情報化相談室
2000年問題にどのように対処すべきか
Q
我が社では繊維関係の卸売業を営んでおりますが、現在、利用しているオフコンは10年ほど前に導入したものであり、最近問題となっている2000年問題にも対応できていません。
オフコン業者からはオフコンを新しくするシステム移行の提案を、パソコン業者からはパソコンLANによるシステム再構築の提案を受けているのですが、オフコン業者はパソコンの信頼性の低さとオフコンの安定性をアピールし、パソコン業者はパソコンの価格性能の有利さをアピールしており、どちらが正しいのか判断しかねているところです。
2000年問題への対応に対する基本的な考え方と、オフコン業者とパソコン業者のどちらの言い分が正しいのかご教授願いたい。
A
2000年問題への対応策を考える前に、まず、2000年問題について整理しておく必要がある。
2000年問題とは2000年になるとコンピュータ中の日付計算が正しく行われなくなり、期間内の請求金額や売上金額などの計算間違いが起こる可能性について指している。
なぜこのようなことが起こるのかというと、昔のコンピュータでは現在のコンピュータと比べて極めて非力であり、管理させる情報を少なくしてできるだけ負担をかけないようにと、日付を西暦の下2桁のみで管理していたからである。
中小企業にとって、2000年問題の持つ危険性は一般的に理解されている以上に、以下の五つの点においてより重大である。
一つ目は、2000年問題の発生は2000年を待たずに起こる可能性が高い点である。
手形などの支払サイトが長い債権債務を取り扱うことが多い企業では、実際には1999年までに対応しておく必要があるだろう。
二つ目は、コンピュータの入れ替えや業務システムの改造・新開発に半年から1年程度の期間が必要になることである。
データ移行や導入後のテスト運用、操作教育などの必要性を考えれば1998年の春頃がスムーズな対応のためのリミットと考えられる。
三つ目は、情報処理技術者の不足である。2000年問題に着手している企業はまだ一握りである。
すでに現在においても品質の高い業者や技術者は不足状況を起こしており、1999年、2000年に近くなればなるほど、その傾向は高くなるであろう。
幸い、(後で詳しく述べる)良質の業務パッケージが登場してきていることが唯一の光明である。
しかし、業務パッケージを利用する場合においても適用可能性の検討、導入準備などを考えればあまり猶予はない。
四つ目は、2000年問題に対応する業者側の質の低さである。
2000年問題は本質的にはコンピュータ内の欠陥修正であり、もし始めから日付を4桁で持っているシステムとなっていえば起きない問題である。
事実、筆者が10年以上前に開発したシステムでは全て日付は4桁で持っていた。
実は2000年問題の持つ根本的な問題は情報処理技術者の質の低さにあるといってよい。
優秀な建築業者が建てた家屋が長年たってもびくともしないのと同じである。
2000年問題の持つ根本的な問題が情報処理技術者の質の低さにあるということは、2000年問題の解決にまた質の低い業者にさせれば結局また問題が起きることが予想される。
一番恐いのはこの問題なのだ。
五つめは、2000年問題が、より大きな企業課題であるビッグバンとクロスオーバーしていることである。
企業にとっては2000問題よりもビッグバン時代、国際標準時代にいかに適用できるかが課題のはずだ。
業務において信頼性、安全性、効率性に加えてスピードと接続性が求められるのがビッグバン時代である。
ISO9000など標準化が実現できていない企業は商談にも応じてもらえない時代も2000年頃から始まる。
電子マネーを中心としたエレクトロニックコマース(インターネット上の商取引)の時代も2000年頃に始まるだろう。
質の低い業者を使えば結局、また作り替えなくてはならない羽目にあうかもしれないのだ。
以上は2000年問題に対して中小企業が持っておかねばならない基本的な考え方といってよい。
大手企業においても以上の事柄について検討されていることは同じであるが、中小企業と比較して決定的に違うのは社内における対応体制である。
大手企業においては情報システム部門が、あるいは情報システム部門がない企業でも管理部などのスタッフ部門が集中的に対応策について検討している。
これに対して、一般的に中小企業においては会社全般の業務について知っているのは社長だけということが多い。
経理部門が業務スタッフ機能を果たしている企業はまだましであるが、情報化に強いスタッフを持っている企業はほとんどないだろう。
このような状況を考えればコンサルタントなどの外部資源を活用すべきなのは大手企業ではなく、むしろ中小企業にこそ必要性があると思われる。
ただし、注意してほしいのは情報化に関するコンサルタントは少ないので、本当にスタッフ機能を有しているかどうか確認してほしい。
システムアナリストや中小企業診断士(情報部門)などの資格は専門性の一つの証明である。
まずは大阪中小企業情報センターの情報化推進アドバイザー制度の活用を検討してみて欲しい。
次に今回のもう一つの質問である、オフコン業者とパソコン業者のどちらの言い分が正しいのかについて述べておこう。
オフコン業者からはオフコンを新しくするシステム移行の提案を、パソコン業者からはパソコンLANによるシステム再構築の提案を行っており、オフコン業者はパソコンの信頼性の低さとオフコンの安定性をアピールし、パソコン業者はパソコンの価格性能の有利さをアピールしている。
オフコンを新しくするシステム移行では、現行のオフコン上のプログラム資産をどれだけ手を加えずに移行できるかが鍵となる。
その移行コストが安価でなければ採用するメリットはない。
逆にオフコンを導入することによって、ISO9000やエレクトロニックコマースなど新しい情報化課題への対応が遅れるようであればデメリットが大きい。
業者によっては情報活用などでパソコンを併用する提案をすることが多いが、通常、オフコンまわりのハードウェアが高価になるため、パソコンサーバのハードウェア性能やデータベースソフトなどが縮小・削減されて、実際にはパソコンサーバとしては活用できないことも多い。
オフコン業者の指摘するパソコンの信頼性の低さとオフコンの安定性については多くのパソコン業者の実態からみて残念ながら事実に近いといわざるをえない。
事実、個人向けに市販されているパソコンの故障率は高い。
しかし、実はパソコンでもオフコンを代替して基幹業務システムを担うための機種としては従来のオフコンでは真似できないほどの信頼性、安全性を有しているのだ。
たとえば、ハードディスクのRAID5(データを5台のハードディスクに分割記録し、5台のうちどの1台が故障しても継続稼動可能とするしくみ)、クラスタリング(サーバを2台構成とし、通常は2台が並行稼動することによって処理速度が増し、1台が故障しても他方の1台で継続稼動が可能とするしくみ)などのしくみや、業務データを自動的にバックアップしておき、障害時に自動復旧するデータベースソフトの機能などは基幹業務システム用のパソコンサーバでは常識的に検討されるべきものなのだ。
しかし、残念ながら今回、問題となっているパソコン業者にはそのような知識がなかったと思われる。
パソコンが悪いのではなく、業者が悪かったのである。
オフコン業者でもそうだが、特にパソコン業者に対しては情報システムの構築能力、プロとしての能力について注意しなければならない。
やはり中小企業では業者の選定について外部コンサルタントの手を借りることが必要だろう。
業者の情報システムの構築能力については通産省が大規模システム開発能力としてSI企業認定制度(システムインテグレータ。一定の上級情報処理技術者数が条件となっている。)を設けている。
今後はソフトウェア産業においてもISO9000取得が品質保証の指標になってくるだろう。
また、特にパソコンシステムではマイクロソフト社のWindowsNTやSQLServerなどのサーバ用ソフトを利用することが多いことから、マイクロソフト社が自社製品に関する知識と活用技術を有する企業にだけ与えているソリューションプロバイダー資格を持っているかどうかも重要な指標となるだろう。
最後に、1998年のはじめからパソコン用の業務パッケージが続々と登場してくる予定である。
マイクロソフト社では自社製品との組み合わせで品質の高いものをバックオフィス認定として保証している。
良質な業務パッケージを導入して業務改善を行いながら2000年問題に対応することが中小企業にとって、最も負荷も少なく得られる効果も大きいのではないだろうか。
良質な業務パッケージを導入すれば2000年対応とビッグバンに向けて情報システムの強化も同時に手に入れることが可能である。
しかし、そのためには自社の業務を見直し、業務パッケージに合わせるべきところは合わせ、合わせられないところはカスタマイズを依頼するといった準備及び移行作業が必須となる。
中小企業における情報化の失敗の多くはこうした人任せにできない部分まで開発業者を信頼して丸投げしてしまっていることにある。
調査・企画部門についてぜひ外部コンサルタントを活用して強化していただきたい。
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