豊平川さけ科学館

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※入館前、よろこ「ビフォー」



札幌郊外に位置する広々とした住宅街の一角にある公園、その中にこの施設はあった。
事前情報によると、この館のテーマでもある「サケ」を左右に2匹あしらったデザインが特徴的とのことだったが、
実際に見てみると「サケ」というよりも「プラナリア」に近い何かじゃないかと思う。

まあ、その外観を見る限り、水族館というよりも資料館や郷土館に近いテイストのようだ。
そして受付にて、この道内シリーズにおいては「美深チョウザメ館」以来となる「入館料:無料」掲示を受け、
脳内で「キタ━━━━(゚∀゚) ━━━━!」歓喜をあげまくることと相成った。


※入館後、かなしみ「アフター」



「無料」という名のビッグウェーブにのってハイテンションのまま館内へ突入。
そして館内を歩きまわること約3分、一抹の不安が頭をよぎる。さらに歩き回ること3分、
…館内における生体反応ゼロ、水槽ゼロ、当然水気ゼロ、ところ狭しと並べられたサケ標本の数々がその事実を明確に物語る。
あれ?もしかしてここは水族館じゃなくて博物館…的な何かですか、ひょっとして?

ライフ感溢れるフィッシュ達からオーガニックなエナジーを享受する筈が、デッドなサンプル群からワンピースの
クロコダイルもどうかというドライなオーラを浴びせつけられる羽目となり、みるみるテンションを急降下させていくミー。
訪問前においては休館日と営業時間の下調べだけは念入りにやっておいたのだが、まさか施設の概念そのものを
勘違いしていようとは思ってもみなかった。


※そこにある憩い



こうなってしまったからにはやむをえまい、せめて休憩コーナーにて一時の憩いを所望せんと
それらしきスペースへ赴いてみたら、そこの一角に漫画コーナーを発見。
その内訳も魚関連の施設ということから「釣りバカ日誌」「釣りキチ三平」などの魚類系コミックに
ほぼ統一されているようだ。床屋の待合室にも似たその場の雰囲気もあってか、ひたすらそれら漫画を
読み漁っていたら、あっという間に1時間経過。
そしてふと気付けば、その目的は「水族館・探訪」から「漫喫・満喫」へと変容してしまっていた。


※やっぱりラピュタはあったんだ.

完全に漫画喫茶モードへと移行しきっていたミーを覚醒させてくれたのは、
隣室から聞こえてくる子供達の「さかなさかなさかなー!」というはしゃぎ声だった。
声のする方の更に奥へと行ってみたら、12畳ほどの部屋とその周囲を取り囲む形で設置された水槽群を発見。
今訪問が無駄にならなかったことに安堵しつつ、早速観賞を開始してみる。



その主な展示は「ギンザケ」「アメマス」「ニジマス」など、いわゆる日本河川に住むありふれた川魚が中心のようだ。
ケレン味ゼロの地味きわまる展示だが、それら魚の説明文に関して手抜きが見当たらない点に職人気質的な何かを見る。



この施設近辺を流れる「真狩川」と「豊平川」、これら別々の川で捕獲された「オショロコマ」を並べて
展示することにより、成長環境による体色の違いを分かりやすく示した「
同じ種でもこんなに模様が違います」展示。
そのポストイット上に書かれた手書き文字に、簡素ではあるが暖かく、質素にして誇り高い何かを感じる。
全体的な雰囲気も水族館というより研究工房といった風であり、最早その観賞テイストは、
客に媚びない頑固一徹スタンスなラーメン屋の厨房を覗き見している感覚に近似しつつある。


※死と隣り合わせのミズカマキリと青春



その端の方には水棲昆虫を展示している水槽があった。
プレートにある名前は「ゲンゴロウモドキ」「オオコオイムシ」「ミズカマキリ」など。
さっそく覗きこんでみたがいくら探しても「ミズカマキリ」の姿はなく、今度は説明文の方を確認してみた。
そこに「ミズカマキリ」のフォント上に引かれた赤マーカーの取り消し線と、
それを強調するかのごとき「しにました」の赤文字を見て、生命の無常を知る。
と同時に「死にました」ではなく、あえて「しにました」という柔らかい表記を用いたところに、
担当者の配慮を見る。もはや見えぬミズカマキリの面影に見える優しさ、まだ人類は間に合うかもしれない。


※なにげない工夫こそが



上述した「水槽図鑑」コーナー先の地下通路には「地下観察室」なる展示スペースがあり、
そこでは大型のサケの仲間達がディスプレイされていた。
「カワマス」「ギンザケ」などの外来種と、「アメマス」「イトウ」「サクラマス」などの在来種に分けて
比較展示している点などなかなか興味深かったが、ミーがより目をひかれたのは下記の説明文だった。




要は水槽内外の温度差によるガラス上の水滴が引き起こす視覚障害を解消する為の方法なのだが、
それを言葉のみならず図解入りで説明しているそのこだわりように一目おきたい。
この説明板からはこの水族館が持つ一貫したテーマの存在が伺い知れる、「学べ」という姿勢が。
ちなみに肝心の魚の説明文はわりとおざなりだった。
ミーの一目の信頼性に関わるので、少々の改善を望みたいところではある。


※「ソラー!」とさんざ叫んだあの夜



「地下観察室」を抜けて地上に出ると、そこには「ぼくのなつやすみ」に出てくるような
田舎テイスト満載の平屋があった。その側には小さな池があり、その中をかなり大きいサイズの鯉が
泳ぎまわっていた。その純朴きわまる風景に、少年時代のノスタルジーという言葉だけでは終わらせたくない
郷愁的な何かを感じてしまい、しばしその場に立ち尽くす。

もちろんその郷愁対象は深夜アニメにおけるエロゲ発の学園モノの舞台、「ヨスガノソラ」に代表される
田んぼ広がる田舎であり、そのイメージ通りの風景を突如目の当たりにしてしまったミーは、アニメ舞台の
聖地巡礼を今まさに遂行中な気分に、はからずとも浸ることとなった。



ちなみにこれは「さかな館」という、札幌周辺に生息する淡水魚や水生動物を展示飼育する、
れっきとした展示施設だった。その主な展示は「ナマズ」「ハゼ」「ドジョウ」「ウグイ」「イトヨ」など。
部屋の中央にある机上には、手作りの学術的資料がポツポツと並べられていた。
その内容は「北海道の野生動物一覧」「サケの産卵行動観察ガイド」「動物クイズ」などなど。
その中でも「シロザケの産卵行動」という資料がミーの興味をひいた
(詳細版はこちら→



※オスザケがつがいになるためには体が大きい方が有利です。
※オスザケは、限られた時間の中でできるだけたくさんの産卵に参加しようとします。
※けんかに負けたオスザケは体の模様をメスそっくりに変化させて降参します。

など、オスであること自体が実はそうとう負けなんじゃないかと思わせるような文章を前に少々凹む。
ちなみにこれらの資料、見栄えがいいとはお世辞にもいえなかったが、地味ながらも丁寧な造りと、
その中に詰められたうんちくの数々は、とりあえず見ておいて損はないものと断言できる。
コミックマーケットなどで見かける特異な趣味に徹した同人本にこめられた圧倒的熱意に近い何かがここにはある。


※せめてカエルらしく



「世界のカエル展」なるコーナーが端の方に設置されていた。
左の「ウシガエル」、他「アマガエル」「トノサマガエル」などの日本種に混じって、
明らかにその姿形が浮いている異質カエルを発見。
南アフリカ原産の「アフリカツメガエル」、本来なら扁平フォルムから出ている力強い後ろ足が
特徴の筈なのだが、この胎児然とした姿は一体どういうことなのだろう?
なんにせよこれを見た子供達が「キモいー」を連呼しているのを見るにつけ、脳内にて「キャハハ、キモーイ」
「キモいよねーキャハハ」の絵が再生されてしまう自身をかえりみて、そのネット依存度合に少々反省したり。


※まだ見えぬ何かに見る何か



こちらはまだ見えぬ生き物が投入されるのを待っている水槽前に貼られていたポストイット。
そのどこか可愛らしい文字とフレンドリーな文面から、オタク唯一の武器たる想像力をフル発揮して、
まだ見えぬ、いや永遠に見えぬ可憐な女性の姿を思い浮かべ、と同時に想いを馳せる。

現実は常に裏切るゆえ、その真実はどうでもいい。ただ今この瞬間の萌えがあれば我々はそれでいいのだ。
ミーたちァいつだって萌え〜、そんなドキモヲタみた一般婦女子の悲鳴はウエ〜、ついでにゾウアザラシのいななきはボエ〜、
時間は夢を裏切らないし、夢も時間を裏切らない。声優はときどき裏切ることもあるけれど、初音ミクは絶対に裏切らない。
つまりもう二次元さえあればそれでいいと思うのだ。



※総合.

「水族館」とカテゴライズするには少々微妙だが、学術的ベクトルに寄ったハンドメイド感は
充分すぎるほど面白いし、真面目に見れば見るほど確実に伝わってくる何かが加速的に増していくと
思われる施設なので、この際なにが水族館であるかという定義はその辺に置きっ放しておきたい。
一つだけ確かなことがあるとするならば、この種の「趣き」を言葉で伝えるのは非常に難しいということだ。
ゆえにまずは足を運んでいただきたい、話はそれからだろう。

ファミリー ★★★☆☆ 家族連れ多し
カップル度 ★★☆☆☆ 学生カップル目立つ
わびさび ★★★★★ 飛びぬけている
学術度 ★★★☆☆ 資料充実
お得感 ★★★★★ なにせ無料
建物装飾 ★★★☆☆ 別館はほぼあばら屋レベル、だがそこがいい…
水槽装飾 ★★☆☆☆ かざりっ気ゼロ
総合調和 ★★★☆☆ 侘び寂びワールド
憩い場所 ★★★★☆ 簡易漫画喫茶
磯コーナー ★★☆☆☆ 野外観察池がそれに当たるかと
ペンギン度
レア度 ★★☆☆☆ サケ関連に充実
総合 ★★★★☆ あくまで私的観点と個人的意見から


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