留辺蘂 山の水族館

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※入館.

そもそも水族館とは水をテーマとしたものであり、基本的に海沿い・湖べりなど、
水が豊富なところに建てられるというのが、その立地条件の一つとされている。
しかしながら今回の目的地である「留辺蘂」近辺には海はおろか、湖沼もほぼなく、
昔ながらの自然豊かな川が町沿いを流れているのみである。

本当にこのような山岳の盆地に水族館などあるのか?
そんな疑念がよくなかったのだろうか、行けども探せども水族館らしき建物は一向に見えてこない。
そして刻々と迫る閉館時間、地図上では隣接している筈の道の駅「おんねゆ温泉」までたどり着いているというのに、
その影すら見あたらないというのはどういうことなのか?



ふと思うものがあり、表通りの裏側に回りこんでみたら…やった、発見!
てゆーか何故にわざわざ裏側の寂れた場所に門を構えているのか、その意図が理解できなさすぎて
少々戸惑いながらの入館と相成った。

この水族館、案内図を見るに、北海道の河川や湖沼に生息する淡水魚を集めた「山の水族館」と、
外国の熱帯魚を主に展示している「温泉水族館」の2部構成から成りたっていて、それぞれのホール間を
「郷土コーナー」で連結するという、小粒にしてはかなり盛り沢山な内容となっているようだ。


※ほのぼの下のペルソナ



入館直後のファーストコンタクトは、南米に棲息する変り種ガメ「マタマタ」だった。
澱んだ淡水の底に潜み、甲羅にコケ類を付着させてのカモフラージュを行って、
餌がよってくるのをひたすら待つタートル界の忍者とのこと。
そういやそんな題材の「忍者タートルズ」とかいうアニメがあったような…

傍には「
水族に来た時はこんなに小さかったのよ!15年でこんなにおおきくなりました」という
ほのぼのコメントがあったが、どこか違和感を感じて更によくよく見てみたらこのカメさん、
その水槽の中にぴったりとハマりこみ、身動き一つできない状態にあった。
中世ヨーロッパにおいては、かがんだ状態でしか入れない狭い檻にとじこめて
精神崩壊を徐々におこさせるという拷問方法があったらしいが、ここの館長がドSでない場合に限り、
この待遇は改善した方が良いかと思われる。


※哀愁の磯コーナー@山バージョン



「山エリア」の中央スペース、かなり目立つ場所に「磯コーナー」を発見。
その4区画に分けられたプールの中で特に異彩を放っていたのは摩周湖固有種の「ウチダザリガニ」、
半端なく生臭い上に力強そうなチョキを持つ益荒男ゆえ、その触れ合いにはかなりの度量が試されると見た。
とりあえずチキンが身上のミーとしては、別区画の高速駆動魚「ウグイ」さんを追い回して、
その場のお茶を濁しておくことに。

この磯コーナの裏手側にはまた別の、それも少々毛色の異なる磯コーナーが設置されていた。
水面にプカプカと浮かぶ郷土由来の器具を使用して上部からマスの子供達をこそこそ覗き見るという、
いわゆる稚魚マニアならばハアハア間違いなしのコンセプトには、ミー自身も大いにそそられ…(るわけがない)。

表裏ペアの磯コーナーとして見るならそのテーマは「デンジャラス&ピーピング」、語呂的には「ストッキング」
的な調味料が欲しいところ故、そのパない生臭さを加えて「withスティンキング」とでもしておこう。


※館内散策@山バージョン



メイン水槽群においては特に「マス」系、それも「ニジマス」の色鮮やかさが目立っていた。
他には「イトウ」を売りにしているだけあり、その個体の大きさにはなかなか目を見張るものがあった。
説明文によると体長1メートルになるまでに15年ほどかかるらしく、一昔前は2メートル級のものを
見かけることもあったそうだが、今では70センチ級のものすら稀らしい。
そういう意味ではここでお目にかかれるメートル級のそれは、その通り名のとおり「幻の魚」ということになるのか。
少々寂しい話ではある。



ということで、自然界においては既に希少種扱いになってしまった「イトウ」において、
更に希少かつこの水族館最大の売りがアルビノ種であるこの「白いイトウ」。
天然モノではない人口孵化種という点において多少価値が落ちるが、それでも貴重な個体であることは確か。
来館された折にはまず最初にチェキるが吉かと。


※山と温泉の間の風景




山と温泉をつなぐ回廊は留辺蘂市の郷土資料館を兼ねていて、開拓時代当事(大正)の人々のすまいや、
周辺に住む野生動物達の剥製などが展示されていた。

大抵の客はチラ見しただけでほぼスルーがお約束なこれらの郷土コーナー、
非常に残念ながらミーはこの手のものも突っ込みどころ探しという意味あいでかなりの好物であり、
ついつい詳細レベルでの鑑賞を始めてしまうことに。

でっかい大木を運ぶことを「強いられているんだ!」なお馬さんの剥製や、留辺蕊との関連性が皆目不明な
南極の石などに見入っていたら、静寂な空間を切り裂いていきなり汽笛の音がその場に鳴り響いた。



と、ホール壁に沿って設置されていた留辺蘂市ジオラマ内を、唐突にミニチュアの列車が走り出したではないか。
意表を突かれすぎてしばし無言、のち、ともに来ていた友人と爆笑。
お笑いの高度テク「ずれ」を巧みに使いこなすこの水族館、小さいながらもなかなか侮れない。

改めてジオラマ及び列車を観察してみたら、温泉街の煙の噴出再現も含めてその造りこみ度合が
明らかに素人のそれでないことに気付き始めた。
たかが一郷土コーナーにて、ここまでのこだわりようを見るのは正直過去に記憶がない。

ちなみにこのイベントは15分周期で発生している模様。
ほぼ無人のホール内にて、ダブルミーニングとしての意味合いも含めてまさに「もくもくと」列車が走る
そのシュールな様は確実に必見かと。環境系とか自然系とか、そういった通常の括りをこえた新しい領域の
癒しが確かにここには存在する。


※そして温泉へ



郷土コーナーを抜けた先、そこは「温泉コーナー」だった。
どちらかといえば先ほどの「山コーナー」よりもスペース的に開放的な作りのようだ、
水槽周囲のカラフルな色使いや、ちょい光度落とし気味の照明などが、さりげなくオシャレちっくかも。
もろに全開のそれでなく、あくまで少し背伸び気味のコジャレ感であるところに好意をそそられた。


※哀愁の磯コーナー@温泉バージョン



中央の「北海道」形状をしたプール内では、「金魚」や「鯉」、はたまた「お亀様」が優雅にお戯れあそばされていた。
触れ合いを旨とする磯コーナー的には、お亀様を強引に水から引っこ抜いて浮島の上に放置プレイなどが
オーソドックスかつもっとも理にかなった作法であるといえよう。
これの上級プレイとして、お亀様を浮島上にて仰向けての「絶望にィィ身をよじれえエエっ虫けらがァ…!」
などがあるが、たぶん覚えておいて損しかないと思う。


※館内散策@温泉バージョン



温泉エリア散策の中で特に目をひいたものを二つほど。
まず左側から「コロソマ」。
その最大の特徴は、アマゾン系特有の威圧感、その巨体から発している安易な近接を許さないオーラだと思う。

右のは「レッドテール・キャット」。
単なるナマズにすぎないはずが、その愛嬌あるツラ構えのおかげで、強面アマゾン系の中じゃ数少ない
愛されキャラとしての人気を確立した魚セレブ。この種を見るにつけ、やはり生き物は愛嬌であると強く感じたり。
それは当然人間にも相通じる。人と仲良くやりたかったら本当の自分とやらを貫く前に、
愛嬌の一つでも振りまく努力をするべきだと自分自身に問いかけてみるも、孤独と適応努力との天秤を前に、
未だその均衡は訪れてくれないようだ。


※そこにある憩い.

鑑賞に疲れた体を癒す為、いつも通り、憩い場所を探して…
と、温泉エリア入り口の横に階段を発見したので、なんとやらと煙は高いところに、の格言に従い、
ここは素直に登ってみる。そして辿りついた先でミーが目にしたものは侘び寂び系の風情において
最強と思われる憩い場所だった。



まず着目すべきは日本の伝統洋式美に則ったと思わしき「畳」である。
そしてそこに一つポツンと置かれている年期の入った「ちゃぶ台」の存在、そこから漂う星一徹的な
昭和テイストも見逃せない。加えて外の風景が楽しみやすい2階というところもポイントが高い。
このちゃぶ台を囲んで畳の上にあぐらをかき、窓の外の純朴な風景を眺めつつ、お茶を飲む…
これこそ日本人の日本人による日本人の為の最高の憩いだと考える、そんなミーの心を見透かすかのように、
脇に設置されている自動販売機の主戦力は「お〜いお茶」だった。うむ完璧、一分の隙もないほど完璧だ。



上述した憩いゾーンの傍には「3Dアートポスター展示」なる特設コーナーが設置されていた。
一昔前に少し流行ったのを覚えているだろうか?目の焦点を絵の中心に合わせて漫然と眺めていると、
画像全体が立体的に見えてくるという例のアレである。
早速ミーもチャレンジしてみたが、まったく立体的には見えてくれなかった。
まあ、お魚さんで一杯になった頭の中のリセットを促す効果は多少なりともあるようだ。



※総合.

憩い場所の素晴らしさや、おまけ的要素の強い郷土館に焦点を当てすぎて、メインである水族館
そのものの印象が少々希薄になってしまったが、「山」と「温泉」の2大コンセプトをセンスの感じられる
バランス感覚で区切って2本立て構成にしている本館そのもののグレードは、小さいながらも相当に高い。
おしむらくは立地がマイナーすぎる点に… いや、むしろメジャーな地域じゃないからこそ、
その存在意義がひきたつという考えもあるかもしれない。

ファミリー ★★☆☆☆ 小学生がチラホラと
カップル度 ★☆☆☆☆ ほぼ皆無、毒男天国
わびさび ★★★★★ 無敵
学術度 ★★☆☆☆ ほぼノーマル
お得感 ★★★★☆ ¥470という半端な数字は一体どこから
建物装飾 ★★★☆☆ 良き「寂れ」
水槽装飾 ★☆☆☆☆ 特筆なし
総合調和 ★★★☆☆ コンセプトは面白い
憩い場所 ★★★★★ 侘び寂びハイグレード
磯コーナー ★★★★☆ ちょっと独特
ペンギン度
レア度 ★★★☆☆ ウチダザリガニと白いイトウはレア
総合 ★★★★☆ あくまで私的観点と個人的意見から


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