おたる水族館

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※入館



運河とワインが有名な港町「小樽」駅からバスで20分程の場所にあるこの水族館、
入り口が小高い丘の上にあるがゆえ、到着早々にして何故か登山を強いられる羽目となった。
入館する前から帰りたい気分に駆られたのはこれが初めてかもしれない。

あと息も絶え絶えになっているところで、亀に乗ってガッツポーズしているダイバーにお出迎えされても
あまり嬉しくないかもしれない、というかほのかにムカつくまであると思う。
さて、館内の入り口にて門番を務めていたのは、空き缶だけでつくられた「エコ・クジラ」さん。
こちらの方は工芸品としての完成度がストレートに素晴らしかった。


※ザ・2000万パワーズ



館内をザッと回ったところで、とにかくデカくてド迫力だった系のお魚さんを何点か紹介してみる試み。
左は「マダラトビエイ」のコンビ。
その長い尻尾を振り回しつつ、追従しあいながら泳ぐ有り様が迫力満点だった。

右の「イトウ」は自然環境ならともかく水族館では割と見かけやすい魚だが、
「釣りキチ三平」の影響からか「幻の魚」的なイメージが常にあるところへ加えて、
ここで泳いでいる個体ほど大きいものは今まで見たことがなかったので、
まだ鑑賞を始めたばかりだと言うのにかなりエキサイト気味になった。



で、こちらの左側が「タマカイ」。
この風貌でダイバーをよく驚かせるそうだが、そりゃ目の前にいきなりこんな巨大魚が
出現したらさぞかしビビくるだろう、ほぼ喰われるかと思うもの。

そして巨大系のトリを飾るのがこの「ピラルク」。
水槽に刻まれた物差表示がその巨大さをこれでもかと言わんばかりに煽る。
もう、なんというか、凄いを通りこして怖い、怖すぎる。
それも得体の知れないものに対する怖さとかでなく、完全にド直球な畏怖というか、
自分より大きく強いものに対して素直に恐怖する、動物としての本能のような感覚、とでも言おうか。
人間のちっぽけさを思い知らされることしきりである。


※自宅警備系.

次は、水槽のデザインや内部オブジェ等、展示の見せ方が光っていた「引きこもり」属性系を、
何点か紹介してみよう。



左側は「モクズショイ」というカニさん。
先端がカギ状になった毛をうまく使って、海藻など身の回りにあるものを
体中にまとわりつかせて引きこもるという、かなりの上級テクをマスターしているヒッキー。
引きこもりの殻に使用している毛糸の色から察するに、引っ込み思案でありながらも、
わりと自己顕示欲が強いタイプと思われ。ヒューマンに例えるなら、この手のタイプは
個人ホームページなどをつくっている輩に多く見られがちなんじゃ、…と、自分を省みて思わず俯く。

右の「クマノミ」さんは他人依存型の典型的なタイプで、常に愛しのマイホームである
イソギンチャクの中に引きこもり、社会を出るのを頑なまでに拒んでいるご様子。
が、大抵の場合、本人はそれをほとんど自覚せず、常に本当の自分探しをしている不思議ちゃんで
あることが多い傾向にあるようだ。まあ親がいなくなれば当然本人も消滅するゆえ、
特に社会に影響を及ぼすような危険な種ではないと思われる。




都心の住宅事情はかくも厳しい、行政には本当になんとかして欲しい、
という不平不満が聞こえてくるような絵面しちゃってる左のは「ウツボ」の集団。
完全直立させた状態という条件でなら、全世界の人口は淡路島に収まることが可能だそうだが、
もし実現したならたぶんこんな絵図になるに違いない。

で、右は、穴から半身をのぞかせて外界へアプローチしようという努力が見られる分、
ヒッキーの中でもかなりマシな部類に入ると思われる「シャコ」さん。
が、本人の趣味や嗜好を完全否定してしまうと、途端に穴の奥に引きこもってしまうことが多々あるので、
ゆっくりと時間をかけて接してやろう。以上


※電気ウナギの憂鬱.



水族館にはほぼお約束の展示、「電気ウナギ」水槽もしっかり設置されていた。
このコーナーにおける最大の関心事は、ウナギさん本人よりも、彼が最大855ボルトの電撃を
ビリビリやる度に何らかのアクションを起こす「設置メカ」の方にあったりするのだが、
この手のそれにおいてはデジタル表示が主流の中にあって、電撃の強さをモニター表示の正弦波で
アナログ表現していたここのメカに関して、古典的価値と「侘び寂び」という観点の2点から評価したい。


※本日の801.



奥の方の水槽には、丁度プレイに興じている「カブトガニ」のカップルさんがいらっしゃった。
この種のオスの脚は鈎状になっていて、繁殖期にはこの脚でメスの尻にジョイントする習性があるそうだが、
これが困ったことに同種のメスのみならず、性別の勘違いを越えて種族まで間違えることがあるなど
ジョイント相手に激しく見境がない上、その拘束力も極めて強いとのことで、かなり用心が必要な生き物の
一つと考えられる。いや、むしろ度を超えた博愛主義者と評価すべきか。


※レッツ・ミー・エンターテイン・ユー



「イルカ・スタジアム」なる別館でアシカとイルカのショーが行われているとのことで観にいってみる。
調教師の指示により次から次へと多彩なアクションを見せてくれる「オタリア」のショーは純粋に面白く、
その後に続けて行われた「イルカ」のショーもこれまたド迫力ときたもので、まともにショーを見てしまっては
ほぼ突っ込みどころ皆無なことに気づいてしまったミーは、一旦スタジアムを出て地下にあるプール下部の
水槽からピーピング的な観賞を試みた。

うむ、なにかいけないことをしているようで、微妙にエロい気分になってこないでもない。
が、その先に到達するには、異種族というハードルがまだまだデカすぎるようだ。


※そこにある憩い



水族館本館から少々離れたところには「海獣公園」なる海洋哺乳類専門の展示コーナーがあった。
広大な敷地面積と立地に恵まれた環境、そしてコーナーそのものを憩いの場にしてしまおうという
道民らしい大陸的発想、これらが揃ったことから生まれたと思われるその雄大な景観は確かに素晴らしい。

そして目の前一杯に広がる青い海を横目に見ながら、「アザラシ」「トド」「ラッコ」「ペンギン」と
ほのぼの戯れることにより、本館鑑賞後の疲れを昇華させようというこのコンセプトには大いに共感
できるものがあった。左下の屋根上に書かれた「浜の屋食堂」の文字も、この癒しコンセプトのほのかな
アクセントとして一役買っているものと思われる。



それでは早速、海獣紹介にいってみよう。上は「ゼニガタアザラシ」さん、餌をねだるの図。
まずはその右手に注目してみてほしい。こいつら、ただでさえ愛らしくて可愛らしくてたまらないのに、
その右手で水面をパシャパシャ叩いて「餌をおくれよう」とかやるのである。
そのあざとさが少々鼻につかないでもないが、それを分かった上でなお、彼らのおねだり攻撃に
抗うだけの覇気はミーの中に残されていなかった。



それにひきかえ、こう口をカカっとあけて「ンが〜」と吠えるのみの、この「トド」の芸の無さは
もはや犯罪の域に達しているといってもよいほどだ。
ただそのアホっぽさに不器用さ、「ここではない、どこかへと〜」的な主張が垣間見えるような
奔放さが魅力的ではないかと問われれば、答えは「ノー」であり、結局エサを投げ入れてやる羽目に。
というかもう目があったら負けだと思う。




少し離れた池には、先程のゼニガタ家の分家たる「ゴマ」「ワモン」家のアザラシさん達が、
少々暑いのだろうか?集団にて岸辺でうだっていた。
ゼニガタさん達のはっちゃけぶりと比べると、これまた随分とデカダンスな所作・風貌である。
媚売ってあざとく生きるものあれば、片やパンクな装いで突き通すものあり、アザラシの生き方にも
色々なスタイルがあって然るべきと言うことか。まあ当然エサはやらないけど。



少し離れた場所にあるラッコ館では、そのクリクリっとした瞳をこちらに向けつつ、
腹上にて貝割りに興じている「ラッコ」さんを拝むことが出来た。
ただミー的にはその水槽の手前に飾ってあるラッコの着ぐるみの方が少々気になった。

 「葉子は…いるかい」
 「こ、ここにいるわ矢吹君!」
 「このグローブ、もらってくれ」
 「……!」
 「あんたに、もらってほしいんだ」

燃え尽きた漢の生き様をその着ぐるみの体勢に見て、脳内にて「あしたのジョー」最終回ごっこにしばしふける。
正直、販売していたら即購入レベルの出来の良さ、おみやげコーナーへの正式な導入が待たれるところである。


※哀愁の磯コーナー.



海獣公園の中にて「ザ・つりぼり」を発見。
浅くて狭い水槽内を泳ぐお魚さんを吊り上げることで、その生命の重さ・大切さを感じとるという意味では、
これもまた磯コーナーの主旨にマッチしたゾーンであると言えるだろう。

金銭の徴収および「釣り竿」という器具の使用により、その主旨をよりハイグレードなものへと
昇華させている点もポイントが高い。「吊った魚はプールに戻してね」という注意書きと水槽内を
半死半生でピクついているハゼ等の魚を見比べて、少々複雑な気分に浸りつつ、ミーはその場を後にした。


※麗しのペンギンさん.



ありがちそうで実はなかなかお目にかかれないレアな海獣ショーが「ペンギン」のそれであり、
ここではそれが見られるというので、集団行進くらいしか出来ないと思われるあのペンギンさんが
一体全体どんな芸を見せてくれるのかとワクテカしながら専用プールへと向かった。

その内容は大方の予想通り、まったく命令通りに動かないペンギンの意味不明な所業をボケとみなして
お姉さんがどこまでも突っ込み倒すものであり、正直「ショー」としての様相を呈してはいなかった。
…の筈なのだが、主題がペンギンという究極の愛玩海獣なだけに、その飛び抜けたコミカルさのみで
エンターテイメントが半ば強引に成立してしまっている事には少々驚いた。

流石はペンギン、何も出来ない筈なのにどこまでも万能だ。
だからこそ、ここまで愛される存在になりえたのだろう。



※総合.

丘の上には水族館本館にイルカ・スタジアム、そして丘下の海に面した敷地には海獣公園と、
数ある水族館の中でもその施設規模はトップクラスに入るものと思われる。
加えて北海道の雄大な自然と館内の敷地をうまくマッチングさせた開放感が素晴らしい。
ショーの種類も多彩な上に、別の敷地にある付属遊園地の規模もかなり大きめなので、家族連れには最適と思われる。
「登別マリンパークニクス」を典型的な近代都市型水族館の雄とするならば、ここ「おたる水族館は」ある意味
それと対極をなす、自然融合型の代表格といえるだろう。

ファミリー ★★★★☆ 極めて多し
カップル度 ★★★★☆ これまたそこら中に
わびさび ★★★☆☆ 自然の中で感じるそれも
学術度 ★★★☆☆ かなり詳細
お得感 ★★★☆☆ イーブン
建物装飾 ★★★☆☆ 海風への晒されっぷりが味
水槽装飾 ★★★☆☆ 見せかたに工夫あり
総合調和 ★★★★☆ 本館と海獣公園とのダブル構成はバランス良し
憩い場所 ★★★★☆ かなり豪快
磯コーナー ★★★☆☆ 器具、登場
ペンギン度 ★★★★☆ マヌーな方向へ高め
レア度 ★★★★☆ 規模が大きい分、レアものも相応
総合 ★★★★☆ あくまで私的観点と個人的意見から


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