パソコンの本質は道具にすぎない

 「パソコンを入れたけれども目に見えるような改善は現れてこない」、「パソコンを入れたいがどう使いこなせばよいのかわからない」
 このような声はいたるところで聞くことができる。

 ここで最も大切なことはパソコンというものの正体がコンピュータであり、コンピュータは自分自身についての使い方について何も知らないのだということである。

 たとえ、パソコンショップで華やかなソフトウェアのデモが動いていたとしても、それはそのデモを考えた人のアイデアであり、パソコンを買った人は今度は自分自身で使い方についてのアイデアを出さなくてはならない。

 もちろん、マニュアルやサンプルを参考にしたり、書店で参考書を買ってきていくらでも勉強することはできる。
 問題になるのはアイデアの内容であり深さなのである。
 より効果的なアイデアを考えるためには、パソコンの持つ本質とそれが持っている機能について十分に理解することが必要である。
 パソコンの性能向上は急激な速度で進んでいるので古い知識を持っていてはかえって危険である。
 昔のパソコンを知っている人から話しを聞くことくらい危険なことはない。

 さて、パソコンについてまず知っておかなくてはならないのは、コンピュータの本質というものが結局道具にすぎないというである。
 したがって、コンピュータを使って効果が出るかどうかは、その使う人の考え方に全てかかっているといえるだろう。
 パソコンを使う人のアイデア次第だといったのは、まさしくこの本質によるものなのである。

 もちろん、性能の高いコンピュータの方が高い活用効果が期待できることは間違いない。
 しかし、やみくもに性能の高いものを望むことは適切ではない。
 はじめから何台ものパソコンをつなぐパソコンLANを導入し、その後で何をしようかと考えるケースがあるが、パソコンLANは利用者間で情報の共有のしくみが必要になってからで十分であって、それよりもまず部署ごとにおいてパソコンをどんなことに使えば効果があるのかについて考えることが先なのである。

 より高い情報の共有のしくみが必要になれば、それに見合うものを購入すればよい。
 コンピュータが生み出してくれる効果はコンピュータが勝手に出してくれるものではなく、「導入する人の綿密な計算によって生み出されるのだ」ということはしっかりと肝に命じておく必要があるだろう。
 言い換えれば、「コンピュータを何に使いたいのかを十分に検討した上でその目的を果たすためのコンピュータを選定する」ということである。
 コンピュータを使って何をしたいのか、どうなることを期待するのかについてを明確にして必要なコンピュータを絞り込めば、不必要なコンピュータ投資をすることを避けられるのである。

 実際、コンピュータに関する見通しが甘くて、コンピュータを入れてもその投資額だけの効果を回収できていないところもめずらしくない。
 期待していた機能すら果たしてくれないコンピュータを抱える企業さえある。
 コンピュータはどれでも同じではない。その上で動くプログラムも業者によって全く異なったものになることを知らなくてはいけないのだ。

 従来、コンピュータは魔法の箱のように思われ、販売する側もあたかもコンピュータを導入すれば全てが解決するような誤解をユーザーに与えてきたきらいがある。
 その結果、ハードウェアつまり機械にはお金をかけるが、ソフトウェアつまりコンピュータに何をさせるのかという点についてはお金をかけない風潮が出てきたといえるだろう。

 コンピュータの本質は道具としての機能を決めるソフトウェアにこそある。

 コンピュータは決して魔法の箱でなく、使い方次第で生きも死にもする繊細な道具なのである。
 しかし、従来からコンピュータ導入のための提案や相談は機械についてくるおまけのように取り扱われ、使うソフトウェアも始めから用意されたものをそのまま使えばよいと思われてきた。
 よくコンピュータ化されている経理業務については、もともと財務会計として標準化されたシステムであることから、パッケージソフトによるシステム運用でも十分に活用効果があるものである。
 もっとも、経理パッケージの中でさえも開発者側に経理業務自体の理解が足りないと思われるものもあるので注意する必要はあるが…

 これに対して、販売管理や購買管理、原価管理、あるいは生産管理といった業務では、企業ごとにその内容に差があるため、ある企業で効果があっても別の企業でも同じように効果が上がるとは限らないのである。
 安易なパッケージソフトの購入やシステム開発の委託は絶対さけなければならない。買ってからどうしようと相談されてもできることは限られているのだ。

 ところで、昨今ようやくダウンサイジングということばが落ち着いてきた。
 高性能化したパソコンが、従来の大型コンピュータやオフコンでしかできなかった大量データの集計や帳票作成のシステムを低価格で実現したり、一般的なアプリケーションソフトである表計算ソフトやデータベースソフトもアイデア次第では絶大な効果を発揮することが知られてきたのである。

 また、オープンシステムということばもよく耳にする。
 オフコンや大型コンピュータといったコンピュータでは従来、ハードウェアもそこで動くアプリケーションソフトなどのソフトウェアも一つのメーカーの製品に依存する傾向があった。そのために、利用者側では限られた選択範囲の中でしかコンピュータの活用を考えることができなかったのである。
 しかし、今はどこのメーカーもオープンシステムに対応し、特にパソコンでは異なるメーカーのソフトウェアが異なるハードウェア機種の上で動くことは珍しくなくなってきている。
 WindowsソフトはWindowsの動作するパソコンであれば機種に依存することなくどこのメーカーのパソコンでも同じように利用できるのだ。

 現代はダウンサイジングとオープンシステムの潮流にのって、コンピュータ自体の持つ道具性がますます向上する時代である。ユーザーは予算と用途からもっとも適切なパソコンを選べばよいのである。
 ハードウェアをみても音や映像を簡単に再現できるマルチメディアパソコンや手軽に携帯できるノートパソコンなどがあり、ソフトウェアをみても複雑な数値演算や統計解析のできる表計算ソフトをはじめ、大量に発生する業務データを高速に検索したり更新することのできるデータベースソフトなど、利用者の目的に応じて選択できる道具の種類が豊富に出まわっている。
 企業はこれらの新しい潮流にのって、最も適切な情報システム化投資を決定すればよいのである。

 そして、機械に余分なお金をかけていたところをもっとその使い方を考えるところにまわせばよいのだ。

 よく分析した結果、コンピュータを使わずに業務改善が実現できたというケースも出てくるかもしれない。
 なぜならばコンピュータは道具であって解決策の全てではないからである。
 大切なことはコンピュータという道具がその持てる能力を発揮できる最高の舞台をあなたが用意できるかどうかなのだ。



本文に戻る本文に戻る

ホームページに戻る ホームページに戻る