アクアマリンふくしま

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※入館.



福島県はいわき市ちょい下の海岸沿いにあるこの水族館、
ここもまた地理的に津波の被害を免れなかったとのことで、はたして観賞可能レベルまで復旧しているのか、
訪問前は少なからず不安に思っていたのだが、その堂々たる外観を見た瞬間、そんな懸念は一瞬にして
吹き飛んでしまった。

実際これまで見てきた中でも最上級クラスのインパクト、
この光景を眼前にしてワクテカしない水族館マニアはいないだろう。


※戦慄の太古.

そして入館直後、早速セカンド・インパクトがこの身を突き抜けた。
最初の順路である「海・生命の進化」の入り口にて天井から吊り下げられていたのは、おそらくデボン紀最大の
甲冑魚「ディニクティス」。原寸が10メートルだからその半分程のサイズではあるが、それでも相当にデカい。
小さな子供なら普通に泣くレベルの怖さであり、これを見た時点でいやがおうにもアマゾン大魚レベルの畏怖と
戦慄を期待せざるをえなくなった。



まずはジャブからいってみよう。右のは「スポッテッドラットフイッシュ」。
珍しい種類のギンザメの仲間で、「斑点のあるネズミのような魚」との名前の由来は、
体中にポツポツとある白い模様とネズミのような前歯から付けられたとのこと。



さて、それではちょいレベル引き上げてキモい系を2つほど。
最も原始的な魚の関連種として展示されていた左のは「ヌタウナギ」。
外部刺激を受けると体表から白色糸状の粘液を出すとのことで、横のカップルがそれをネタにひとしきり
盛り上がっているのを見て、すかさずレイプ目になる。

で、右のは脊椎動物のもっとも古い先祖とされる「ナメクジウオ」。
こんなクニャクニャの軟体野郎が我々人間の雛形ということを知り、おもわず半目になる。
我々が考えてる以上に我々のルーツはキモすぎる。



そろそろヘヴィ級を投入してみる。左のテング野郎は「ヘラチョウザメ」、
淡水系においてはUMA(未確認生物)と誤認されることがダントツで多いレア種。
そのアナルバイブ然とした鼻先の用途については何も分かっていないらしい。

そして右はピラルクと並ぶ世界最大の淡水魚であり、
世界三大珍味の一つ「キャビア」製造機としての重要性、
またシーラカンス時代の既存種ならびに生きた化石としての希少性をも担う「シロチョウザメ」。
卵のみならずその身までもが美味とのことで、乱獲の憂き目にあい個体数が激減、養殖モノも流通してはいるが
野生種に比べてその価値は著しく低いとのこと。



さて、そろそろ本命を叩きこんでみる。次頁左は「スポッテッドガー」、
ジュラ紀に全盛を誇った原始魚の一種であり、アマゾン水槽でもそのワニワニしさが人気の著名魚。

その右は細長いフォルムとそれに付随する長い吻が特徴の「ロングノーズガー」。
古代魚としては熱帯魚マニアにトップクラスの人気を誇るが、空気呼吸するため水槽の上まで水を
入れてしまうと溺れ死ぬという面倒くさい奴。

両魚とにも億年単位という、人間風情とはケタが違う幾世を重ねてきただけあって、驚嘆よりも畏怖に近い
何かを感じざるをえない。



太古コーナーのトリを飾るのはかの有名な「シーラカンス」の剥製。
「生きた化石」と言われる魚は数あれど、絶滅認定から現生種の存在が確認されたのはこれと「クニマス」
だけと書けば、その飛び抜けた希少性がお分かりいただけると思う。
端の方に水中の岩場を模したコーナーがあったので、設置されていた懐中電灯でヒョイと奥を照らしてみた。



と、その奥にはシーラカンスの模型が…
いや子供だましと思われるかもしれないが、その造りと見せ方が巧いこともあり、これは地味に怖かった。
アマゾン・深海・太古系の観賞においては最後の最後まで気を抜いてはいけない。


※エレベータを昇ればそこは….



野外だった。順路に従って4F直通のエレベーターを昇った先、そこはまさかの野外。
福島県の水辺で暮らす生き物を紹介する「ふくしまの川と沿岸」というコーナーらしいが、
このいきなりの野外演出には完全に意表を突かれた。

さて、ここには 「川」「池」「湖沼」など様々な環境をテーマにした水槽があったが、
その中でも特に目を惹かれた生物達がいたのは「砂地の海岸」水槽。ここから4点ほど紹介してみる。



左は「タカノハダイ」、名前の由来である「鷹の羽のような」模様が表す綺麗な外観とは裏腹に、
小便の臭いにも例えられる身の磯臭さと何にでも食いつく悪食っぷりはいかんともし難いものがあるらしく、
釣り人には相当ヘイトされてる魚らしい。一応「タイ」と言う事で、心無い魚屋が叩き売ることもあるらしいが、
その名前につられて購入してしまった人にはただただ同情を禁じえない。

さて、こちらの右は海底を「方々と」這いずり回ることに加え、浮袋を利用して「ボウボウ」と鳴くことから
命名されたという「ホウボウ」。「GAO」にいた「カナガシラ」の同科本家であり、その嘘みたいに綺麗な
青緑色の胸ビレが特徴。刺身が美味しい白身魚の代表格なので、もし機会があったら食されてみては。



続けてこちらの左、小さなウツボみたいのは「タケギンポ」。
水槽の紹介プレートに名前はあれど、海藻の陰に隠れて全然見つからなかったので、
半ば意地になって水槽前で粘ること10分、ようやくレンズに撮らえた時の達成感はなかなかのものだった。
見たり、当てたり、探したりと、その気になれば千差万別の楽しみ方が可能な水族館、これもまた一つの
エンジョイの仕方だと思う。

で、その右側は突くと粘りのある紫色の液体を出すことで有名な「アメフラシ」。
大きさ的には普通のカタツムリ・サイズなイメージが強かったので、30センチにも達しようかという
そのデカさに少々ビビったり。


※拝啓「少年アシベ」より.



野外を抜けて再び館内へ。その狭間にあったのがこの「北の海の海獣」コーナー。
そこで一番目立っていたのがこの「ゴマフアザラシ」の赤ちゃん。
平成23年4月生まれなのでまだ生後半年か。水槽内をところ狭しと動き回っていたかと思えば、
こちらの眼前で水中ホバリングしだしたりと、その所作がいちいちせわしないところがまた愛くるしい。
一時期一世を風靡したアゴヒゲアザラシの「タマちゃん」も悪くなかったが、その丸々っとした体型的にも、
ミーはやっぱり「ゴマちゃん」派である。



他にもこんなのがいた、「タイヘイヨウセイウチ」。
生涯を通じて伸び続ける牙に、ホッキョクグマの一撃すら跳ね返すと言われる皮下脂肪、
単に転がっただけでも必殺となりうる1トン近い体重と、北極圏最強を謳われるだけあって、
プール内を泳ぐその様は圧倒的迫力だった。

で、右の小っちゃいペンギンみたいなのは「ウミガラス」。
ただでさえ大好きなペンギンがSD化?しかもそれっぽく直立歩行ときたもんで、本家より1割増しの
愛くるしさを前に、しばし水槽前で悶絶タイムと相成った。


※進化のインデヴィジュアリスト.

陸地から離れた孤島であったがゆえ独自の発展を遂げた、いわば生物進化における個人主義を特化
させたお魚さんを2点ほど、「ガラパゴスの海」コーナーより紹介。



頭部模様を王冠に例えて名付けられた左の極彩色豊かなのは「キングエンゼルフィッシュ」。
アクアリスト間では「クイーンエンゼル」と対で評価され、一度は飼育したい魚としてかなりの人気を
誇っているとのことなので、ざっと相場を調べてみたら成魚サイズで¥2万強だった。

で、右の極端な変則フォルムは「ツノダシ」。
これまたアクアリストに人気の高い魚だが、上述のキングエンゼルと比べて飼育が段違いに難しく、
一部愛好家達の間では上級への登竜門扱いされている魚らしい。オーディオ道と並んで、金銭のみならず
知識・技術までをも必要とされるアクアリウム、その道は非常に厳しく実に険しい。


※前略「マングローブ」の隙間より.



そして舞台は再び野外へ。位置的には依然として建物内の4Fにいる筈なのに、透明構造の屋根から
降り注ぐ自然光がまったくそれを感じさせない。よくよく考えると技術的にかなり凄いことだと思う。

では、この「熱帯アジアの水辺」コーナーより、目に付いたものを3点ほど。まず右から「ミドリフグ」、
東南アジアの汽水域に生息する体長3〜10センチ程のフグ。小さいわりに見栄えが利く上、胸ビレを懸命に
パタつかせる動作が可愛いとあって、アクア初心者が簡単そうだからと気軽に手を出してはあっさりダイさせる
典型魚らしい。猫とか犬に比べて、熱帯魚飼育はあまりにハードルが高すぎる。



まさか先ほどの「ツノダシ」を超える奇抜フォルムがいようとは。
というわけでひたすら凝視する羽目となった左のトンデモ体型は「ナンヨウツバメウオ」。
枯れ葉に擬態しているこれは幼魚で、成魚はもっと色鮮やかになるらしい。

でもって上述の「タケギンポ」同様、紹介プレートに名前があったものの、
存在がなかなか確認できなかった右の奴が「ゴマホタテウミヘビ」。
昼間は水底の砂地に頭だけ出して寝ているらしいので、今回見れたのは幸運だったかも。
ちなみにこの手のニョロ系は災害に強いらしく、例の地震でかなりの被害を受けた水槽内に
あってこれはしっかり生き残っていたとのこと。種族に関係なく柔軟性は大事ということか。


※事はすべてエレガントに運べ.

三度館内へと戻ったところで、海の宝石箱にも例えられる「サンゴ礁の海」コーナーと遭遇。
ただでさえ雅な美しさを誇る魚群の中において、特に目立っていた魚達を何点か挙げてみる。



左は「ヤシャベラ」。石垣島や奄美大島などの潜水スポットにてよく見られるカラフルなベラ。
愛好家も多いが、その傾きっぷりが度を越えている上、年をとると目が突き出てパセドー化することもあって、
一部ダイバーにはキモ呼ばわりされているとか。過ぎたるは及ばざるがごとし、何事もやりすぎはよくない。

続けていこう、信号標識的に注意色な右の奴は「ギチベラ」。
口腔内に収納してある長い吻が特徴で、これ捕食時にびっくりするくらい伸びるらしい。
気になる方は「ギチベラ 捕食形態」で検索してみよう。



こちらの左は「フタスジタマガシラ」。
頭部を斜めに走る2本ラインが際立って美しい魚なのだが、その個体数が多いこともあってか
ダイバー達の間では駄魚扱いだとか。
警戒心が薄く写真が非常に撮りやすいことを買って、せめてもう少し評価してあげてほしい。

で、右側のミニなシャチもどきは「アジアコショウダイ」。
こちらはあまり姿を現さないレア魚な上に食用としても珍重されるので、ダイバー視点から見た観賞魚としての
地位はかなり高いそうだが、成長とともに最大の特徴たる白色斑は消えてしまうので、見るなら子供のうちとのこと。
アウトドア全開のリア充派なダイバーさん達も、その対象が魚類か人間かの違いを除けば、やっていることは
我々ロリオタとそう変わらないと思う。


※境界線上のエース.



ここにきてこの水族館最大の展示物、水量2050トンを誇る「潮目トンネル」がようやくその姿を現した。
三角形状のトンネルを挟んで、左側の親潮・右側の黒潮がぶつかる境界線上の潮目を模した生態系展示がその売りとのこと。



この水槽も例の地震により壊滅的被害を受け、直後は物理的ダメージのみならず、
展示生物の9割を失うまでに至ったとか。
当初は排水管の故障で水を抜くことすら出来なかったこの水槽、設備を補修し、ドロ水を抜き、
残骸を取り除き、防塵マスクが必要なほど臭いヘドロを掻き出し…
と、大変な労苦を経て、ようやく今の姿にまで戻ったのとこと。

現水槽内における最大種たる「ヒト」を観賞しつつ、その丁寧な清掃作業を眺めつつ、
「不屈」という言葉の意味を考える。まだ人類に絶望するのは早いかもしれない。



展示魚の損失数があまりに膨大すぎたせいか、
その水槽スケールに比べて中にいた魚の種類は流石に寂しかったが、
それでも上部から吊り下げられたマボヤの上で休む「シマゾイ」や、
トンネル脇の土手にて憩う「ヌマガレイ」「マツカワガレイ」など、
大水槽ならではの面白いシーンを観察することが出来た。人も魚も今はただ、ゆっくり休むがいい。


北へ。〜White Illumination〜.

「潮目トンネル」の少し手前に設置されていたのは流氷の海「オホーツク海」に棲む生き物の展示水槽。
ここでは相当にレアな魚達の姿を拝むことが出来た。



まず左の巨大オタマジャクシから紹介してみよう、「コンニャクウオ」。
レア中のレア魚なだけあって、ミー自身、実物にお目にかかるのはこれが初。
水深7000mを超える限界深度に棲む魚なだけに、名前的にも見た目的にもフニャフニャ感全開だった。

その右は「アバチャン」。
どういう由来でこの名前になったんだと首を捻る。最大の特徴は口元のヒゲと腹についたデカい吸盤。
これまた深海に棲むレアものだが、北海道沿岸の浅場に出没することもあり、ダイバー内じゃ見れたら
ガッツポーズ級の人気魚なのだとか。



更にレアものが続く、左は「エゾイバラガニ」。
カニと名付けられてはいるものの、足の数を見れば分かるとおりヤドカリの仲間。
その身は甘く、ミルクのような香りがすることから焼津辺りでは「ミルクガニ」とも呼ばれているとか。
しゃぶしゃぶが絶品らしいが、これまた深海に棲む為にほとんど流通せず、幻のカニと化しているらしい。

ここまできたらレアもの尽くしで通してみる。右は「深海を閃く火の玉」こと「サケビクニン」、
北海道は「登別マリンパーク」以来の邂逅となった。
漆黒の闇の中をユラユラと揺れ動くその見映えは最上級クラスだと思うので、
もしここへ来館の際は是が非でも観賞を。


※オラが町のヒーロ達.

「潮目トンネル」の奥にはローカライズ・テイストを醸し出す「ふくしまの海」コーナーがあった。
お馴染みのありふれた系魚類のオンパレードかと思いきや、結構レアもの揃いで驚いたり。



まず次頁左から。砂に半分埋まったくらいで隠れたつもりになっているのは「キアンコウ」、
フグに次ぐ冬の味覚の最高級魚であり、ここ福島県においては漁獲高日本一を誇るとか。
プニプニゆえ刃を寄せ付けないその身をうまく処理すべく、天井から吊り下げて斬る調理法は「美味しんぼ」
1巻2話などで有名だが、青森県の一部では雪上にてそれを行う「雪中斬り」なる伝統調理法も行われているとのこと。

で、右側は「マルアオメエソ」、目が光っているので「メヒカリ」とも呼ばれるが、
今ではこちらの方が正式名称になってしまっているとか。
水深300m以上の海底に棲む為、その生態がほとんど分からず、
地元の寿司屋などでレアネタとしてふるまわれることはあれども、生きた生体展示はこの水族館が初とのこと。
いわき市認定の「市魚」でもあり、地元の名産として目下絶賛売り出し中だとか。



さて、次は飼育が非常に困難と言われる魚類を連発でいってみよう。
まずは左から、秋の味覚の代表格たる「サンマ」。
著名中の著名魚であるわりにその飼育は難しく、生きた生体展示はやはりここが初。
水槽内養殖にて8代目まで世代継続飼育しているとのことなので、これはいわばリアル「俺の屍を越えてゆけ」
水槽といったところか。

で、右側は「タチウオ」。これまた水槽内にてその生態環境を整えることが難しいとされている魚の一つ。
サンマ同様、その身をキラキラ光らせて泳ぐ様が美しい最高レベルの観賞魚であるが故、飼育における職員さんの
苦労を労いつつ、丹念に堪能するがマナーかと。

それにしてもこの施設は「世界初」が多い。水族館界隈の「ソニー」とでもいうか、誰もやらなかったことを
率先してやるのが得意な水族館のようだ。


※究極の磯コーナー.



さて、ここにも水族館の基本とも言うべき「磯コーナー」は当然あった。
お客に対して案内係さんが直接ついて魚との接触方法を指導してくれる辺りは目新しいが、
プールそのものの規模や、中にいる魚の種類などは他館のそれとほぼ同等であり、これまで突出した
完成度を誇ってきたここ「アクアマリンふくしま」にも、流石に一つくらいは普通レベルのものがあるかと、
むしろホッとした10分後。下記コーナーと遭遇して心底驚嘆する羽目となった。



まさか館内敷地にまんまビーチ環境を再現してしまおうとは。
隣にはご丁寧にも釣った魚をその場でフライ調理してくれる「釣り堀」付き。しかもそれだけでは
飽き足らなかったのか、その向こう側には田んぼや小川などの田舎環境をも増設ときたもんで、
もはややりすぎ感まである圧倒的規模の「磯コーナー」を前に、ミーはただただ溜息を漏らすしかなかった。


※あの日から….



館内「磯コーナー」隣に小部屋があったので、休憩室かと思ってちょっと覗いてみた。
そこは例の地震における館の被害状況ならびにその復旧状況、そして今回の地震から派生した
福島原発事故が県内の生態系に与えるかもしれない影響を危惧する研究コーナーだった。

部屋中央に設置された測定器が指し示す数値は1時間あたり0.09μシーベルト。
放射線管理区域指定の基準が時間あたり0.6μなので全然大丈夫な数値といえるが、
それでも都内平均の約2倍とかなり高い数値でもある。

「アクアマリンふくしま」では今後とも福島県内を流れる河川の放射線物質量測定および生態系の調査を
長期スパンで継続して行っていくとのことで、これは素直に応援したい取り組みであり、これに対する一番の
支援方法は、あの日以降、観客数7割減となってしまったここに来館することだとミーは考える。


※なにげない工夫こそが.

ここらで「アクアマリンえっぐ」と呼ばれる子供向け別館へと赴いてみる。
…と、ここの水槽設備には実に多種多様な工夫が凝らされていた。



上記はキッズ向けのお遊戯コーナー。それを構成するブロックのあちこちに水槽が埋め込まれているのを見て、
これは面白いと中で遊んでいる幼児以上に夢中になってしまったり。



こちらはお遊戯コーナーの近くにあった別の水槽。
その下部に空いている穴は水槽下を通るトンネルになっていて、
水槽底部に設置されたドーム状の覗き窓から子供達がひょっこり顔を出せるような造りになっていた。
「こんなもの見せられてワクテカしねえヤツはいねえッ!」と、大きい子供たるミーも全力で潜りこみ、
そのあまりの狭さに腰をいわせたばかりか、中で携帯を落として死ぬほど焦る羽目に。

それにしても「携帯がない…!?」と気付いた時の焦燥感は財布同様、異常であると思う。
そしてこんなに馬鹿な携帯の落とし方をする奴もそうはいないと思う。
単独かつ孤独であるがゆえの過ち、「蠱毒の水族館」道もなかなかに厳しい。



これだけ各所に工夫をこらしてあるコーナーなんだから、
中にいる魚は流石に駄魚クラスだろと思いきや、さにあらず、だった。
この水族館、まだまだ手綱を緩めてはくれないようだ。

左はお遊戯コーナーにいた「ベールテール・エンゼルフィッシュ」。
いくら変則水槽だからって中にいる魚までわざわざ品質改良の変則種にしなくても。偶然だとは思うが、
ここまで見せられてきたこだわりの数々を見ていると、これすらも計算なのではないかと思えてくる。

で、右は下部に潜り込めるタイプの水槽にいた「アオリイカ」。
本来なら結構飼育が難しい魚類の筈なのに、プレート紹介すら省略していかにも「ありふれた魚ですよ」的に
展示しているのには驚いた。


※館内散策.



これまで紹介してきたコーナー以外で目に付いたお魚さん&アニマルさんを何点か紹介してみよう。
左はタツノオトシゴの仲間であるヨウジウオの一種、「トゲヨウジ」。
そのフォルムは「千と千尋の神隠し」に出てくるハクみたいにドラゴンちっくだった。
中国ではこれの乾燥させたものを滋養強壮薬や薬膳料理にして提供しているらしいが、
確かになかなかご利益がありそうな外見をしていると思う。

似たようなドラゴン系をもう一つ。右はタツノオトシゴ系の中じゃ最大種である「ポットベリードシーホース」。
海藻への擬態を突き詰めた結果がこの姿らしいが、たぶんどこかで間違ってんぞお前。
くだんの震災の影響で新潟県の「マリンピア日本海」に疎開、そこで出産を果たした後、
無事に帰還をはたしたとのことで、かなりの苦労魚さんでもあると思う。



こちらの果物みたいに木になっちゃってるのはベトナム出身「レッサースローロリス」、
絶滅が心配されている原始的な猿の仲間らしい。
昼間はこの体勢でずっと寝て過ごすとのことで、初見時はオブジェかと思うくらい見事にピクリともしなかった。
仕上がりすぎにも程がある。

で、その右側は「ユーラシアカワウソ」のドナウとチロル。
水槽内の隅を穿って造られた狭っこい巣穴の中にて、ゴロゴロと寝返りうちつつ気持ち良さそうに
昼寝コイてる様は、手放しで「ブラボー!おお…ブラボー!」とポルナレフ化するほどめんこく、
しばらくその覗き窓の前に釘付けとなった。
「潮目トンネル」「シーラカンス」に並ぶ、ここのマキシマム必見ポイントかと思われるので、
来場される方においては絶対的にチェキ推奨である。


※そこにある憩い、その先にある憩い.



最後に館内・敷地内のあちこちで見られた、実に様々なタイプの「憩い場」を紹介しよう。

左は館内3Fに設置されていた「出窓」スペース。
海側の景色がしっかり観賞できることに加えて採光がよくとれているので、ふとした憩いに最適。
観賞間のワンポイント癒しとして利用すると良いかと思う。

右のバルコニーもまた館内3Fに設けられていた。グリーンインテリアを観賞しつつ、
直接外気に触れることが可能な好「憩い場」かと。上記出窓と併用して積極的に使っていきたい。



こちらの左は館内中央付近に設けられていたグレード高めの休憩室。
ホテルや劇場などのそれを指す「ホワイエ」なる専門用語が用いられていた。
周囲を飾る「阿倍セキ」画伯の魚類画を眺めつつ、ソファにてゆったり憩い、簡易的なゴージャス気分に浸るが吉。

で、このホワイエの近くに設けられていたのが、郊外レベルじゃ立派な映画館として通用する程の規模を誇る
「マリンシアター」。「ザ・シーラカンス」と「アクアマリンふくしまの裏舞台」の2本を交互上映していた。
大スクリーンを漫然と眺めつつ、徐々に眠りに誘われていくもまた良しだろう。



膨大な敷地面積を誇るだけあり、野外にもしっかりと憩い場は用意されていた。
かたや人口ビーチ沿いにて砂や波と戯れる子供達を眺めつつ、あるいは小川のほとりの庵にて日差しを凌ぎつつ。
それにしても他に類を見ないほど、この水族館の憩い場は多種多様だ。



そんな様々な憩い場の中でも最たるものが、高さ34m・総ガラス張りの部屋から太平洋を含む360度眺望が
楽しめるこの「展望室」だろう。「水族館付属の」という条件付きなら、おそらく日本一の展望台かと思われる。
(ちなみに「水族館近くの展望台」という条件化でなら「東京タワー」が最強)

加えて展望室備えつけの双眼鏡は全て無料、設置されている椅子はデザイナーものと、どこまでも隙がなかった。
もはや「憩い場」自体が立派な展示物であり、そういう意味でいうならこの施設だけでも金がとれる完成度だと思う。
あまり混雑していない開館直後を狙って、この豪華な眺望を独り占めしてみてはいかがだろうか。



それでも最後に勝つのはやはり人間だった。これに勝る癒しナシかと。
ちなみにかぶっている帽子の魚種は「シーラカンス」だった。



※総合.

「もしここが貴方にとって初めての水族館であるなら、その事実は不幸であると言わざるをえない。
 今後訪れる他のそれが全てつまらなく見えてしまうだろうから…」
そういった領域の完成度にある施設であり、水族館本来の純目的たる「魚を見て楽しむ」という用途にかけてなら、
全国トップ3には確実に入る水族館かと思われる。あえて難を挙げるなら海獣ショー関連の弱さがちと気になるが、
全体的な魅力を考えれば取るに足らない欠点だろう。
家族、カップル、孫と老人、毒男に喪女と、全ての属性に関係なく楽しめる至高の水族館の一つだと思うので、
魚類・動物好きなら絶対に行くべし。

ファミリー ★★★☆☆ 震災後のせいか若干少なめ
カップル度 ★★★☆☆ 上に同じく、ゆえにチャンス、今が行き時
わびさび ★★☆☆☆ 野外にある庵などにて
学術度 ★★☆☆☆ 一部説明モニターの故障が気になる
お得感 ★★☆☆☆ 家族連れにはちと負担か?
建物装飾 ★★★★★ 比肩する施設、ほぼなし
水槽装飾 ★★★★★ 環境再現度含めて頂点クラス
総合調和 ★★★★★ 水族館の一つの完成系
憩い場所 ★★★★★ 他に類を見ないほど多種多様
磯コーナー ★★★★★ その規模に驚嘆
ペンギン度 ★★★☆☆ 本家はいないが、代わりとなるウミガラスが健闘
レア度 ★★★★★ 寒流系において最上級
総合 ★★★★★ あくまで私的観点と個人的意見から


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