もぐらんぴあ まちなか水族館

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※入館.



2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により壊滅的被害を受け、
閉館を余儀なくされた「もぐらんぴあ」。
その火を消すなとばかり尽力した関係者の熱意は、まず市民を、次いで久慈市を動かし、
そして最後にあの「さかなクン」氏までをも立ち上がらせた。

ということで2012年3月末日までの期限付きではあるが、久慈駅前の家具屋店舗を間借りして、
ここに旧「もぐらんぴあ」は「まちなか水族館」として蘇ったのである。
入り口にてお出迎えを務める「さかなクン」氏の2等身大ポップを眺めつつ、徐々にではあるが、
着実に復興はなされつつあることをほのかに感じたり。


※壁はダンボールでも心は….



すかさず中に入って周囲を伺う。ダンボールで造った壁に、外から水槽をはめ込んだ形のかなり簡易的
かつ急造的な構造ではあるが、手造り感満載の装飾はかなり良い出来であるし、そこらに散らばっている
「さかなクン」氏自身をモチーフにしたイメージ絵画も独自の雰囲気を醸しだすのに一役買っていて、
パット見な印象としてはなかなかに面白いと思った。



ただ一部の絵画は、楳図かずおタッチとでもいおうか、なんかこう、怖かった。
まあその怖さは同時に「ギョギョー!」なテイストを醸し出してもいたので、おそらく「さかなクン」氏
コンセプト的には正しいのだと思う。いやそう信じたい。

ちなみに左のは「北の猛魚」もしくは「魚の神」こと「オオカミウオ」さん。
氏いわく「ロマン溢れるカッコよさ」であり、野生のそれを見た時は「
ウギャアアアアア、感動のあまりキゼツ寸前!
アワワワワわわわわわ…一瞬目の前は真っ白!ドックンドックン、からだ全体が心臓状態!
」になったそうである。
説明が力押しかつ勢い押し以外の何者でもないが、どれだけ凄い魚かということは十分すぎるほど伝わってくるので
アリだと思う。


※「さん」を付けろよデコスケ野郎、今回はオタっぽく「氏」押し.

それでは入り口付近、「さかなクンのフィッシュハウスからやってきた!魚たち」の展示ゾーンから早速
観賞を進めてみる。



左のは「さかなクン」氏がかぶっている帽子のモチーフにもなっている「ハコフグ」。
氏は幼少時代、キレイな箱のようなその外観を見て「
ありゃありゃりゃ〜、なんだこりゃ〜」と驚いたと同時に
大好きになったそうである。断っておくがセリフ部分は全て説明文のままである。ものすごい感受性だと思う。

で、右のは「コロダイ」の幼魚。成魚になるとその紋様も著しく変わる魚なのだが、あからさまに幼魚時代の方が
きれいだと思う。やはり魚の世界も人間や「なのは」や「フェイト」と同じく、幼少期の方が輝いているということか。



さて、次頁左の潜水艦体型のは「ハリセンボン」。
著名魚の一つであり、これを見た子供や大きい子供が、その毛が逆立つところを見たいあまりガラス越しに
バンバンやることでも有名だが、客がミーの他に一組しかいないこともあり、今回はそのような悲劇を見ずに済んだ。

右のどことなくミケ猫っぽい風貌しているのは「ネコザメ」。
大人しいので水族館などでよく飼育されており、そのせいかわりとありふれたタイプのサメに見られがちだが、
実は生きた化石とも言われる、生物学上において貴重な種であり、その特徴は固い殻をもった貝やウニを噛みつぶすために
丸く発達した歯によく表れているとのこと。



で、こちらの左、とぼけた高木ブー面してるのは「サザナミフグ」。
筋肉にまで含まれる毒のせいで食用は不可とされているが、コミカルな顔と危険に鈍感な故の人懐っこさが
観賞魚として最適な為、その需要が結構あるらしい。

右側はその幼魚、氏いわく「ぽんちゃん2号」。
写真で見ると大きく見えるが、実際には体長3センチくらいの黒豆サイズといったところか。
正面から見た丸っぽさが無性に愛らしかったので、つい長時間、なめまわしねぶりつくすように見つめてしまったり。

ちなみにこのコーナーに展示されているこれらの魚は、水槽26個・生物100種以上の規模を誇る
「さかなクン」氏のプライベート水族館「フィッシュハウス」から全てやってきたそうで、
流石は「日本一の魚好き」だけのことはあると唸らされる。
加えて「水産庁政策審議会特別委員」「環境保全団体WWFジャパン顧問」「食事は3食すべて魚料理」などの氏の
肩書きを見るにつけ、断じて唐突に「ギョギョー!」と奇声を上げるだけの変人ではないということを実感させられたり。


※備えよ常に.

壊滅的ダメージを受けた旧「もぐらんぴあ」にて生き残った生物達を展示している、
「震災を生き抜いた生き物」なるコーナーを発見。早速観賞してみることに。



ただ単に「生き残った」と書くのも安易な感じなので、実際の被害状況を示す写真を載せてみた。
これだけの被害にみまわれながらなお存命というのはまさに奇跡的であると思われ。
そんな超サバイバーなタフネスを誇る皆さん達はこちら。



奇跡の答えは「カブトムシ」さんと「クサガメ」さんだった。
かたや2億年前からその形を変えていない生きた化石の本家、かたや自前のバリケードを持つ長寿の看板的存在、
加えて両者とも水陸両用仕様であるがゆえ、然るべくして生き残ったというところか。

ここから考えるに生き残るポイントはその甲羅であると見た。が、亀仙人以外で常に備えられるかそんなもの。
つまり我々一般レベルは大人しく運命のサイコロの出目に身を任せるしかないということなのだ。
せめて「人生は思わぬところで突然終わるかも知れない」ということをしっかり心に刻んでおくことで、
何気ない日常とそれに付随する毎日を精一杯生きることに務めようと思う。
そう、本当に行きたくない学校なら行かなくていい、絶対にやりたくない仕事ならやらなくていい、
明日の自分自身に責任さえ取れるなら、我々は本来もっとフリーダムであるべきなのだ。


※館内散策.

その他の「熱帯魚コーナー」「クラゲ水槽」などで、目に付いた生き物達を数点挙げてみる。



まずは極めてミニマムなのを2種類。左のは体長6センチくらいの小型ナマズの一種である「コリドラス」、
水底に沈んだ餌を食べることからアクアリウム業界では「水槽の掃除屋」として知られているらしい。
実際ひっきりなしに動いて水底を突っついていた。

で、右のは「スマトラ」、その名前の通り、インドネシアはスマトラ島に棲息するポピュラーな熱帯魚。
飼育は容易だがとにかく気性が荒いので混泳に注意とのこと。実際ひっきりなしに動いて壁際をローリング
しまくっていた。

で、ミーのような水族館マニア的には、コイツら小型魚はただでさえ的が小さいところに加えてやたらと
動きまわるがゆえ、いつも撮影が死ぬほど大変かつ困難である、という愚痴を付け加えておく。



続けて「クラゲ水槽」より2種類を。左は「ミズクラゲ」、一般的固体でなく「パラオ産」という部分がキモで、
日本で展示しているのは「加茂水族館」とそれを譲り受けたこの「まちなか水族館」だけのため、たいそう貴重な
クラゲらしい。その違いはと問われれば、本来のものより体が薄く透明感があるとのことで、実際の写真映えも
旧「もぐらんぴあ」のものよりはるかに美しく仕上がったと思われる。パラオ産、なかなかに侮れない。

で、右側のは「タコクラゲ」。クラゲ展示としてはわりとありふれた部類に入るが、これだけクリアに8本の足…
じゃない、口腕が撮れたのは初めてのことなので少々嬉しい。体内に褐虫藻を共生させているため、捕食以外にも、
この藻が光合成によって作り出す糖類などで栄養補給可能なエコ・クラゲとして知られているとか。

ちなみにこのクラゲコーナー、丸窓方式のシンプルなレイアウトではあるが、中に入っている個体が
どれも大きくてイキがよく、また採光がよくとれているので、非常に観賞しやすかった。近辺にお住まいの方なら、
これだけを目当てに訪れても損はないかと思われ。


※そこにある憩い.



この水族館、元は家具屋の店舗を改装して作られているのでスペース的にはあまり余裕がないのだが、
そのような条件化においても休憩コーナーはしっかり確保されていた。
少々煩雑としてはいるものの、机と椅子、無邪気な子供とそれを見守る母、水族館らしく魚類関連の絵本を
ふんだんに詰め込んだ本棚と、その上に置かれたラジカセからは小粋なラジオ番組ときたら、これはもう完璧な
憩い空間であると言わざるをえない。とりあえず魚類系の絵本の中に混じっていた「うみのおっちゃんになったぼく」
という本が気になって仕方なかった。


※これもまた一つの可能性.



展示コーナー奥の空きスペースは室内広場になっており、お祭りにおける屋台を模した形でそれぞれ装いの違う
「磯コーナー」が「出店」していた。
ふと隅の方を見やればそこにはさりげなく休憩スペースが。しかも古来からの伝統にのっとった和室である。
「ベビーコーナー」という名目ではあったが、他に客は見当たらなかったので、しばし利用させてもらった。
うん、やっぱり日本人には畳である。

さて、屋台の方を見てみよう。まずは「ドクターフイッシュですべすべ」というお店から覗いてみることに。
利用時に100円を徴収されたが、この水族館自体が「無料」であることを考えれば、むしろ安すぎると思う。



で、こちらが通称「ドクターフィッシュ」、正式名はコイ科の「ガラ・ルファ」。
人間の古くなった角質を食べる習性がある上、実際に皮膚病などへの治療効果があるとされ、
TVなどで取り上げられて一躍有名になった例のアレである。
37℃前後の高水温でも棲息できる為、温泉などの保養施設と組み合わせて使える辺りの利便性の高さが人気の理由か。

ミー自身、実際に体験してみるのはこれが初めてだったが、なるほど、口が吸盤になっているせいかまるで痛くない。
なんというか、あくまで軽く、だが全力で舐められている… 矛盾しているようだがそんな感覚である。
そしてこれを下半身へとシフトさせた風俗施設への適用を考えない奴は断じてビジネスマンではないとも思う。
ただ体長10センチ程のメダカっぽい小魚が何十匹と自分の指に群がっている様は、見ていてあまり気持ちの
良いものでないことも確か。アイデアは悪くないと思うのだが、まだまだ課題は多いようだ。



で、次に覗いてみたのが「磯の生き物」なる、こちらは従来タイプの磯コーナー。
一見場当たり的な造りに見えて、循環ポンプなどの基本設備はきっちり備えてあった。
中に入っている主戦力は「ホンヤドカリ」「イトマキヒトデ」等。
それら静止型に加えて「ドロメ」などの高速稼動型、更には場の緊張感を煽る「イソガニ」などの
わんぱく要素をも混入させている辺りに、老若男女隔たりなく楽しませたいという姿勢が伺える。
いわばバリアフリー対応の「磯コーナー」と見て間違いないだろう。

この他にも紙で作られた魚を磁石で吊り上げる擬似釣り堀や、「女の子に大人気」のキャッチは
正直いかがなものかと思う「トビハゼふれあいコーナー」などがあった。
様々なタイプの磯コーナーを屋台形式にして賑々しく見せるという工夫はなかなかに独創的だ。
近年過疎化が目立つ磯コーナー業界のカンフル剤になってくれればと思う。



最後にこの広場の受付前にあったガチャガチャを楽しんでみた。
「チンアナゴの仲間たち2」「原色海水魚図鑑V」「日本の清流」「クラゲ・ソフトストラップ」
「伝説のゴーストシュリンプ」「深海魚・深淵の放浪者」
と、そのガチャの全てが水族館らしく魚類系で統一されているところはマニアとして非常に嬉しい。



震災復興支援商品になっている「深海魚」と「クラゲ」にチャレンジしてみたら出てきたのは、
深海系のサメ「ラブカ」と、この水族館にもいた「タコクラゲ」だった。
魚類的なレア度という意味ではそこそこ当たりの部類に入るのではなかろうか。



※総合.

非常に小規模だが小ざっぱり。日本一のさかな男「さかなクン」氏が支援していることもあってか、
おさえるべきポイント、見せるべきポイントはしっかりとらえていて、その上で様々な意見をごった煮風に
取り入れた水族館に仕上がっている。
特に運営とお客の目線の近さを如実に感じた。なので「水族館に行く」というよりも、
「仕事帰り、その疲れを癒しになんとなく寄る」的に気の向くまま赴くスタイルが最も適しているだろう、
そういう意味では地域密着型の特化系。ただ残念なことにこの水族館、2012年3月末日までの期限付き
運営なので、近くにお住まいの方は早めに赴かれるが吉。

ファミリー ★☆☆☆☆ 開館直後に行ったせい?
カップル度 ★☆☆☆☆ 上記に同じく
わびさび ★★☆☆☆ ベビーコーナーにて少々伺える
学術度 ★★★☆☆ 「さかなクン」絡みの説明は読んでいて楽しい
お得感 ★★★★★ 「無料」ゆえに無敵
建物装飾 ★★☆☆☆ 家具店「ナカムラ」の看板に味が
水槽装飾 ★★★☆☆ 簡易的ではあるが努力が伺える
総合調和 ★★★☆☆ 地域密着型の特徴は良く出ている
憩い場所 ★★★☆☆ 狭いながらもしっかり
磯コーナー ★★★★★ 独特かつ展開の幅広し
ペンギン度
レア度 ★★☆☆☆ パラオ産ミズクラゲはレア
総合 ★★★☆☆ あくまで私的観点と個人的意見から


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