情報化相談室

ISO9000認証取得に向けての情報化ポイント


 我が社はバルブ生産を行う製造業だが、取引先からの要請で品質管理の国際基準ISO9000の取得に向けて準備することになった。
 ISO9000では文書管理や工程管理のしくみを確立するよう求めているが、間接事務が煩雑・増大化することを心配している。
 ISO9000取得に向けた社内業務の改善についての基本的な考え方、及びパッケージソフトの活用や情報システムの構築など情報化のポイントについてご教授願いたい。


 品質管理の国際基準ISO9000の取得は製造業を中心に、建設業、サービス業など幅広く行われるようになってきた。
 特に製造業や建設業では今後、顧客(公共工事では官公庁)から出される発注条件に盛り込まれることが多くなると予測されるため、取得件数が増加してきているようである。

 ISO9000の実際の取得はISO9001か、ISO9001のうち設計に関する要求事項をはずしたISO9002、認証例は少ないが検査部分に関する要求事項のみ求められるISO9002のいずれかになる。
 認証例ではISO9002が多いようである。

 さて、ISO9000ではISO9001で20の要求事項を定義しているが、業種ごとに具体的な品質管理のあるべき姿を述べてはいない。
 ISO9000で述べているのは企業が提供する製品やサービスの品質を維持するために不可欠である品質管理システムの構築の必要性と、構築すべき品質管理システムに関する指針だけである。
 したがって、個々の企業においてあるべき品質管理システムの姿は企業が独自に考えなければならないのであり、認定審査においても審査員はISO9000の指針(要求事項)に照らし合わせて被審査企業が構築した品質管理システムの有効性を評価するのである。
 ISO9000の認証審査で不適合となる事例の多くは、他社の事例をまねして構築した品質管理システムが実際には機能していなかったというケースが多いようである。

 一つ目のご質問である「ISO9000取得に向けた社内業務の改善についての基本的な考え方」に対する回答をしておく。
 ISO9000取得だけを目的として他社の事例などを表面上だけまねしても決して成功しない。

 ISO9000が求めている品質管理システムの姿は、自社において確実に運営可能であり、社内全体に徹底できるものでなければならない。

 まずはじめに行うべきことは、自社における品質管理の現状調査であり、自社の品質管理の体制を改善する上でISO9000の要求事項をガイドラインとして活用することによって、結果として実際に運用が可能なISO9000の要求事項を満たした有効な品質管理システムが構築される。

 ISO9000の認証審査では決して不可能な要求事項まで求められることはない。
 中小企業にも認証を受けた企業は多く存在する。
 肝心なことは自社製品やサービスの品質管理のために最善を尽くしているか、である。

 品質マニュアルの出来がすばらしくても実際には何ら守られていないのであれば、品質マニュアルの内容は最小限であってもその内容が確実に守られている方がISO9000の考え方に適合することを理解しておくすべきである。

 次に、二つ目のご質問である「ISO9000取得に向けたパッケージソフトの活用や情報システムの構築など情報化のポイント」に対する回答をする。
 ISO9000の要求事項の中で情報化との関連が特に大きいと思われる部分は文書・記録管理についての要求事項と、工程管理に関する要求事項の二つである。
 その他のも製品や材料などの識別管理や、設計管理など情報化の必要性がある要求事項もあるのだが、特に文書・記録管理と工程管理については手作業で対応するには手間がかかりすぎるという点からISO9000に関する情報化の最重要テーマとなると思われる。

 一例をあげると、ISO9000では手順書などの文書は正式で最新のものが配布されているにえんぴつなどで修正がされていたりすると命令伝達に大いに問題ありと判定されてしまう。
 文書・記録管理についてはロータスノーツなどのグループウェア製品を使うことによって、最新の文書を全社で共有することが実現できる。

 ISO9000で要求されている文書や記録をテンプレート集化したようなISO9000支援パッケージソフトも製品化されているので検討してもよいだろう。
 ただし、ISO9000が求める文書や記録の具体的な内容は製品やサービスの種類ごと、企業の方針、組織構成ごとに変わるべきものであり、ISO9000支援パッケージソフトを導入すれば終わりというものではないことは忘れないで欲しい。
 ISO9000支援パッケージソフトで提供される文書や記録の雛形を必ずしも全て必要なわけではなく、その中から自社にとって不可欠なものを選別することも必要となるだろう。

 参考に次の画面はNECのISOLUTIONである。

 

 工程管理についても手作業でどの生産ロットがどこまで進捗しているのかを追跡管理するのは大変である。
 工程管理についてもロータスノーツなどのグループウェア製品を利用して実現している企業も多い。
 マイクロソフト社のプロジェクト管理ツールであるMSProjectを使えば、進捗管理だけでなく、工程計画の策定、変更支援(例>工程間の関連性を定義しておくと、前工程の期間を延ばすと後工程の開始も遅れる。
 必要資源、たとえば担当者を割り当てておくと、同じ担当者を必要とする工程は並行化できない。)、作業時間や経費の集計などの機能も提供している。もちろん、パソコンLANでネットワーク化された環境であれば工程管理情報を共有できることは言うまでもない。

 以下はマイクロソフト社のプロジェクト管理ツールであるMSProjectの画面例である。

 


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