男鹿水族館GAO

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※入館.



秋田県の男鹿半島先端に位置するこの水族館、県庁所在地である秋田から電車でコトコト1時間、
更にバスでユラユラ1時間ときたもんで、どんだけ田舎にあるんだよとその寂れ具合に少なからず期待していたら、
いざ蓋を開けてみればとんでもなく立派かつ近代的な建物が眼前に顕現してしまい、「加茂水族館」とは少々異なる
理由で出鼻をくじかれる羽目になった。


※エースの風格.



そして中に入るやいなや、お次は水量800 トン、展示数約40 種・2000 匹を誇る「男鹿の海、大水槽」に
気圧されることとなった。その規模にも圧倒されるが、水槽内のライトアップ技術もまたすごい。
魚という主役をさりげなく、時には大胆にひきたてているその光量と角度の絶妙加減さたるや。
「雄大スケール」という強大な力に溺れることなく、小技もきっちりと使いこなすその隙のなさっぷりからは、
この「GAO」を支えるエースの風格が確かに伺えた。

加えてこの大水槽、2フロアをぶち抜いての立体的構造をしている上、形状起伏に富む水中トンネルとも連結、
またそれらの様々な位置に覗き窓を有しているので、実に多岐にわたる視点からの槽景を楽しむことが出来るのである。



まずは基本に則って真正面から、お次は湾曲ガラス越しから広角的に、時には下部から突き上げるように、
…と様々なバリエーションのピーピングを楽しんでいたら、あっという間に1時間がすぎた。
ここの観賞時間は多めに見積っておいた方がよいようだ。


※館内散策.

ここらで、大水槽以外の展示コーナーにてパッと目にとまったものを数点ほど紹介してみる。



左は「カナガシラ」。絶品ものと称される「ホウボウ」と同科なだけに、「方々と」砂底を這いずり回る点、
その身が非常に美味、などの共通点があるらしい。ただ骨が固くて下ごしらえが面倒との理由で近年の市場に
おいては後塵を拝しているとのこと。かの大塩平八郎が癇癪をおこした際、この魚の固い頭部を噛み砕いて周囲に
呆れられたとの面白いエピソードも。

で、右のファンタジックな形状のが「ウィーディーシードラゴン」、
「葛西水族館」などで有名な、葉っぱ(リーフィ)の名を冠する「リーフィシードラゴン」の亜種みたいなものらしい。
しかし、これだけ形状がユニークだと目の前をユラユラ泳いでいるのを見ても、まるで現実感というものが沸かない。
むしろ水族館よりもモンハン内に登場する方が遥かに適材適所かと思われ。



こちらの左は「ウミタナゴ」。川魚の「ミヤコタナゴ」と名前が被っているので、これも希少種認定なのかと
思いきや、まるで別種とのこと。卵でなく胎児出産することから安産のおまじないとして有難がる地方もあれば、
その様が逆子っぽいので縁起悪しとするところもあるらしい。

右の方は 秋田県魚にしてこの水族館のシンボルでもある「ハタハタ」。
その名前の由来に関しては、雷雨の時期に「ハタハタ」と押し寄せるからという説と、波が多い時によく捕れるから
「波多波多」との2説あるらしい。
本来なら高級魚の筈が、近年では大漁すぎて処分に困って捨てたら不法投棄でタイーホ、なんて話も。
先ほどのウミタナゴの縁起話もそうだが、人間の都合で好き勝手振り回される魚さんも結構大変だなと少し同情したり。


※何気ない工夫こそが.

そうそう、ハタハタが展示されている水槽は一工夫こらしてあって、通路進行側の角度から見るとハタハタに
ちなんだ短歌を記したインテリアボードに見え、それを裏側から見ると展示水槽になるという仕掛けになっていた。



結果から見るとなんてことのない工夫。
だが、ただ思いつくのと、それを実行に移すこととの雲泥の差を鑑み、素直にこのさりげない工夫を評価したい。
ほんの僅かでも「おっ?」と思わされた時点で、それは偉大なる工夫なのだから。


※本当に怖いアマゾンの話.

さて、今や水族館の盛り上げ役として、デフォルト的な位置を占めるまでになった南米系のお魚さんを
ディスプレイしているコーナーがここにもしっかりと存在した。



まあいつ見てもその姿形が巨大極まる上に傾奇者すぎて、ちょっと覗いただけでも「あ、無理」という、
いつも通りの畏怖感が我が身を襲う。
そしてここはアマゾン系にしては珍しく上部開放型の水槽を採用していたので、上からもその巨体を観察できてしまい、
しかもその角度だと怖さ倍増だった。
横からだと圧倒感が上回るが、上からだと得体の知れない感が脅威的に増すことを初めて知った。



近くには「アマゾン研究小屋」なる現地探検家の生活を模した展示室があった。
その机上にてさりげなく存在をアピールする「NEC-PC98DO」を発見。
Windows7全盛のこの時代にわざわざ入手の難しいMS-DOS マシンを持ってくる辺り、
現地におけるPC事情のリアリティに対するこだわりを感じなくもない。

うむ、やるじゃないと思いつつ、ふと横の籠の中を覗き込んでみたらいたよ、とんでもないのが。
えーと「ベルツノガエル」さん、爆発3秒前のセルみたいな威圧感を伴うわりにゃ、
ペットとして一部マニアにこよなく愛される存在とのこと。カエルは顔じゃない、愛嬌だ。そういうことなのか?
我々キモオタの明日を担うスターサンプルとして今後ともウォッチしていきたいと考える所存である。


※日本人の本質.



ここ秋田の昔ながらの川を再現したこのコーナーにて、「ヤマメ」や「イワナ」などの、
いわゆる日本古来からの在来種をしばし眺め、先ほどのアマゾン・ショックからの回復を試みる。
かの利休は過ぎた華美を抑制したさりげない佇まいを「侘び」と呼び、芭蕉は静寂と穏やかさの
究極調和を「寂び」と称した。
湖沼の空気穴を模した装置に群がる川魚達、その一切の無駄を排した流線型フォルムを眺めていると、
そんな侘び寂び気分につい浸ってしまいがちになる。
威風堂々たる姿を誇る外来種とはまた別の、地味で寡黙ながらも味わい深いそれ…日本人の美意識を
形にしたような趣きが、古来からの在来種からは感じられると思う。


※まだ見えぬ何かにある何か.



かなり立派な造りの、おそらくは海獣用と思わしき空プールを発見。
これ県が約1億5000万円をかけて整備したシロクマ舎だそうだが、肝心かなめの「シロクマ」の
姿は未だどこにもなく。ただ通路側に設置されたモニターの中のみにてその勇姿を確認することは出来た。

知事は「開館に間に合わなければシロクマの着ぐるみを着る」とまで発言したそうだが、そんな彼の現在の
心境はおそらく「クマー!」。主のいない絢爛豪華な空プールと、その横で流れるモニター越しのシロクマを
交互に見つめ、その壮大なるシュール感をしばし楽しむ。



…と、よくよく見れば空プールと思われたその中に「アザラシ」さんの姿を発見。
周囲の外壁を取り囲むいくつもの監視モニターにその身をあますことなく晒しつつ、優雅に遊泳を楽しまれていた。
まだ見えぬシロクマの代わりにアザラシ、代替品+厳重監視というその状況も含めて妄想プレイにはもってこいだ。
ミー的には「はっ!はぁぁぁあんっ!イ、イサキは?イサキは?い、いないの??」のテンプレ部分をアザラシに
変えてのそれを、自信をもって推奨したい。



後日談となるが、シロクマの着ぐるみは謝罪兼シャレとして市長が本当に着たとのことで、
暫くしてシロクマも無事到着、2011/11/10 今現在、ちゃんと展示されているそうだ。
公約を守る県「秋田」、これには好感を抱かざるをえない。
ただ言いだしっぺの知事は「一度着てみたがヨレヨレしていて貧相だった」を理由にバックれたらしい。
知事ならぬ恥事め、ド許せぬ。


※麗しのペンギンさん.

シロクマ舎のすぐ近くにあるペンギン水槽にて、清掃中の職員さんの慌しさを意にも介さず、
ただ中空の一点のみをひたすら見つめて一顧だにせず、その隙だらけであるがゆえどこまでも
愛くるしい存在にしばし目を奪われる。



地上ではひたすら呑気な彼らだが、ひとたび水中にその身を沈めるやいなや、
今度は電光石火の動きで我々のカメラ視点を眩惑・翻弄し、あしらいまくってくれる。
天然系の不思議ちゃんとツンデレ小悪魔さんの融合した究極の萌え像、それが「ペンギン」。

「生まれ変わるならペンギンがいい」、これは偉大なるロックバンド「クイーン」のギタリスト、
「ブライアン・メイ」の言葉だが、これには同感の極みと言わざるをえない。


※哀愁の磯コーナー.

歩くものと泳ぐものとの交流場、そして水族館のお約束こと「磯コーナー」。
ただこの場所が将来有望なサディストの発掘場所でもあることは案外世間に知られていない。



大抵は閑散としているこのコーナーだが、この水族館のそれはなかなかに盛況だった。
その中でも水槽内のヤドカリを次から次へと陸揚げし、起伏に富む石山の上から無様に転げ落ちる様を
観察なさっているお子様、その屈託のない無邪気な笑顔の中に将来のドSっぷりを垣間見、15年後の未来へ
向かって放つ刺客の一人として密かに期待を寄せてみる。
草食男子をもてはやしたのも束の間、やっぱり強引に迫ってくる肉食系がいいなどと抜かしはじめた
世の移り気なメス共へ、さあ、その牙を存分に突きたててやるのだ(やるのだ)。


※そこにある憩い.



最後の仕上げとして、2階の観覧スペース、広々としたウッドデッキから秋田湾及びその遠方に広がる日本海を望む。
斜め視点からの突っ込みどころをまったく寄せ付けない、海沿い立地の利を活かしたダイナミックな癒しが楽しめる
正統派の憩い場として、存分に評価したいと思う。



※総合.

ほぼ建て直し規模に近い大規模リニューアルを近年行っただけあり、規模、装飾、演出、
そして設備と、どこをとっても水族館的にはほぼ隙の見当たらない、最新鋭近代型のそれかと思われる。
ゆえにそのテイストと対極にある「侘び寂び」系の味には幾分欠けるが、ファミリーと和気あいあい、
もしくはラバーとイチャイチャ楽しむには相当適しているかと思われ。
と、同時にロンリー腐れキモヲタ系においては最も警戒を強いられるタイプの水族館であるといえよう。
該当者においては不審者扱いされないよう注意されたし。

ファミリー ★★★★☆ 快適指数的にはギリ不快にならないレベル
カップル度 ★★★★☆ 心がギリ不快かつ腐海になるレベル
わびさび ★☆☆☆☆ 最新鋭ゆえ皆無
学術度 ★★★★☆ 詩的なテイストも含めてなかなかにアドバンス
お得感 ★★★★☆ この規模がぴったり1000円はかなりお得
建物装飾 ★★★★☆ 外観的にド派手かつ凝っている
水槽装飾 ★★★★☆ 設備、演出面、ともに上級
総合調和 ★★★★☆ 近代的という意味での調和美に隙なし
憩い場所 ★★★★☆ ひたすらにダイナミック
磯コーナー ★★★☆☆ わりと盛況、ゆえに中のイキモノ達は常に瀕死
ペンギン度 ★★☆☆☆ 密閉型水槽ゆえ、写真が非常に撮り難し
レア度 ★★★☆☆ 生物マニア垂涎もののレアもの、何点かあり
総合 ★★★☆☆ あくまで私的視点と個人的意見から


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