情報化相談室
問題認識から始める工程管理
Q
私の会社はスクリーンやシールの製造加工業を営む中小企業ですが、取引件数の増加に伴って、納期遅れや不良品に対するクレームも増えてきています。
業者に工程管理と品質管理システムの構築のための見積もりを依頼したところ、かなりの額の投資が必要なことがわかったのですが、最初は必要最低限のことから始めるという方法はとれないものでしょうか。
A
たとえば管理すべき工程が10あるとすれば、業者はパソコン10台とデータを蓄積するためのサーバ1台を見積もり基礎とするでしょう。
遠隔地に工程があるとすればルータなどの通信機器も必要になるでしょうからさらに機器構成は大きくなります。
また、工程管理や品質管理など製造業における業務はパッケージソフトも少なく、システム開発料も高くなることがあります。
財務会計など金額単位で価値測定する業務では企業間で共通要素が多いため、パッケージ化することが容易ですが、商品単位で価値測定する工程管理と品質管理などの業務では商品の種類ごと、企業の数ごとシステム化の形があるといえます。
販売管理のような一般的なパッケージソフトですら工程管理と密接に関連する製造業ではなかなか業務に合う製品は見つからないものです。
しかし、ご相談の内容にあるように最初は必要最低限のことから始めるという方法は可能です。
というよりも必要最低限のことから始めるべきといってもよいのです。
自社において必要な工程管理と品質管理とは何か、自社において取り組むべき業務改善は何かということが明確でないのにどうして業者にシステム開発を依頼できるのでしょうか。
本当にパソコンが10台必要なのでしょうか。
本当に高価なサーバが必要なのでしょうか。
見積もりに算定されているシステム開発料が想定しているほどのシステム開発が必要なのでしょうか。
その会社における必要な工程管理と品質管理とは何か、自社において取り組むべき業務改善は何かということが明確でないにもかかわらず、業者が見積もりをする場合、業者の経験と受注期待から構築すべきシステムのかたちを想像してつくりあげているはずです。
他人が商売のために勝手に想像したシステムで自社の業務がはたして改善されるでしょうか。
提供された多くの機能が使う必要がなかったり使えないものであったり、必要な機能は提供されていないため、手作業でカバーしているケースを私は数多く知っています。
あなたは100万円でも10万円でも出すべきではないのです!
「餅は餅屋」といいます。
システム構築をコンピュータ屋にたのむのは当然だといえます。
しかし、自社の業務の内容をよく知っているのは社内の人間です。
自社の業務は自社のものこそ「餅は餅屋」であることを忘れてはいけません。
コンサルタントはあなたの会社のあるべき姿、改善すべき業務の内容について提示するでしょう。
しかし、コンサルタントは改善提言、改善実行を仕事にしますが、改善のための意志決定は自社社員、トップ課題であれば経営者が「餅は餅屋」なのは当然です。
意志決定を外部まかせにする企業は決して成功しません。
今回の相談の場合、まず現状としての問題認識から始めるべきでしょう。
また、コンピュータによる業務改善は決して魔法のようなものではありません。
手作業で実現可能な改善方法をより効果的に実現するだけなのです。
たとえば工程管理の場合であれば、作業報告書や電話確認をもとにした作業状況管理表の作成が考えられるでしょう。
手作業で行う場合には作業報告書の分類や電話確認、作業状況管理表への書き込みなどに時間がかかったり、確認漏れなどによって作業の遅れを正確にかつタイムリーに把握することができなかったりします。
これをコンピュータ活用すれば、入力された作業状況がリアルタイムにコンピュータ上の状況分析もマウス一つで切り替えられ、現在の進捗状況からの完了予測や、工程に要した設備や作業員のコスト算出も可能になります。
また、過去の工程実績をもとにした工程計画も可能でしょう。
品質管理ではどうでしょうか。
機械設備から自動的に品質情報をコンピュータ上に取り込むシステムもありますが、ここでは不良品発生の予防機能の実現として工程上でのトラブルや注意点を掲示板を使って情報共有する場合について考えてみましょう。
コンピュータによる電子掲示板を使うと掲示する情報の数は無制限の上、過去の情報から必要な情報を検索することが可能です。
たとえばのりを使う工程であれば「のり」と指定すればのりを使った品質情報が一覧表示されます。
さて、最後に具体的なとるべき方策について述べておきます。
最近のパソコンをベースとしたコンピュータシステムでは1台のパソコンで必要な機能を実現した後で、機能拡張のためにパソコン台数を増やしたり高性能なサーバを導入して接続することが可能です。
工程管理においても当初は1台のパソコンで作業状況管理表をワープロ化(正確にはより適切なソフトを使うべきだが。)することから始めればよいのです。
各工程からの状況報告は現状のまま報告書や電話連絡であっても、作業状況管理表をコンピュータ上で作成することによって納期管理という業務精度は向上するでしょう。
先に延べた実績分析や工程計画はパソコン用の工程管理ソフトをスタンドアロンで使っても実現できるのです。
作業状況管理表の様式について検討した後で、各工程にパソコンを設置して現場から直接状況データを入力させれば効果的な工程管理がタイムリーに実現できることはいうまでもないでしょう。
サーバを導入してデータベースソフトと組み合わせれば実績データと計画データとの差異分析など高度な経営分析も可能になります。
品質管理でもたとえばロータスノーツをまず1台のパソコンに導入して、各工程から収集した品質管理情報を入力してデータベース化することが考えられます。
蓄積された品質管理情報から品質改善のための分析と指導が可能になるでしょう。
品質管理情報についても管理すべき項目を分析した後、各工程にパソコンを設置して現場から直接品質管理データを入力させれば効果的な品質管理がタイムリーに実現できることはいうまでもありません。
現場の作業担当者は工程に関係する品質情報をあらかじめ調べておくことができ、刻々と発生する製造上の問題はリアルタイムに関係者に発信されるでしょう。
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