桂浜水族館

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※入館



高知の英雄、あの坂本竜馬を育んだ名勝桂浜。
燦々と照りつける太陽、足下をジリジリと覆いつくす砂浜、そして眼前に広がる海。実に雄大極まりない。
磯の香りを楽しんだり、波打ち際を歩いたりしながら、そのロケーションを思う存分楽しみつつ、
ふと後ろを振り向けばそこには水族館が。うん、素晴らしいの一言。
立地環境的には過去のどの水族館をも抑えてトップレベルではないだろうか?


※エースの風格.



入ってすぐのところに「アカメ」を発見。
熱帯性の汽水域(海水と淡水の混じりあった水域)を好む魚で、南四国と九州だけに分布が限られ、
その個体数も極端に少ないことから「幻の魚」と称されることもよくあると言う。

日本の魚にしては珍しく、得も知れぬ重圧を感じさせるような圧倒的な存在感を、その外観から
放っており、眺めた瞬間「このプレッシャーは!」とシャアばりに呟きたくなってくるような気分にさせられた。
流石は、あの湿原の覇者「イトウ」と並んで「幻」と称されるだけのことはある。
伊達に釣りキチ三平のターゲットモデルになっていないということか。

さて、アカメと言えばその名の通り、赤ルビー色に怪しく光るモノアイがトレードマークだが、
このように目の光る魚は網膜の奥にタペタムと呼ばれる反射膜を持っているそうで、これが入力光に
反応して外から見ると光っているように見えるらしい。
内部構造を解説するならば、網膜自体は、光という入力信号を
視神経を通じて脳に伝える役割… 
いわばデジカメにおけるCCD機能を担っているが、このタペタムという物質がその光を増幅することにより、
アカメは水中内における微弱な光源下でも素早く的確に行動することができるようになるというわけらしい。
要は暗視野赤外線カメラを体内に内蔵してるようなものか、サイバーちっくでちょっとカッコいいかも。



水族館と言えば写真撮影である。
水槽内部を彩る綺麗なお魚さん達の姿をフィルムに収めておきたいと思うは、人として当たり前だろう。
が、フラッシュ光に弱い魚や動物なども当然おり、運営サイド側としては写真撮影をあまり推奨していないのが実状である。
それ故、この「写真とってください」表示には正直ド肝を抜かれた。しかもそれ以降が完全に意味不明
流石、南国土佐だと思う。気候の暖かさとぞんざいさは確実に正比例すると、ここにミーは確信する。



アカメ水槽脇に、いごっそう親父の珍解説」なる説明用パネルが設置されていた。

 
アカメは高知が本場ぜよ
 たかあ ふといもんんが(おどろくほど大きなものが)釣れて新聞にのらあよ
 あし(私)が聞いた話しでは2メートルにもなるざまながが(とてつもないものが)
 おるそうなけけど、一度みてみたいのうし。


各水族館における説明パネルの内容は、その説明に留まらず、各館それぞれの個性を示すバロメータ
としても使えるが、ここのそれは特に顕著だった。
土佐弁を使うことによりローカル色を強く打ちだし、かつ方言独特のユニークな味でフレンドリー性を演出、
それでいて難解な形容詞にルビをふることもおこたらないという細やかな気の使いよう。素晴らしい。
普段は何気なく見過ごされがちな説明パネル、これをきっかけにココを読んでいる皆様方にも注目して
もらいたいものだ。確実に何らかの無駄知識が得られること請け合いである。



前述した「釣りキチ三平」掲載時の内容が、参考資料として展示されていた。
水族館運営的に宣伝効果はともかく、人気漫画掲載に便乗したコマーシャル戦略は当然と言えるが
「昔の桂浜水族館 1980年(昭和55年)頃 オンボロだったのだ!」と余計な一言まで付け
加えるのは正直いかがなものかと思った。誠に申し訳ないが今も結構オンボロである。
いや、それがまた実にいい味付けになっている、と私個人は思っているのだが、世間様的には果してどうだろう。
「え?これでも新しくなったの?」的逆効果を与えてしまわないかと、多少不安がよぎる部分ではある。


※館内散策.

おなじみの館内散策風景より、目に止まったものをいくつか紹介。



左は「マンジュウイシモチ」。主に南海のサンゴ礁に住まうテンジクダイの仲間。
そのフォルムが極めて特徴的である上に小っこくて色鮮やかときたら、目に止まらない筈がない。
ちなみに英名は「Pajama Cardinalfish」。その名の通り、色とりどりのパジャマをまとって
大騒ぎしているというイメージにぴったりの動きを見せて、周囲の視線を釘付けにしていた。

さて、右は「ハマフエフキ」。特徴はそのアヒルのように突き出たお口。
まずはいごっそう親父から一言。

 
タマメともいうぜよ。磯釣りや定置網で捕れらぁよ。
 刺身をうまいけど鍋物にむいちゅう。色も形も見るからにうまそうなねや


正直、色といい形といい見るからに不味そうだ。
いごっそう親父の食センスを根底から疑わざるを得ないようなコメントではあるが、市井の評判を聞くに、
関東方面では今一つメジャーでないが、西の方では刺身にして良し鍋にしてこれまた美味しと、かなり重宝
されている高級魚らしい。魚は見かけによらないものだ。



次、巨大系いってみよう。
まずはおなじみ「クエ」から。彼に対する、いごっそう親父のコメントはこちら。

 
高知県でも磯釣りで、たかあふといもんが(びっくりするほど大きいものが)釣れらぁよ。
 クエ鍋でいっぱいやりゃ最高じゃねや

この親父の頭の中、食うことしか詰まってない。

で、右が「コブダイ」。
ケンシロウに秘孔つかれて爆裂まであと3秒のたわらば魚「フラミンゴシクリッド」さんに
まったくひけを取らぬ程のそのアベシっぷりに思わず唖然。
繁殖期においては大きなコブを持つオスほどモテるという、極めてイヤーンな感じの巨根伝説を
律儀に踏襲しているところもあわせて、正直つきあいやすい奴とは思えない。
こんな時こそいごっそう親父のワンポイント・アドバイス。

 
カンダイとも言うぜよ。高知ではめっそ(あまり)取れんけんど瀬戸内海や日本海には多いそうぜよ
 磯釣りの大物じゃ。白身でしまりがないけんどフライにするとうまいぜよ

また食うことだけだ。ま、しまりがないのはそのツラみれば3秒で分かるというものだ。



こんなのもいた。「カミツキガメ」さん。
コンビナート地帯にあるような危険物の匂いプンプン系タンクもどきのオブジェに抱きついて、
周囲をゆっくりと睨めつけているその様は、まさに小型ガメラと言わんばかりの迫力。
ワニガメと同じく
カミツキガメ科に属するこのカメは、神経質なワニガメに対し粗雑な性格を
しているだけでなく凶暴性も激しく、空腹時は特に注意が必要だとか。
その危険性ゆえ、和歌山県などでは特定動物(人の身体又は財産に害を加えるおそれがある動物)
に指定され、飼育するのにも知事の許可を得なければならないほどだそう。
伊達に小型ガメラ然とした風貌をしているわけではないということか。


華麗なる一発野郎



「ファインディング・ニモ」なるディズニー映画のブレイクのおかげで、この時期はどこの水族館へ行っても、
その主人公である「カクレクマノミ」が必ずフィーチャーされている始末である。
この水族館もその例にもれずクマノミのみのオンリー公演水槽(しかも御丁寧に映画ロゴ付き)コーナーが設置されていた。
まさに華麗なる一発野郎である。その突然振ってわいたような栄光の先にある、忘却という名の恐怖と、
それに附随する手のひら返しのぞんざいプレイが彼の身に降りかからないよう、ただただミーは願うのみである。


仄暗い水の底から

水深3000〜5000メートルに広がる深海平原は、生物の住処としては地球最大と言われている。
にもかかわらず、そこに住む生物の実体はほとんど明らかになっていない。(ディープ・ブルーより)



というわけで深海魚コーナーの紹介。
まずは一番ポピュラーかつメジャーな深海魚「リュウグウノツカイ」から。
世界中の
温帯の海に生息している深海魚で、荒天の時など稀に沿岸に漂着することがあり、その度に
地元のフィッシャー達をビビらせるナイスガイ。
デカいのになると全長8メートルにも及ぶそうだが、こんなものが泳いでるとこ見たらマジ気絶するだろ
沙汰の外すぎて、と思うくらいインパクト大なお魚さん。
その姿のせいもあり、昔の人はコイツが陸に流れ着くと、すわ
天変地異の前触れかと畏怖したそうだが
その気持ち分からんでもないなあ。だって標本レベルで既に怖いもの。




で、ベルサイユの薔薇に出てくる登場人物ばりにドでかい目ン玉ぶらさげてる奴が「サケガシラ」。

日本周辺の沖合の中層域(水深200〜)に生息、リュウグウノツカイと同じく海が荒れた時など
稀に海岸に打ち上げられたりするらしい。ちなみに今年(2004年)になって、各地でコイツが水面
を泳いでいたり浜に流されたりしてる現象が目撃されてるそうで、そら台風があり得ないくらい連発で
来ちゃってもしかたないわぐらい思っちゃうミーは間違い無く迷信を重んずる。

それにしても煮ても焼いても食えなさそうなヤツとはこのことだ。

総じてゲテモノは美味いと相場が決まってるもんだ的発想でコレ
食っちゃったチャレンジャーもいるみたいだが、
この場合に限っては自らの感性に素直になっておけば良かったと思わされるような結果になった模様。
そらマズいだろ、見た目からして湖底の藻に絡まってメタンでパンパンに膨れ上がった水死体ばりにブヨブヨな感じだもの。


※哀愁の磯コーナー



館内の中央にある池の脇に、餌やりコーナーを発見。
どうれ、鯉でもいるのかなと思って、餌の小魚をつまんで池のほとりまで持ってたらアンタ…



ギャー!

流石、南国の地、土佐である。マジで半端じゃない。
磯コーナーに大亀を放つ、この大胆さ、そしてこの豪快さ、そら坂本竜馬も育つ筈である。
とてもじゃないが、その指ィ食いちぎられるリスクを考えたら、東京の軟弱モンにゃ到底真似できない所業である。

久々に水族館でレベル3、つまりはマールブルグ級の身の危険を感じてしまった。
そのスケールのデカさにゃ、マジで畏れ入谷の
鬼子母神、心から賞賛の拍手をおくりたい。
あとは哀れな犠牲者一号とともにこの水族館が永久閉鎖となってしまわないことを祈るのみである。


※いきり膨て!僕のペニス!.



本館の2階には「コイワシクジラ」さんの骨格鑑賞コーナーなるものが設置されていた。
なんの飾りッ気もない、学術要素のみに重きをおいたと思われるこのコーナー、時にはいささか退屈と
とられがちなこともよくあるが、水族館プロのミーから言わせれば、これほど見どころ…というより突っ込み
どころ満載のコーナーもそうはないと断言できる。その最大の突っ込みどころが、この手のコーナーに必ず
付きものの、クジラさんの男根ホルマリン漬けである。説明文を一部抜粋してみよう。

この標本は水産会社の冷凍庫に長く保存されていたもので、寄贈を受け、展示されているものです。
生殖器は普段は生殖孔の中に収納されていて、発情時、交尾時に突出します。


なんのつもりでそんなものを長く保存していたのか、ぶっちゃけ正気を疑わんでもない。
毎日拝めば自分のその貧相な代物がちったあマシになるとでも考えたのだろうか。哀れにも程がある。
が、自ら短小包茎早漏とチンポ界のヘレンケラーを自負するミーとしては、全然笑えないものがある。



それにしてもこのあからさまな晒しようは一体全体どういうことであろうか。
それだけならまだしも、その説明図において、
「生殖器(ペニス)を出して泳ぐクジラの雄」
などと屈辱極まるキャプションを入れられる始末。あろうことか矢印付きだ。
その”(ペニス)”の注釈がいやがおうにも、全身をきりりと恥辱に染めあげる。
「いやっサカイさん、そこは…」
祥子はサカイの粘っこい視線を浴びて羞恥に火照ったその顔を、右に伏せたり左に伏せたりを
繰り返し、乳色の両腿をモジモジすりあわせ、ただただ恥じらいの悶えを繰り返すのみであった。
それを鑑賞しているサカイのそのいきりたった男根は、今にも天に突き立たんばかりの弩張を
悠々と成し遂げ、ますます煌々とした熱気を放つのであった。

うむ。何故こんな展開になってしまったのだろう。我ながら実に不思議である。


※麗しのペンギン君.

もはや水族館になくてはならない存在の一つと言っても過言ではない、毎度おなじみの
ペンギン・プールを紹介しよう。



主戦力はスタンダードの「フンボルト」君。
丁度えさやりの時間だったらしく、餌を放りなげている飼育係のおばさんの足下にて、皆が皆
いざ我こそ、いやいやそれがしこそとばかり、餌に向かって猛り狂っていた。

独自の特徴としては、ペンギン小屋の頭頂部に設置されていた、木彫りのペンギン像らしきものが
いかにも手作りってな感じのローカル臭を醸し出していて、それが実にアットでホームなフィールの
雰囲気づくりに一役買っていた。



ところで皆さんは「ペンギン・アンテナ」なる都市伝説をご存じだろうか?
手鏡か何かで太陽光を反射させて壁にスポットを作りだし、それを動かすと、それにつられていっせいに
ペンギンの頭も動くという例のアレである。で、ここで試してみたら一匹だけひっかかった。
その名もコキン君、その大いなる間抜けっぷりがラブりすぎて悶え死ぬ。


※そこにある憩い



水族館わきのビーチにて、憩いコーナーと思われるパラソル&チェアを発見。
擬似パノラマ写真にて、その雰囲気を味わってほしい。

椅子に深々と腰掛けて、テーブルの上に足をのったりと携えつつ、思う存分憩う。
目の前に広がる地平線が示すものは悠久、どこまでも悠久。
人間の生レベルでみればそれは確かに不変かつ不偏にしてどこまでも普遍なものであり、
眺めれば眺めるほど自分の存在が塵芥に思えてきて鬱になる。
が、少なくとも日常レベルにおける目の前しか見えない的視点から開放されたような気分にはなる。
つまり、悪くない気分だ。それが全てだろう。



※総合

高知を代表する観光地にありながら、そのような場所によくありがちな商業主義むきだしの気負い
というものがまったく感じられず、それがいい意味での余裕となって、周囲の風景と相成った雄大な
何かを感じさせてくれる。
全体的な規模は小さいが、いごっそう親父による説明文やアカメ・コーナーにおける演出など、
各ポイント毎の表現にメリハリが利いているので、あまり大きさは気にならない。
あえて難点をあげれば設備や外装が古めかしく見えることであるが、むしろそれすら個性ととらえたい。
故に高知の桂浜を訪れたなら必ず鑑賞するべき、その価値は十分にある。

ファミリー ★★☆☆☆ 観光地であるにもかかわらず、人影は薄い
カップル度 ★★☆☆☆ ジモティと思われる純朴カップルが何組か
わびさび ★★★★☆ いごっそう親父のインパクトが大きい
学術度 ★★★☆☆ クジラ骨コーナはなかなかにポイント高い
お得感 ★★☆☆☆ 少しだけ高め?
建物装飾 ★★☆☆☆ 極めてオーソドックス
水槽装飾 ★★☆☆☆ これは!というポイント、特になし
総合調和 ★★★☆☆ コンパクトな分、まとまりはある
憩い場所 ★★★★★ ロケーション的には過去最高
磯コーナー ★★★★★ 大胆かつ豪快
ペンギン度 ★★☆☆☆ フンボルトのみというのは若干寂しい
レア度 ★★★☆☆ アカメ及び深海魚関連のソレはなかなか
総合 ★★★★☆ あくまで私的観点と個人的意見から


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