情報化相談室
インターネットEDIで伝票処理が不要に
−BtoBのエレクトロニックコマースに着目せよ−
Q
我が社はバルブなど工業製品の部品製造を行う町工場ですが、親会社からの製造注文伝票の受入れや請求書作成を手作業にて行っており、事務作業に時間がかかっている上に受注状況などの業務実績も把握できていないのが実状です。
そこで今年購入したパソコン(1台)でマイクロソフト社のデータベースソフトAccessを使って受注登録と請求書作成の業務をコンピュータ化したいと考えているのですが、請求書は専用伝票を親会社から買い取らされており、この伝票にうまく印刷できるかが心配です。
また、現在工場長が属人的に行っている生産計画書の策定や進捗管理もパソコンを使ってできないかと考えております。
パソコンを使って当社の業務をどこまで改善可能かご教授願いたい。
A
まずパソコン1台で社内業務のコンピュータ化が可能かどうかについて業務量から考えてみる必要がある。
現在、受注登録と請求書作成の業務(財務会計業務は税理士事務所に委託)は1名の事務員によって行われており、集計・転記作業に多くの時間を割いていることを考えれば、パソコンへのデータ入力、データ処理時間は問題とならないだろう。
また、データベースソフトAccessは1、2万件程度までの小規模なデータデース構築であれば処理性能に問題はない。
しかし、将来、生産計画書の策定を実現する際には部品展開が必要となるため、部品展開の数、階層の深さによってはCPUあるいはメモリ増強の必要性が生じるかもしれない。
次に、データベースソフトAccessによるシステム構築の実現性であるが、当初考えている受注登録と請求書作成の業務のみの開発であれば非常に容易に可能である。
受注伝票を基にしたデータ入力画面の作成や、取引先マスタ・単価マスタ等を基にした請求書レポートの作成はかなりの部分をウイザードと呼ばれる自動プログラミングの機能を使って開発可能である。
しかし、システム構築においては将来構築を検討している生産計画や進捗管理、あるいは在庫管理など社内業務全体を見通したシステム設計を行うことが重要である。
データベースソフトAccessによるシステム構築の事例において指摘されているもっとも多い問題点は構築後における機能拡張の困難さである。
絵画のプロがコンテで下書きをしてから筆をとるようにシステム構築においても設計作業の善し悪しが後の出来栄えを決める。
まずはじめにやるべきことは社長の考える社内業務のあるべき姿、目標について明確にすることである。
次に親会社から買い取らされている請求書の専用伝票であるが、市販の伝票類と同じく単票形式の請求書が糊付け固定され納品書及び請求控えがカーボンコピーでセットとなっているおり、使用時に1セットづつ引きちぎっていかねばならない。
パソコンのプリンタでこの請求書に請求データを印刷しようとすれば、あらかじめ1枚づつばらしておいたものを1セットずつ用紙トレイにセットしていく必要があり、非常に非効率な作業となる。
請求書作成の業務をパソコンによって自動化していくためには、少なくとも現行の専用伝票をプリンタ向けの連続帳票にする必要がある。
現行の専用伝票の形式がデータベースソフトAccessから印刷するのに適したフィールド配置となっていない可能性も高いため、どちらにしても親会社への相談が不可欠であろう。
ここで、請求書の専用伝票について何らかの変更を親会社に依頼するのであればぜひ検討してほしいことがある。
それは注文書、請求書のデータやり取りの可能性である。
注文書、請求書の情報は親会社でもコンピュータによる自動処理化を望んでいるはずであり、またはすでにコンピュータ化を実現している可能性が高い。
それならば、注文書は注文データのままで請求書は請求データのままでやりとりすればお互いにデータ入力もレポート印刷も不要になる。
業務データを印刷せずに直接データのままで送信する方法をEDI(電子データ取引)といい、特に最近インターネットを使った電子データ取引をインターネットEDIと呼んでいる。
インターネットEDIはパソコンがあってプロバイダと契約してインターネットができる環境を作れば中小企業でも個人事業者でも可能である。
簡易な方法であれば電子メールやファイル転送ソフトと暗号化ソフトを組み合わせれば実現可能であり、本格的な方法としては認証(自分や相手が偽者でないか保証するしくみ。ネットスケープ社のSSLなどがある。)や到達確認が可能な専用のインターネットEDIソフトもある。
PFU社の「NetInterchange」はサーバ版が40万円、クライアント版が9万8千円であり、本格的なインターネットEDIでも非常に安価に導入が可能である。
また、VANのようなインターネットEDIサービスもNECなどが提供している。
次の画面はPFU社の「NetInterchange」である。「NetInterchange」では既存のVANやFAXとのデータのやり取りもサポートしている。


インターネットEDIの発展した形のものとしてエレクトロニックコマース(電子商取引)がある。
エレクトロニックコマースにはいわゆる電子店舗と呼ばれるBtoC(ビジネスツーコンシューマー)とインターネットEDIの範囲を拡大したBtoB(ビジネスツービジネス)とがある。
華やかなホームページに代表されるBtoCよりも実はBtoBのエレクトロニックコマースの方が企業にとって魅力がある。
BtoBのエレクトロニックコマースではインターネットEDIの取り扱っていた一企業対一企業における注文、請求などの商取引だけでなく、物流会社への手配など関連企業すべてに対する商取引を自動化する。
そして、電子マネーやSET(ネットワーク上でのクレジット決済)などの次世代決済方法によって入出金まで完結させるのであり、今後の動向が注目されている。
BtoBのエレクトロニックコマースは商流EDIと物流EDIと金流EDIの三つを一まとめにした経済社会そのものなのである。
最後に、現在工場長が属人的に行っている生産計画書の策定や進捗管理を情報化するためにはまず、工場長が持っている部品展開のためのノウハウなどについて社内資産として見直す必要があると思われる。
基本情報としてマスタ化すべき業務文書の種類と中身について整理していくことが地道な努力ではあるが全体的な業務見直しのためにもっとも有効な作業であることを最後に提言しておく。
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