相模川ふれあい科学館

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※入館.



山梨から神奈川を流れる一級河川「相模川」。今回はその相模川に棲む魚類を中心に
展示している市民ふれあい型の中規模水族館「相模原ふれあい科学館」へと赴いてみた、
…のだが、まずはその外観のシャレオツな佇まいに少々圧倒されることとなった。
建物周辺に浅い堀をはりめぐらして水のイメージを強調させること自体は美術館系の
施設などでそこそこ使い古されている手法と言えど、建物の敷地が浮島に見えるくらいの規模で
ここまでダイナミックにやってくれると流石に見応えが違う。
右の写真はその脇に設置されていた「アルキメデスのポンプ」なるオブジェ。
本館が醸しだす、水の宮殿的なゴージャス感をより引き立てていた。


※とりあえずの憩い.



中へ入る前に、少々周囲を散歩してみる… と、すぐ近くになかなか赴きの感じられる公園が。
作法的には鑑賞後に訪れるのが筋だろうが、まあたまには先走って強引に憩ってみるもよいものだ。


※いぶし銀の風情.



さて改めて入館。まずは施設内で一番力を入れていると思われる希少淡水魚コーナーから鑑賞してみることに。
この手のコーナーは数あれど「タナゴ尽くし」というコンセプトは結構レアなのではなかろうか。
右はその原種たる「タナゴ」、レッドリスト分類的には「IB」で全ランクの中間。
その指針は絶滅危惧の恐れがある部類に入っているのでちょいと注意してね?的な感じらしい。



続けてタナゴってみる。
魚体中央を走る一本ラインが特徴的な左のやつは「イチモンジタナゴ」。
そのレッドリスト分類は「IA」、近い将来における絶滅の可能性がそこそこ高い種ということで、
大切に見守りたい魚類の一つ。

でもって右側の鯉をまんま縮小したような魚は「ヤリタナゴ」、タナゴ系にしてはやけにデカい
その魚体が特徴らしい。そのレッドリスト分類は準絶滅危惧種の「NT」、まだ大丈夫だけどいずれ
危なくなるかもね的な位置づけにあるとのこと。



この辺でそろそろこの地味尽くめなコーナーの本命を叩きこんでみる。
それが左の「ミヤコタナゴ」、そのレッドリスト分類は先程のイチモンジさんと同じく「IA」。
タナゴ系の中では数少ない国の天然記念物に指定されており、河川工事等による生息可能エリアの
減少などで今なおその個体数を減らしつつある希少魚とのこと。なるほど体色的にもどこか雅的な、
皇族テイスト漂う気品が伺える。因みにここ最近、このミヤコさんを勝手に大量繁殖させたとして
ニュースになった件があったので参考までに貼っておく

で、日本に生息するタナゴ類では最も大型種とある右側のは「カネヒラ」。
これまた地味っこいわーと思いきや、オスは繁殖期になると背や尻ビレが艶やかなピンク色に染まり、
見た目的にもかなりド派手な風体に変化を遂げるらしい。うむ願わくばそっちの姿を見たかったかも。



タナゴ属コーナーのラストは亜種のタビレ系で飾ってみる。
左は「シロヒレタビラ」、そのレッドリスト分類はノーマルなタナゴと同じく「IB」。
琵琶湖を中心とする山陽地方の湖沼が主な生息地とのことだが、近年は「タイリクバラタナゴ」という
中華系の外来種勢力に圧倒され、その数を徐々に減らしつつあるらしい。
かつては栄華を誇った我が国の家電業界もここ最近は韓国のサムソンを筆頭とする中華圏勢力に押されっ
放しな様相を呈しているが、その兆候は既に自然界から始まっていたということか。

その右側は関東河川を主軸に生息している「アカヒレタビラ」、その名前に赤ヒレとあるにもかかわらず、
隣のシロヒレさんとまるで見分けがつかないというのはこれ如何に?
その名前の由来は赤く染まる背ビレの婚姻色からきているとのことで、結局のところタナゴ系というのは
その体色が婚姻色でド派手に飾られる繁殖期の春先に見に来ないとあまり面白味がないようだ。


※旬の味わい.

丁度時期が12月ということで、クリスマスをテーマにした展示水槽が幾つか見かけられたので、
何点か紹介してみる試み。



左は常に全身に何かを巻きつけていないと自己を保てない引き籠り型のガニ「モクズショイ」を、
右は黄色い「マヒトデ」と緑色の「イトマキヒトデ」のカラーリングをうまく利用してぞれぞれ
作成されたクリスマス・ツリー群。



で、こちらは「タコクラゲ」入りのシャンパン・タワー。
見た目実に華やかで大変よろしいとは思うが、これを飲めと言われたら完全に死ねる。


※本日の推しメン.



ここらでふと辺りを見渡してみる。
天井辺りに設置されたモニュメント、向こうの通路奥に見えるトイレ案内板を見るに、
どうやら今、この施設的に一番推していると思わしき生き物はサンショウウオ系のようだ。



ということで早速そのコーナーを鑑賞してみる。
左は古来より日本全国の河川上流に住まう長寿のシンボル「オオサンショウウオ」さん。
レッドリスト分類的には絶滅の危機が拡大していると思われる絶滅危惧2種の「VU」にカテゴライズ
されており、開発による生息地の減少や外来種との生存競合などにより、その個体数は年々減少を辿る
一方だとか。

その本家に比べるとかなりミニマムサイズな右のは「トウキョウサンショウウオ」。
「東京」の名前を冠するだけあって、関東平野の主な河川を生息域としているらしい。
サンショウウオというのは、よほど田舎の清流にでも行かなければ出会えないと思っていただけに、
このポピュラー感は水生物マニア的には嬉しいところだ。


※館内散策.



これまで館内をざっと歩いてきて目にとまった魚達を、ここらでいくつか羅列してみよう。
まずは希少淡水魚コーナーより2点ほど。両魚とも由緒高い古来よりの日本固有種であり、
左が「ギバチ」で右は「アカザ」。ギバチさんの牧歌的な素っ頓狂顔にしばし癒されたり。
ちなみに後者は背中のヒレ辺りに毒を持っているので要注意だとか。



次はこの館のメインテーマたる相模川の終着点である相模湾に住まう魚達からピックアップ。
左は磯釣り入門に最適とされるメジャー魚「カサゴ」。
簡単に釣れる上、煮て良し焼いて良し刺身で良しと無敵の万能感を誇る故、その不細工な魚相の割に
人気なのも頷けるところ。

でもって右は華麗魚の定番かつ釣りにおけるド外道魚の著名どころでもある「ミノカサゴ」。
優雅に泳ぐ様とは対照的にえらく攻撃的な魚であり、更にはその鰭にかなり強力な毒を持つというから
ひたすらやっかいとしか言い様がない。前者と比べるにつけ同じカサゴでも「ミノ」が付く付かないで
この違いとは… うむ、みのもんた恐るべし。


※魚類ヒエラルキー.



施設の一番奥に相模川の上流〜下流までの様子を模して造られた、水族館的にはお馴染みとも言える
擬似河川水槽があったので、順路に従って下流から舐めるように観察してみた。
右はその下流に棲む、ここ相模川の魚類ヒエラルキー頂点魚「スズキ」。



でもってこちらの左は中流代表の巨大魚、湖沼の妖怪こと「カムルチー」。
ただでさえ大きくなる魚なのに、加えて大食らいときているもんだから、中国産外来種の中でも
特に在来種の生態に悪影響を与えるとびっきりの迷惑魚として名を馳せているとか。

その右は上流代表「ニジマス」の色素異常個体、いわゆるアルビノ型。
淡水魚コーナー的には食傷気味とも言えるくらいに登場しまくる当ニジマス君ではあるが、
先程のカムルチーさんのニシキヘビちっくなヴィジュアル・インパクトが強すぎただけに、
この純朴の象徴ともいえる田園顔には多少なりともホッとさせられるものがあったり。



このコーナーの最深部にはこのようなオブジェが設置されていた。
たまたま展示するものがなかったからと解釈するよりも、スタッフのちょっとした遊び心ととらえて評価したい。


※レッツ・ミー・エンターテイン・ユー.

と、ここで前述の擬似河川水槽の上流ゾーンを使用して餌やりが、ちょっとエンタ的に言うなれば
フィーディングが行われるとのことで、その場でしばし待機して飼育員さんの登場を待つことに。



…と、まさかのクリスマス・バージョンな装いでの登場とは恐れいった。
その役割に徹しきれていない初々しさというか、ぶっちゃけ衆人環視の元にコスプレをしなければ
いけない辱め的な照れ照れ感が如実に醸し出されていて、我がリビドーがこれは大変よいものだと
ひたすらに語りかける。うむ、この時点で入場料分の元は余裕でとれたと明言できる。


※まだ見えぬ何かに見える何かと思いきや….



最後に中庭の池に赴いて、いつのまにかそこに棲みついてしまったという「マガモ」のアイコさんを見物に… 
てか、いない? …であるか。やはり冬は別れの季節、彼女は去った、シーズ・ゴーン… 
と、お一人様鑑賞に相応しく感傷モードでその場を後にしようとしたら、入口付近でよもやの発見!
マガモとしての本分及び尊厳を投げ捨て、池の中よりは多少暖かい渡り廊下付近にて思う存分怠惰に
憩うその姿にむしろ感動すら覚えてしまったミーの感受性はたぶん間違っていない。(と思う)。


※これもまた一つの可能性.

その県を代表するようなメガ水族館には決してないような、いわば「魚類」というテーマとは
少々趣きを異にするような謎アイテム及びオブジェが、この手の地方水族館にはたまに存在する。



これらのオブジェもその類、左のそれは底部プールから電動ポンプで汲み上げた水が上部から
様々な形態で流れ落ちる様を眺めて楽しむ「流れのオブジェ」なるもの。ライトアップという
工夫が加わっているので最初のうちは見ていてなかなかに面白いが、まあぶっちゃけ30秒で飽きる。
右は小さな雨粒レイン君が、雨→川→海→水蒸気→雲→雨、と形態を変えて循環する様を
ビジュアル的に見せてくれる「水のシアター」。まあぶっちゃけ「海」の段階まで見るものは三割に
満たないと思う。

そして見るものが誰もいなくなった無人空間にて、淡々と動き続けるこれらのオブジェ。
その状態をこそ真のテーマと見なして、人類滅亡後の世界、その存在の不毛さを象徴しているのだと
したらこれを作成した奴はかなりの皮肉屋であると思う。しかし、そういうの嫌いじゃないぜフフ…
(キモさ満点の引きエンド)



※総合

いわゆる大型の水族館とはまた違った切り口で、その地方独特の魚類生態を見せてくれるこの手の
地域密着型においては、ダイナミックな描写法が使えない分、「選択」に「集中」という
二大要素がキーになってくるのだが、その点において「タナゴ」を軸に据えた辺りの視点はなかなか
面白いと思われる。まとまりの方は若干とっちらかってる感もあるが、それもまたカオス妙味という
ことで十分にアリ、2014年の春にリニューアルが予定されているということで、そちらの方が
早くも楽しみである。

ファミリー ★★☆☆☆ 母と子的な組み合わせがチラホラ
カップル度 ★★☆☆☆ あまりいない、ビバ!
わびさび ★★★☆☆ 散見
学術度 ★★☆☆☆
お得感 ★★★★☆ 300円とかメチャ安
建物装飾 ★★★★☆ ここだけ妙にハイソ
水槽装飾 ★★☆☆☆ 普通
総合調和 ★★★☆☆ タナゴが統一感を演出
憩い場所 ★★★☆☆ 外の公園にあり
磯コーナー ★★★☆☆ カモがラブリー
ペンギン度
レア度 ★★★☆☆ ここでもタナゴが
総合 ★★★☆☆ あくまで私的視点より



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