情報化相談室

CADソフトの選定と活用−技能習得のための教育・指導サービスがカギ−

 当社は電気工事業であるが、現在、コンピュータを使わずに手作業で作図や積算業務を行っている。今後、パソコンを活用して業務の効率化を図りたいと考えているので、効果的なパソコン活用のための留意点について指導願いたい。
A.
1.パッケージソフトの選定方法(CAD、積算)
(1)CADソフトの選定方法
 CADソフトを使えば作図業務の効率性は劇的に向上する。
 手書き製図と比べて図面の修正や再作成が容易であるだけでなく、拡大や縮小、回転、移動などが瞬時にでき、また再利用頻度の高い図については部品として登録しておくことによって、必要なときに呼出すことができる。
 JISの規格部品などについてはあらかじめ登録されていたり、業種別の製図部品が別途オプションとして入手することができる。
 過去の手書図面や建築事務所からの平面図をスキャナーで読取り、CADデータ化するソフトもある。
 少なくとも他社製CADデータの利用機能は有していることは一般的な機能として評価すべきであろう。
 CADソフトを選定する場合、CADソフトそのものの機能に加えて積算ソフトとの連動性について十分に確認する必要がある。
 積算ソフトとの連動ができるCADソフトであっても、連動できる積算ソフトが指定されていたり、出力できる積算データに制限を持つ場合がある。
 また、
CADソフトは購入してインストールを終わっても誰でもすぐに図面が書けるようなメニューは提供していないものが多く、最初はキーボード中心の作図コマンドを覚える必要がある。
 その結果、技能習得に時間がかかり、購入したけれども習得できずに結局活用しないという事例も多いのである。
 このような状況を招かないようにするためには、十分な教育と指導を受けることが必要であり、購入先が適切な教育セミナーや指導サービスを実施しているかどうかについても評価することが大切である。
CADソフト本体が廉価でも指導料金が高額な場合があるため、注意が必要である。
 作図ソフトとしてのCAD本来の機能については、自社で用いる設計部品の充実度を評価する必要がある。
 CADソフトには電気工事や土木建築、配管配線などの業務に特化した専用のCADソフトと、各業務用の設計部品を提供する汎用的なCADソフトがあり、一概にどちらが優れているか評価することはできない。
 しかし、自社にとって最も有利となるパッケージソフトを選定するという観点からは、

  ○自社業務に一番使いやすいもの
  ○技能習得がしやすいもの
  ○積算業務などとの連携がしやすいもの

などの評価事項について検討することを提言する。
 特に、技能習得がしやすいものという評価事項については、パッケージソフトそのものの評価だけでなく、仕事仲間や取引先における使用状況なども考慮すべきである。 
 次は電気工事業向けのCADソフトの画面例である。



(2)CALSへの対応
 CADで作成された製図データはインターネットなどの通信回線を通じて送ることができる。
 特に最近では汎用CADソフト「AutoCAD」で有名な米国のオートデスク社の開発したDXFフォーマットがCADデータ交換の標準として普及してきている。
 今後、CADデータなどあらゆるビジネスデータを企業間でインターネットなどを通じて交換し合うCALSが進展することは間違いない。
 CADソフトを選定する場合、こうしたデータ交換用のフォーマットにも対応しているかどうかについてもチェックする必要があるだろう。

2.業者の選定方法(ハードウェア、ソフトウェア)
 パソコンを新規に始める場合、ハードウェアとソフトウェアは別個に考えた方がよい。
 CADソフトなど業務用のパソコンソフトを取り扱う業者の中にはハードウェア(パソコン本体)とセットで販売する業者が多いが、セットされるハードウェアはCADソフトなど販売したいパッケージソフトを稼動させるという観点から選定されており、購入後さらに別のパッケージソフト(たとえばプロジェクト管理ソフトなど)を利用しようとなった場合に問題が生じることがある。
 また、電子メールにおる同業者や取引先との情報交換やインターネットやパソコン通信からの情報収集などネットワークの活用は、もはやパソコンの基本機能であり、ワープロや表計算ソフトなどと同じように初期購入時から利用可能としておくことが望ましい。
 以上のことから、パソコンは一般的なパソコンショップなどの業者から購入し、パッケージソフトについては同業者あるいは取引先などで利用の多い製品を購入することが考えられよう。
 ただし、CADソフトを利用する場合、メモリについては64MB以上、グラフィックカードはなるべく高速な物が望ましいので、購入業者にはCADソフトの利用を前提として機種選定にあたることを提言しておく。

3.効果的なパソコン活用の進め方
 パソコンを購入した後うまく活用できない事例において、考えられる原因の多くは情報不足にある。
 独力による自習でパソコン技能を習得できる人は限られており、活用成功者のほとんどは外部の教育セミナーや知人の助けをうまく活用している。
 もっとも効果的なパソコン活用の進め方は、同業者など自社と同じ問題点、経営課題を持つ者同士が集まって、情報交換や共同研究などを行うことである。
 組合や商工会議所(商工会)などへの参加はセミナーなどへの参加機会があるだけでなく、協力パートナーの発見にもつながる。
 同様の観点から、インターネット上のメーリングリストやパソコン通信上の電子会議などに参加することによって、地域を越えたビジネスパートナーを発見することが可能となる。
 パソコン通信サービスの最大手ニフティサーブではCADや積算ソフトの活用方法などについて活発な情報交換が行われている。
以下はニフティサーブのCADフォーラムの画面である。





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