中小企業における戦略的パソコン活用のすすめ
パソコンのより効果的な活用のために―情報の共有と作業の連携―
戦略的なパソコン活用とは…
12回にわたって書き続けてきたこの連載も今回が最後である。
中小企業における戦略的なパソコン活用をテーマに論じてきたわけだが、はたしてお役に立てたかどうか。
パソコンの活用は業務改善のためにあることは何度も申し上げてきた。
業務改善のためにパソコンが大いに役立つのはパソコンが一台だけにせよ複数台がネットワークで接続されているにせよ、情報の共有と作業の連携を実現するからである。
ワープロソフトを再考する
ワープロソフトを使って文書を作成している場合でも、一度作成した文書を再利用することなく、また文書の閲覧は印刷した紙で行っている場合はそこにパソコン活用の意義はない。
ワープロを使うことで情報が共有され、仕事が連携していかねばならないのである。
そのためには文書のテンプレート化による標準化や、共有フォルダを利用した整理が効果的となる。用語の統一も重要である。
昨今、文書のデジタル化の重要性が叫ばれている。
なぜ、文書をデジタル化する必要があるのだろうか。
文書のデジタル化が情報の共有と作業の連携の実現に不可欠だからである。
社内はもちろんのこと、文書がデジタル化されていれば企業間でも情報の共有と作業の連携が実現できる。
はやりの言葉を使えば前者がイントラネットで後者がエクストラネットである。
感違いしないでいただきたい。
イントラネットもエクストラネットもパソコンLANやインターネットなどのネットワークが本質ではないのだ。
ネットワークによって共有・連携することのできるデジタル化された文書こそがイントラネットやエクストラネットの本質なのである。
電子メールも電子掲示板もホームページも全て文書のデジタル化が前提だ。
デジタルだからこそパソコンによる分類や検索といった強力な機能を活用できるのだから。
社内の業務マニュアルや商品カタログがデジタル化されればインタネット上でホームページを立ち上げるのも容易である。
現状は情報の共有や作業の連携の価値のないホームページが乱立している。悲しいことではないか。
表計算ソフトを再考する
表計算ソフトもまた文書をデジタル化することで様々な戦略的な活用が可能となる。
四則演算だけならばそろばんや電卓でも十分だ。
表計算ソフトの活用意義は表計算機能にあるのではない。
計算後の分析機能にこそ活用意義がある。
売上予測のためのシュミレーションや広告、売り場レイアウトの変更の効果測定、生産能力に応じた生産計画の最適化など、表計算ソフトの威力は非常に強力である。
表計算ソフトの活用度合いは初級者と上級者では相当の差が出てくる。
合計計算までで終わっているところではまずグラフの作成に取り組んで欲しい。
グラフの設定は一度行っておけば表計算の結果と自動的に連動する。
実績分析のためのグラフを整備して電子掲示板に登録すれば優れた意思決定支援システムができあがるのだ。
次の画面は表計算ソフトExcelで作成した経営グラフをロータスノーツに貼り付けた例である。
データベースソフトを再考する
オフコンを使っている企業からよく相談を受けるのがオフコン上の実績データの活用である。
最近ではオフコンとパソコンとをLAN接続してパソコン上の表計算ソフトで分析可能としている場合もある。
しかし、パソコンからオフコンのデータを見ることにはあまり期待しない方がよい。
オフコン上ではデータが出力帳票の形にサマリー化されていて結局、出力帳票の形以外ではデータ分析ができないからだ。
これはオフコンが大量のデータを保存したり検索することを得意としないことが原因である。
次の画面をみて欲しい。これはExcelのピポットテーブルという機能であり、実績データを任意の項目を指定して集計することができる。
オフコン上の実績データもExcelのピポットテーブルが使えれば様々な分析ができるだろう。
ExcelのピポットテーブルではExcel上のデータの他に、データベースのデータを取り扱うことができる。
データベースソフトAccessでは数万件程度のデータが、SQLServerやOracleが数百万、数千万件ほどのデータも管理可能である。
販売実績や生産実績を複数年分保存しておけば、対前年同日比なども瞬時に算出できる。
オフコン上の実績データを活用するためには、オフコンのデータはパソコン上のデータベースに再構築することが必須なのである。
グループウェアを再考する
電子メールはまさしく情報の共有と作業の連携のためのツールである。
にもかかわらず効果がでない企業が存在する。人が仕事をするとき、二種類の情報を受け取る。
一つは頭ですぐに覚えることのできる情報と、もう一つはメモして残しておく必要のある情報だ。
実は電子メールの成功と失敗はこの二つの情報の取り扱いから生まれるのだ。
次のメールを見て欲しい。
メール1「明日、訪問する企業の業績をFAXするから目を通しておいてくれ。」
メール2「新商品の説明書を送ってくれないか。」
これら二つのメールはメールによる情報の共有と作業の連携の効果が何ら得られていないまずい例である。
頭ですぐに覚えることのできる情報がメールされ、メモして残しておく必要のある情報はFAXか郵送されてくる。
メールすべき情報はメモして残しておく必要のある情報であり、頭ですぐに覚えることのできる情報は電話かFAXでよいのである。
先ほどの例では以下のように改善すべきである。
電話「明日、訪問する企業の業績文書をメールしておいたから目を通しておいてくれ。」
電話「新商品の説明書をメールで送ってくれないか。」
電話やFAXは決して不要になるものではない。
相手の意志を確認したい場合は直接会うことにこしたことはない。
メールはメモする手間がなくなり、仕事に必要な情報が必要な人全てに瞬時にとり揃うところに意義がある。
メールの本質を考えればメールに置き換えるべきものは電話よりもむしろ連絡会議であるといえるだろう。
仕事に必要な情報がメールで伝達されるのであれば仕事のいくつかは自動化することが可能となるであろう。
メールによって仕事を連携させるのがワークフローである。
ワークフローの実現のためには仕事に必要な情報と仕事の手順を標準化しなければならない。
ワークフローのうちパソコンで処理が可能なものについては自動化することも可能である。
SQLServerのメール応答機能を利用すれば、自動データベース検索や自動発注のしくみなども構築できる。
インターネット・パソコン通信を再考する
インターネット・パソコン通信の利用はもはやパソコンの活用のための基礎能力といってよいほど一般的になってきた。
しかし、操作は簡単でも活用効果を出すためには少し努力が必要である。
自分にとって、会社にとって役に立つ情報がどこにあるのかを見つける必要があるのだ。
普通の地図よりも観光地やお薦めのレストランが印されているガイドブックが価値あるのと同じである。
自分にとっての、会社にとってのインターネット・パソコン通信活用のためのガイドブックが必要なのだ。
ブラウザ上のブックマークはインターネットのためのガイドブックと言えるだろう。
業務パッケージソフトを再考する
最後に業務パッケージソフトについて再考することにする。
業務パッケージは安価で高機能なものが多く存在する。
しかし、自社業務と業務パッケージの内容が合わないと成功しないどころか業務にも支障が出てくる。
業務パッケージ導入の失敗のほとんどは安価なことも起因するのか、評価が不十分であることにある。
導入コストが安価ですむのだからこそ、事前の業務分析をじっくりと行って欲しい。
パソコンの活用は情報の共有と機能の連携という業務改善に他ならないのであるから、たとえ業務パッケージソフトといえども現状改善のための業務分析は不可欠なのである。
各都道府県にある中小企業情報センターでは各種パッケージソフトを体験できるコーナーを設けている。こちらもぜひ活用していただきたい。
それでは皆様のパソコン活用が成功することを祈って筆を置くことにしたい。
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