情報化相談室

情報化対応診断の事例から…染色業における情報システム再構築化計画ー業務改善ポイントの把握が決め手ー

 当社は繊維製品の染色を業としているが、最近、染色注文の多品種小ロット化傾向が強まり、作業効率の向上が最重要経営課題となっている。
 しかし、現在の情報システムは請求書発行程度の機能しかない上に、構築担当者が退職しており現行システムの運用にも支障が出ている状況にある。
 今後については、現行システムの反省からまず業務全体を見直して、経営課題の解決に直結するような有効な情報システムを設計したいと考えているので、当社においてとるべき基本的なシステム化方針について提言していただきたい。
A.
1.現行業務に対する分析結果
 ヒアリング及び書類調査の結果、判明した現行業務の主な機能について以下に列記する。

 @価格帳による受注単価の決定
 単価帳を参照して決定するが、単価設定のためのルールが明確でなく、かつ単価設定の適切性を検証するための価格履歴に関する情報、実際原価に関する情報が収集・蓄積されていない。
 現状においては、業界における標準的な加工賃を基礎として、取引先ごとの実績による割引率の設定や、工程実績による加工賃の改訂が必要時に行われている。
 A生地台帳による在庫の確認
 営業部に保管されている生地台帳で在庫を確認し、在庫がなければ作業票を作成し、以下、作業完了まで工程管理を行う。
 生地台帳は営業部において管理されており、仕入時及び出荷時に手記入されている。(支給品は営業部、仕入品は製造部がそれぞれ記入する。)
 なお、生地台帳の内容については、月1回棚卸調査が実施されている。
 B作業票による工程管理
 コンピュータが打ち出した作業票(カーボン紙)を使って各部署への作業依頼と進捗状況の管理を行っている。
 営業部が作業票(カーボン紙含む)を回収して進捗情報をコンピュータ入力しているが、カーボン紙をまわすときと現本をまわす場合とがあったり、セットやなせん処理など別作業票を起票するものがあるなど煩雑な状況となっている。
 また、現行システムでは外注や仕上依頼など全ての作業を管理できていない。
 C売上の計上、請求、納品
 出荷確定した仕上品について売上計上する。
 請求書、納品書、送り状の発行については、締日による一括発行方式ではなく、売上計上の都度、プリントアウトされている。
 また、相手先指定伝票の場合については、別途手書き作成している。(現行システムにおいては、取引完了のために不要であってもプリントアウトする必要があると思われる。)
 売上実績の情報については、現行システム上では過去1ケ月分の参照しかできない。
 D入金消し込みと未入金分の請求残管理
 コンピュータ上で売掛情報と入金情報のマッチングを行い、未入金分の請求残管理を行っている。
 なお、手形管理は経理部において行われている。

2.現行システムに対する有効性評価(現行システムの問題点)
 現行システムにおいて解決すべき問題点は以下のとおりである。

(1)価格管理の機能がない
 価格帳部分についてシステム機能が用意されていないため、適切で迅速な価格管理が実現できていない状況にある。
(2)在庫管理の機能がない
 生地台帳部分についてシステム機能が用意されていないため、適切で迅速な在庫把握が実現できていない状況にある。
(3)過去の生産実績を再利用できない
 受注から製造工程、納品に至るまでの業務実績がデータベースに蓄積されていないため、過去の受注実績や生産実績を利用した価格設定や工程計画などが実施できない状況にある。
(4)請求書が締め日単位で一括発行されていない
 請求書の発行が締日による一括発行方式ではなく、売上計上の都度、納品書及び送り状とともにプリントアウトされているため、請求処理が煩雑となっている。
(5)専属SEがいないため、システムでできることできないことがわからない
 システム機能に周知した専属SEがおらず、またシステム機能に関するドキュメント作成が不充分であるため、システムを十分に活用できていない上、適切な運用も確保できない。
(6)商品マスタ上の管理情報が少ない上に、わかりにくい
 コンピュータ上で管理している商品情報が不充分なため、効果的な商品検索などの活用ができていない。
 また、商品マスタ上の管理情報の意味がわかりにくい。
(7)工程管理における手作業負担が大きい
 工程管理はコンピュータから打ち出された作業票を使って、手作業で管理している状況(営業部→工程部門にて作業実績記入→営業部にてコンピュータ登録→次工程部門→…)にあり、工程進捗状況の管理は実現しているが、小口取引の増加に伴い、手作業負担が増大化してきている。
(8)外注や仕上依頼、及びセット処理、なせん処理などの作業が工程管理できていない
 現行システムでは管理対象となっていない作業や工程があるため、手作業による管理も必要となっており、工程管理が煩雑となっている。
(9)バックアップができていない
 現在、実績データの定期的なバックアップがされていないため、障害時における復旧が困難な状況にある。
 
3.次期システムの在るべき姿
 今回実施した調査の結果、製造・販売に関する業務については、一般的な製造業と比べて特に異質な部分は見当たらず、価格管理や工程管理、在庫管理といった機能を有する一般的な製造業向け製販統合パッケージソフトの適用が可能であると考える。
 しかし、商品マスタ(価格含む)や工程マスタなどの基盤となる情報については、自社業務の内容を十分に考慮して整理と体系化(管理項目と内容)を行うことが必要である。
 原価管理についても今後システム化を検討する場合には原価要素の洗い出しと積上計算式の明確化が先決となる。
 染色マスタの管理部分については今回ニーズが出てこなかったが、測定機器データをデジタル化することによって、制御パラメータとして工程を自動化することできるかもしれない。次期システムにおいては単なる販売管理システムではなく、工場のFA化も検討すべきであると考える。
 また、品質管理(ISO9000)、環境管理(ISO14000)への対応については特に検討されていないが、特に、品質管理(ISO9000)においては工程管理、外注管理、現物管理、校正管理など、貴社業務に関連する内容を含むことから、情報システム化立案の基礎仕様として事前に検討しておくことを提言する。
 業務系システム構築への取り組みと、ISO対応への取り組みとを統合して推進することによって、情報化投資の効率化を図ることが可能となるはずである。

4.情報システム再構築に向けた今後の進め方
 今回報告した内容を元に次期システムに求めるシステム機能についてとりまとめ、システム業者に対する提案依頼書を作成することを勧める。
 提案依頼書を作成することによって、複数の業者からの提案を受けることが可能となる上、業者提案の中で自社にとって必要不可欠なシステム化仕様が欠落することがなくなり、見積評価を共通の基準を持って行うことができる。
 情報システム再構築に向けてまず行うべきことは、システムに求める機能についての社内一致を図ることであろう。


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