情報化相談室

POS収集データが信頼できない−正確な情報収集は運用がカギを握る−


 わが社は音楽CDやビデオのレンタルを事業として店舗を展開しているが、昨年導入したPOSシステムの収集データが信頼できない状況にある。
 具体的にはあり得ないマイナス在庫が発生したり、グロスの売上実績と単品の売上実績との整合性に問題が発生している。このような状況が発生している原因と、今後検討すべき対応策について助言していただきたい。


<なぜPOSシステムの収集データが信頼できないのか>
 POSシステムは販売時点においていつ何がどれだけ売れたかを記録するものであり、本来、POSシステムを構成するプログラム群に重大なバグ(プログラムミス)がない限り、その収集データが不正確となることは考えられないはずである。
 しかし、現実にはPOSシステムの収集データが信頼できない状態にある企業は多い。
 その原因として考えられるものは何であろうか。

 POSシステムの信頼性を左右する大きな要素にその運用方法があると思われる。
 POSシステムでは販売時点における売上入力(商品の出)だけを対象とするのではなく、何がどれだけいくらで売れたかを管理するために、仕入れた商品の品名、分類、単価、数量などの情報(商品の入)についても登録される。

 POSシステムの信頼性を左右する運用ポイントについていくつか以下に列記してみる。

 ○本社から配信される商品情報(入荷予定、売価変更、新商品情報など)が業務開始前までに確実に更新されているか
 ○店舗側で設定した売価変更やセット販売などの商品情報が変更時点から確実に本社に収集されているか
 ○商品の入荷情報が確実に更新・伝達されているか
 ○新入荷商品の登録の前に新商品情報が確実に更新されているか
 ○販促商品や買上ポイントによる値引き情報が正確にオペレーションされているか

<POSデータの信頼性は運用がカギを握っている>
 上記の例のように、POSシステムの収集データが信頼できないという事例の多くは、商品の入と出に関する情報の登録が正確でないことに起因している。
 商品情報登録・変更の遅れによる売上データ誤りの発生や、入荷登録オペレーション処理の遅れによる売上時点におけるマイナス在庫の発生などはオペレーションシーケンス(POS運用の順序)が実際のものの動きと一致していないことに原因があるだろう。

 信頼性の高いPOSシステムを実現している企業では、運用オペレーション間の整合性チェック(前提オペレーションのチェックなど)機能が充実していたり、各店舗の店長のモラル・スキルが高くなっている。
 今回、店舗におけるPOSの運用マニュアルについて観察したところ、システム開発業者が提供したものをそのまま使用しており、決してわかりやすいものとはなっていなかった。少なくとも改善の余地はあるように思われた。
 POSシステム内における運用オペレーション間の整合性チェック機能がどの程度組み込まれているかについては追跡調査することが必要だが、少なくとも現在生じているPOSシステムの信頼性の低さについての多くの原因は店舗オペレーションの精度の低さにあると思われる。

  <店舗と本社の役割分担は妥当か>
 また、現在運用されているPOSシステムの基本的なシステム思想は店舗中心のマーチャンダイジングを支援するものとなっていると思われるが、実際には各店舗において売れ筋、死に筋などを分析して発注計画を立てるような体制にはなっていない。
 現在のPOSシステムでは店舗側においてもPOSデータがデータベース化されており、店舗ごとの商品化計画が策定できるようになっているが、現状、店舗側で商品化計画が策定されるような体制にはなっておらず、むしろ、本部側にマーチャンダイザーを置いて集中的に商品化計画を策定する形態を志向しているように見受けられる。

 POSシステムは企業における商品化計画の基本方針の在り方によって、要求されるシステム機能が異なってくる。
 今回の場合、導入されているPOSシステムの基本コンセプトが現状の商品化計画の姿と一致していないことがPOSシステムの信頼性を低くしている大きな原因であると思われる。
 店舗中心のマーチャンダイジングを実現するのであればもちろんのこと、本社中心のマーチャンダイジングを行う場合でも、店舗業務、特にPOSオペレーションの信頼性を高めることが不可欠である。

 以上のような状況から考えて、店長やエリアマネージャー、マーチャンダイザー、バイヤーなどからの詳細ヒアリングあるいはドキュメント調査を行って、現状の業務精度の状態について把握し、運用マニュアルの整備、店長教育の見直しなどの対応策を検討することをを提言する。

 そして、根本的な問題は、現行のPOSシステムが店舗中心の分散志向であるにもかかわらず、実際には店舗側にそのような業務執行体制がとれておらず、会社としてはむしろ本社中心の集中志向にある点にあると思わる。
 将来的には、経営戦略にフィットしたPOSシステムの再構築を検討していく必要があり、そのためには自社の強みや弱み、市場におけるポジションなどを十分に考慮した経営戦略を確定していくことが先決であろう。  
 


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