鶴岡市立 加茂水族館

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※入館



山形県は鶴岡市の加茂港脇に位置するこの水族館、事前に見たホームページに「恵まれた交通アクセス」と
書いてあったので楽勝気分で赴いてみたら、最寄の「鶴岡駅」からバスで32 分、しかも本数がとんでもなく
少ないというおまけまで付いてきて、いきなり出鼻をくじかれることとなった。いつものことながら海岸沿いの
立地が大方を占める「水族館」という施設の、電車利用者に対する冷たさは異常である。
まあ脇の壁面に描かれているアザラシさん絵が微妙すぎてむしろ気に入ってしまったので、とりあえずこの場は
良しとする。


※館内散策.

まずは地元の海域にちなんだ「庄内浜の海水魚」というコーナーにて、パッと目についたものを8 点ほど
簡潔に紹介してみる試み。



まず左から「ヒゲソリダイ」、庄内名を「かやがり」。
一見どこにでもいそうな単なるタイに見えて、実は市場で見かけることは稀なレア魚。
しかも煮てよし焼いてよし刺身でよしの万能魚でもあるらしい。水族館で魚を見ていつも思うことだが、
人と同じく魚も見かけによらなすぎる。

で、右側が「キュウセン」、庄内名「シマメグリ」、一般的には単なる「ベラ」。
産まれた時はメスで、大きくなるとオスになるという逆ニューハーフ魚。なんか「シムーン」っぽくね?
しかもこのオスになった奴等の中には、未だメスのふりして他のオスのハーレムで生活し、近くにいるメスに何食わぬ
顔で受精を試みたりする不届き者とかいるらしい、いいなー。でも「但しイケメンに限る」、とかなんだろなどーせ。



気を取り直して続けよう、左が「エゾイソアイナメ」、庄内名「ドンコ」。
煮れば身崩れ、刺身は水っぽいわで使えないわの代表魚。ただこれの肝を味噌ベースで野菜とともに煮込むと
「どんこ汁」と呼ばれる絶品になるらしい。バカもハサミも駄魚も使いよう、いや「覚悟のススメ的」には
「雑魚などという魚はない!」と言うべきか。

で、右が「オオクチイシナギ」、庄内名「おおよう」。
とにかく大きくなる魚で、中には全長2m・体重250 キロにまで達するものもあるという。水族館ではわりと
ポピュラー魚だが、個数があまり上がらない為、市場価値はそこそこ高いそう。
ゴツくて堂々とした潜水艦ライクな外見は確かに見映え利くし、南米系の巨大魚ほど畏怖を感じさせないので、
こういった施設でのんびり眺めるには最適の部類かも。



さて、このあたりでそろそろアブノーマル系いっとこう。
素手では触りたくないランク・トップ級の形状をしている左のが「ハナオコゼ」。
見た目ヤバい上に、この手のゲテモノは美味いとの定説にもまったく当てはまらず、総じて使えないとのイメージ
しかないが、何故かダイバーには大人気だそう。どう擬人化させても暗屯子的なテイストしか見えてこないのに何故?

で、これより更にはっちゃけてる右側のは「イズカサゴ」。
さっきのより見た目ヤバい度が上がってるので到底食えそうにないと思いきや、実は高級魚でメチャ美味らしい。
どういう法則でこうなってるのかさっぱりだ。我々が思ってる以上に魚というものは訳が分からない。



こちらのもうなにがなんだかといった感じの風体のが「オニオコゼ」。
上述した「ハナオコゼ」のエッジなフィールとは180度異なるブヨブヨ感、上向きについたその口、
体表を覆う無数の突起、背びれにはホルマリン漬けにしても抜けないほどの強烈な毒を保有、って、どんだけだお前。
どこをどう見てもフーゴのパープルヘイズにやられて腐れ死ぬ寸前のイルーゾォにしか見えないが、これはちゃんと
ゲテモノの法則に則っていて食すと実に美味し!らしい。うーん、ますますつかめなくなってきた。

で、この「庄内浜コーナー」のトリをつとめるは、そのマルっとした面構えが特徴的な「イトウ」さん。
北海道の一部水系にしか棲息していないことや、成長すると2mにも達するといわれるその堂々たる威風、
カエルやヘビなどを丸呑みする悪食っぷり、釣りキチ三平に登場などのエピソードから色々と尾ひれがついて、
今じゃすっかり「幻の魚」と化しているが、水族館的に見れば北海道のそれを中心に結構ポピュラーな存在なので
そこまでありがたみはない。その愛嬌あるお顔を眺めていると和やかな気分になるので、ミー的には「幻の魚」と
いうよりむしろ「癒し魚」かも。


※まだ見えぬ何かにある何か.

とある展示スペースにまったく魚影が見当たらない水槽群があったので、そのまま横を通り過ぎようとしたら、
バックヤードの扉が開いているのを発見。ちょっと覗いてみた。



そこには一人の職員さんが手に何か体温計のようなものを持って、
何らしかの器具とほぼ半ギレ気味に格闘している姿が。

展示側のスマートなレイアウトとは真逆の、煩雑このうえない上に生々しいこの風景こそが、
あの美麗で魅惑的な水族館の景観を支えてくれているのだと思うと、ついお疲れ様と声をかけたくなってしまう。

ただシロッコの「生の感情を丸出しで戦うなど、これでは人に品性を求めるなど絶望的だ」という
セリフに照らすなら、もう少しアングリーな気持ちは抑えた方がよいとも思う。


※触手大国、日本.

ここは普通の水族館ならまず日陰的な扱いに甘んじるであろうイソギンチャク及びクラゲ系にあえて力を
入れているそうで、早速その「メイン」コーナーとやらを観賞してみることに。



ムーミンの有名キャラ「ニョロニョロ」に酷似している左のが「ウミサボテン」。
暗いところで刺激を与えると発光するそうなので、「イカちゃん」のライバルキャラとしてどうだろうとも
一瞬思ったが、大人のおもちゃ的なその形状が作風的に好ましくないか。

で、どこのエロゲに登場させても恥ずかしくない、いやむしろ恥ずかしくなっちゃう立派な触手系の
代表格が右の「スナイソギンチャク」、色彩変異バリエーションが豊かなことでも知られていてその様は
実に華麗とのことだが、下手に手を出すと触手に仕込まれた毒によって痛い目を見ることになるそう。
この手の類を萌えプロデュースしての「触手喫茶」開店までの道のりはまだまだ遠い。


※骨抜きハードテイスト.

上述の触手系と対をなすこの「加茂水族館」もう一つのメイン、クラゲの博覧会「クラネタリウム」から何点か紹介。



まず左から。調光の関係上、紫になってしまっているが本来赤色の「アカクラゲ」。
刺されたらとにかく痛いことから始まって、刺糸の粉が鼻に入るとくしゃみを誘発することから
「ハクションクラゲ」と言われたり、直径20cm ほどの傘に放射状に16 本入っている赤い縞模様から
「軍艦旗クラゲ」と呼ばれたりと、とにかくエピソードにはことかかないクラゲさんらしい。

で、右のが「キタミズクラゲ」、南のエチゼンクラゲと並び、大量発生して網に何トンも引っ掛かっては
漁業に迷惑をかける不届き千万クラゲの代表格、であるがゆえ「当館が初めて繁殖に成功!」との文字を見て、
少々複雑な気分になったりも。



続けてこちらの左が「アンドンクラゲ」。
立方体状の傘からスラリと伸びる4本の触手がなんとも魅惑的な、いわばクラゲ界のモデルのような存在ゆえ、
上述した「綺麗な花には…」の定説どおり非常に強い刺胞毒をもち、酷いときにはアナフィラキシーを誘発して
死亡する例もあるとのこと。どのクラゲもふわふわ漂ってのんびり浮いてるだけのお気楽人生かと思いきや、
その実体がいちいちハードテイストすぎる。浮浪な人生は見た目ほど楽ではないということか。

で、右の未確認飛行物体ちっくなのが「オワンクラゲ」、外から透けて見える何本もの生殖腺が暗い水槽内にて
発光する様が非常に美しい。下村脩が本種における緑色蛍光タンパク質の研究でノーベル化学賞を受賞したことから
一躍有名となり、この加茂水族館でも一時期は展示の目玉だったとか。

しかしこのコーナー、プラネタリウムを模すためと思われる暗めの調光設定があまりにムーディなので
単騎デフォルトのミー的には少々きつすぎた。なのでミーと同属性のつがいヘイトな出不精ユーとかは、
ニコニコ動画にて「加茂水族館」で検索してみることを推奨。これらクラゲが水槽内を幻想的に泳ぐ様を、
家にいながらにして存分に観賞することが可能となる。


※哀愁の磯コーナー.

生のお魚さんとの直接的な触れ合いを目的とする、水族館的にはお約束中のお約束設備「タッチング・プール」に赴いてみる。
ここは展示方針による各館ごとの差異が面白いので、地味ながらも結構見どころがあったりするのだ。



ヒトデ、ナマコなどの歩兵に混じって、ハゼ、ゴリなどの騎馬兵クラスの姿もちらほらと見受けられる。
スペース的には平均より少し狭いが、魚に触った後のアフターケアに必要な手洗い場が近くにちゃんとあることや、
手書きの「ドラえもん」による注意文から醸し出される@ホーム感も含めて、なかなかに感じのよい造りだと思う。

まあ、そのノーピープルっぷりに関しては、ここも他館同様であり、
その様を見るにつけ、現代っ子における磯コーナーのニーズの低さを感じずにはいられない。
加えていうなら「ドラえもん」というセンスもちと古めなので、
ミー的には安定枠で「プリキュア」、冒険枠で「イカ娘」を推薦しておく。


※究極、そして至高のおねだり.

1Fの水槽展示フロアを抜けて、中庭の屋外展示コーナーへと向かう。
と、そこのアザラシ&ペンギン・プールにて、職員さんが餌やりを行っているところに丁度出くわした。



ゴマフアザラシ」達と、「フンボルト」に「マゼラン」のペンギンさん群が、かたやジャブジャブ、
かたやペチペチと職員さんの足元に擦り寄って、もっとおくれようと懸命に餌をおねだりする様は、こちらが狂おしく
身悶えするほどに可愛くて可憐であり、今この瞬間だけは世界よ平和であってくれと、縛りものの鬼畜エロゲーをこよなく
愛するこのミーですら願わずにはいられなかった。この絵を見れただけでも、今日来た甲斐があったというものだ。



さて、餌やりコーナーといえば海獣ショーと並び、イルカやペンギンを中心にした海洋生物達と交流できる数少ない機会、
いわば水族館の華であるが、その範囲を「ウミネコ」にまで広げている水族館はそう多くはないと思う。
そういう意味では他の水族館との差別化をはかると言う意味も含めて前向きに評価したい斬新な試みだと思った。

ただ、さながら爆撃機が落とす焼夷弾のごとく放出されるウンコナパーム、それを傘で防御している隙をついて
弐号機に群がるエヴァシリーズばりの勢いでよってたかった挙句に、餌をほぼ強襲レベルで強奪していくその様からは、
あまりピースフルな何かは感じとれなかった。てか鳥怖えェ…


※レッツ・エンターテイン・ユー



そんなこんなとしているうちにアシカ&アザラシの海獣ショーの時間になったので、早速専用プールへと赴いてみた。
ショー的には、アシカを杭に見立てて客に輪投げをさせるパフォーマンスが非常に盛り上がっていた。
漫然と演技を見るのもよいが、それに参加できる喜び・楽しさというものは演者が思っている以上に大きいものであり、
これを上手に取り入れているショーは例え芸がチープでもかなり雰囲気的にアガるものである。
また本来ならマイナスポイントであるショー・スペースの狭さを逆手にとって、客とアシカとの距離を密接にしていた
ことも功を奏していた。全体的に金を使わず頭を使っている印象、ここのPはかなり出来るヤツだと思う。


※そこにある憩い.



最後にどこか見逃したコーナーはないかと館内をウロウロしていたら、隅の方の一角に設けられた休憩ゾーンにて、
正体不明の生物と言われている「ケサランパサラン」を発見。
持っていると病気にかからなかったり、金持ちになれる効用ありとのことで、休憩がてら少し拝んでおいた。
憩いゾーンにおけるさりげない遊び心、その意味不明さも含めてセンス的にはなかなか面白いと思われ。



※総合.

規模、装飾、演出、どこを見ても水族館的には「地味」であるといわざるをえない。
が、それがマイナス材料になっていないどころか、むしろ売りになっているのがこの水族館、最大の長所だと思う。
本来なら日陰者のクラゲにいち早く目をつけてメインにまで仕立て上げた慧眼、お世辞にも広大とはいえない
敷地面積を上手に活かしたスマートなレイアウト、大技一発でなく小技を駆使して上手に心を掴んでいくショーの
妙を見るにつけ、まるでやりくり上手な主婦が運営しているかのようだ。
仕事・遊び、どちらの面から見ても、この水族館から学ぶべきところは多いと思われ。

ファミリー ★★★☆☆ 子供連れ、結構多し
カップル度 ★★★☆☆ 百合度高し。好印象
わびさび ★★★★☆ 古びた外観と、「地味」という点から見て高め
学術度 ★★☆☆☆ 手作り感はあるが、アカデミック的にはノーマル級
お得感 ★★★★☆ ¥1000円超えがざらな中、かなりお得な方では?
建物装飾 ★★☆☆☆ これまた地味、飾り気ほぼなし
水槽装飾 ★★☆☆☆ よく言えばシンプル、普通にみてやはり地味
総合調和 ★★★★☆ 「地味」というテーマがあるとするなら完全調和
憩い場所 ★★★☆☆ グリーンインテリア+αの癒し
磯コーナー ★★☆☆☆ 何度でも言うが基本に忠実に地味
ペンギン度 ★★★☆☆ おねだり度高め
レア度 ★★☆☆☆ クラゲ充実
総合 ★★★☆☆ あくまで私的視点と個人的意見から


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