情報化相談室

業務分析で決まる情報システム構築の善し悪し−普段から行う業務分析−

 現在、わが社では情報システムの全面的な見直しを進めていますが、現状の業務分析についてどのように進めていけばよいのかわかりません。
 業務分析の進め方について標準的な手順がありましたらお教え下さい。
A.
1.業務分析の進め方
 業務分析はトップダウンで概要分析から始めて、根本的なこと、重要なことから分析を行い、社内の了解を得てから次の詳細分析へと進めていくのがセオリーである。
 また、業務分析の結果は文書(できればロータスノーツなどを利用した電子文書)として確定していくことが必要である。
 社内の業務は明示的な知識(文書などでその内容を誰でも参照することができるようになっている知識)と暗示的な知識(文書化されておらず、過去からの慣習や会議での口頭伝達などで一部の社員にのみ認知されている知識)から成り立っていることが多い。
 問題は後者の暗示的な知識であり、社長が考えていること、管理者が考えていること、社員が考えていることが少しずつズレが生じてくるのがこれである。
 業務分析は具体的には、以下の四つのステップで実施していくことになる。

第一ステップ:社長の考えの明確化
 社長が経営上基本的な戦略として持っている考えを文書として整理確認する。
 社長自身が現行システムに対して抱いている不満、問題点についても全社的認識として共有を図る。
業務分析においてはまず基本となる考え方を共通の認識とすることから始まるのである。

第二ステップ:業務分掌表の策定
組織図を出発点にして、各部署における果たすべき任務、任務遂行の材料となる入力情報とその発信部署、任務遂行の成果となる出力情報、そしてその提供部署、任務遂行に必要となる管理情報(自分の部署にて情報を作成し、維持利用しているもの)について整理体系化する。
 組織図を作成する場合に特に注意すべきなのが、その任務の内容である。
任務とはその部署がトップ方針を受けて果たすべき役割、機能であって、作業ではない。
 しかし、多くの企業の業務分掌表ではこの任務が作業の内容になっている。
たとえば、営業マンの任務は何だろうか。「注文をとる」、「納品する」、「集金する」、といった作業内容が営業マンの任務ではない。
 営業マンの任務は「自社商品・サービスについて熟知し顧客の開拓にあたること」、「既存顧客の自社商品・サービスに対する満足度を維持・向上に努めること」、「見積、受注、納品、請求などの営業事務について適切に遂行すること」などではないだろうか。

第三ステップ:業務内容の評価 策定した業務分掌表の内容について、部署間における役割及び情報の配置に矛盾や重複がないか評価する。
 また、業務分掌表から明らかになったあるべき業務の姿に対して現行システムが果たしている役割(有効に機能しているか?)について明確にする。

第四ステップ:問題点の抽出と解決策の検討  業務分掌表は社内において実現すべき理想の業務体系をあらわしているはずであり、実際の業務状況と比較することによって、解決すべき問題点が浮かび上がってくる。
 その問題点を解決するためには組織上の改善や情報システムの利用が考えられることになる。
 これが将来において構築すべき次期システムの姿である。

 上に示した四つのステップにしたがって、すみやかに業務分析を進められること提言する。
 最も重要なことは検討すべきこと、あるいは検討したことについては文書化して知識として社内共有することである。
なお、業務分析の作業は情報システム化分析(システム概要設計)のフェーズにおいて引き継がれ、業務分掌表の中の任務(情報システムの果たすべき支援機能の候補)と、入出力及び管理情報(情報システムにおいて管理すべきデータベース構造の候補)についてさらに詳細な分析・調査が行われることになる。

2.日常業務としての業務分析
 業務分析が難しいのは、普段全く業務状況について把握することなく、いきなり何も把握できていない状況からスタートするからである。
実は、業務分析は情報システムの構築といった特別な場合のみ必要となるものではなく、普段から効果的な業務計画、遂行、統制(Plan、Do、See)を実現するために必要なはずである。

共同仕入や共同物流、あるいは最近話題となっているサプライチェーンなどの企業間連携を実現するためにも、お互いの企業が自分達の業務のやり方を明示し、調整していく作業が必要となってくる。
 そのときに、「実は私の会社がどのような業務体系になっているのかよくわからないのです。」などと答えることができる わけがない。
企業間連携が重要課題となってくるインターネット時代において、己を知らない個人も企業も取り残されることだけは間違いないことなのである。


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