化すべきものは標準化し、独自性を優先すべきでないものは標準化しないで共存させることができるのだ。

 標準化を推進する場合、その適用範囲を誤るとかえって業務効率を悪化させてしまうことがある。標準化すべき業務範囲があるということを常に頭に入れておく必要がある。

 パソコンLANによる業務の連携も何も難しく考える必要はない。
 たとえば生産計画を表計算ソフトでする場合を考えてみよう。
 本社で全体の生産計画表を入力したワークシートを作成し、各工場や部門ではそれぞれ自分のところの個別生産計画表をワークシート作成する。
 そのときその個別生産計画表の達成目標は本社の生産計画表ワークシートから計算式連携するのである。
 業務の連携は表計算ソフトだけでもかなりのことが可能である。
 もちろん、AccessやSQLServer、Orqacleといったデータベースソフトや、VisualBasicなどの開発言語を用いればより高度な業務の連携が実現できるのはいうまでもない。
 最近では優れたプロジェクト管理ソフトも製品化されており、工程管理などの分野においても業務の連携が可能であろう。

パソコンLANはここがポイント

 パソコンLANで何ができるかについて考えるには、まず一台のパソコンで何ができるかについて十分に知っている必要がある。
 実は一台のパソコンを導入した時点でパソコンLANでできることは見え隠れしている。

 たとえば、今、ここに一台のパソコンがあり、表計算ソフトを使っているとしよう。そして、各支店の営業実績がFAXで本社に送られてきたとする。
 これらは串刺計算という機能によって、簡単に全社集計することができる。
 パソコンLANでできることはこの一台のパソコンだけで行うデータ連携の延長にすぎない。

 この場合、パソコンLANを導入すれば各支社で実績が入力された時点で串刺し計算が本社で自動実行される。
 パソコンLANでは複数のパソコン同志であたかも一つのハードディスクを持っているかのように、アプリケーション内の連携が可能になるのである。

 パソコンLANを導入すれば、利用者にはFドライブというようなアクセスできる記憶装置のドライブ名が増える。
 後は「F:¥第一支店.XLS」というように呼び出せばよい。先ほどの生産計画での表計算ソフトによる業務の連携の例もまったく同じ原理であることがおわかりいただけるだろうか。

 先に述べたように、パソコンLANを導入するとファイル共有やデータベース共有のための専用のサーバマシン(これもパソコンにすぎないのだが。)を置く場合がある。
 オフコンや大型コンピュータを知っている人はこれを親機のように考えてしまうことが多いが、パソコンLANの主役はそれぞれユーザの前にあるLANに接続されたパソコンの方である。

 パソコンLANの活用を考える場合はサーバマシン中心に考えるのではなく、ユーザーごとのパソコンを中心に考えないといけない。

 サーバはその名のとおりサービスの提供者であり、ユーザーのパソコンはクライアント、つまりお客である。
 パソコンLANの主役は1台1台のパソコンの前に座っているユーザー自身である。
 パソコンLANを使って何を共有すべきか、何を連携していくべきかをユーザ自身が考えていかねばならない。
 そのためには言われた仕事をしているだけではパソコンLANの活用方法は出てこない。
 自分の仕事の範囲はここまでだから後は知らないではだめなのである。
 人間自身がネットワーク化して自分の持っている情報や機能を提供したり、他の人や部署が持ってる情報や機能を利用していく姿勢が必要になってくるのである。

雑感

 部署と部署との間の壁は生物の細胞膜のようなものではないだろうか。

 細胞は機能ごとに配置され仕事を分担しているけれども、その間は血液や栄養素など必要なものが自由に行き来し、共有されている。
 また、複数の細胞が集まってレベルの高い仕事を担っている。
 一つの細胞が個として独立していると同時に個同士が蜜に集まって細胞群をなしている。
 さらにその細胞群がまた別の細胞群と集まって上位の器官を形成していく。

 独立と協調、まさにパソコンLANの目指すべき姿である。
 経営体はよく生物の体にたとえられるが、まさしくパソコンLANの目指す世界は生物の体のしくみそのものといってよいだろう。

 師は身近なところにいるものなり…


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