サンシャイン水族館

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※入館



東京、池袋はサンシャインビル内にあった「サンシャイン国際水族館」が完全リニューアルし、
元の名から「国際」を引いた「サンシャイン水族館」として、2011年8月にグランドオープンを
果たすとのことで、早速赴いてきた。
休日は大変な混雑となることを予想してわざわざ平日午後に来訪したにもかかわらず、
入り口に至るエレベーター前では既に長蛇の列がつくられていた。
暫くは同様の混雑が予想されるゆえ、ここを訪れる際は、開館直後の早い時間帯を狙ったほうが良さそうだ。

入り口の装いにおける最も大きな変化としては、真横に設けられた噴水池の存在が挙げられよう。
この水族館は夜20時まで営業しているので、夕方以降においてはイルミネーションによる光の演出が
さぞかし映えることと思われる。


※館内散策



1月下旬という受験シーズンの真っ只中に訪れたこともあり、
入ってすぐのところには「合格祈願」水槽が設置されていた。

その中を彩る合格祈願魚として採用されていたのは、
サンゴ礁の比較的深い水域で見られる熱帯魚「ハタタテハゼ」。
少々斜めながらピンと立てられたその背びれ同様、受験生の方々においても大漁旗が昇らんことを、
影ながら祈願しておいたり。



その他、目についた展示として、左の「ウィーディ・シードラゴン」がまず筆頭に挙げられる。
ただでさえヘンテコな形状が多いヨウジウオ科の中でも、親戚である「リーフィー・シードラゴン」と並んで
突出的な変則フォルムを誇るだけあり、これが展示されている水槽前は常に人だかりの山だった。

で、色鮮やかな朱色が映えている右の奴は「フレームエンゼルフィッシュ」、
そのアバンギャルドな色彩模様から見るに異国系の種かと思いきや、
実は日本固有種である「キンチャクダイ」の仲間であり、アクアリストの間でも特に人気の高いお魚さんだそう。
何処となく地味な印象がある我が日本のカンフル剤となるべく、今後ともこの路線のまま、
どこまでもド派手に突っ走っちゃってほしいと思う。


※館内散策@雰囲気系.

装飾オブジェの工夫が実に素晴らしかった、いわゆる「雰囲気系」の水槽を何点か紹介してみよう。



左は、その荘厳かつ神秘的な雰囲気が不可侵領域を強くイメージさせた「海底洞窟」水槽、
中を無数に泳ぐ「キンメモドキ」の群れが、そのムードづくりを手伝っていた。
おそらくこの水族館の中でも1、2をあらそう美しさを持つ水槽だと思うので、確実にチェキっておくことをオススメする。

そしてアオサンゴ群落の生態系を再現していた右の展示は「石垣島」水槽。
パット見「ド迫力」な力技イメージを与えてくるサンゴのオブジェと、中を泳ぐ色とりどりの熱帯魚との組み合わせが、
その前を通るカップル達を次々とノックアウト、キャツらの欲情促進に一役買っていたと思われ。うむ、けしからぬわ。



さて、その「石垣島」水槽から、これは!と思われたインパクト勝負の魚を2点ほど取り上げてみよう。
左は「イロブダイ」の幼魚。頭部の美しいツートンカラーが見られるのは幼魚の時だけだそうだが、
成魚になればなったで今度はピンク色に縁取りされたフォルムがますます美しいとされる美魚。

下あごから伸びている2本の髭が特徴的な右の魚は「オジサン」。
真正面から見ると髭がオジサンっぽく見えることからその名前が付いたらしいが、
彼にしてみれば不本意極まりないことだろう。よくよく見ればわりとイケメンっぽくもあると思うのだが… 
というか魚類のネーミングなんて結構いい加減なものだと改めて思う。
よくよく考えたら名前なんてものを気にするのはヒューマンだけか。



「洞窟」「サンゴ」などのつくりもの、いわゆる無機物オブジェを取り上げた後は、
観賞物たる魚類そのものを装飾アイテム、つまり有機的オブジェとして使用していた例を2点ほど挙げてみよう。

左は、時間の経過とともに次から次へとその形状を変えていく「ゴンズイ」の群れと、
その周囲を取り囲むようにして泳ぐ「ネンブツダイ」との組み合わせが、ヴィジュアル的に映えまくっていた水槽の一景。
何万匹もの「マイワシ」を使った有機的アート風の展示は「マリンピア日本海」などで有名だが、
それのミニサイズ版といったところだろうか。
規模が小さいがゆえ、目まぐるしく形状を変えていく「ゴンズイ玉」の様子が一瞥できて、かなり面白かった。

で、右は「ふわりうむ」と名付けられたクラゲ展示専用トンネル内の「ミズクラゲ」水槽前。
色とりどりの蛍光灯に照らし出されたクラゲの大群が揺れ踊る様は実に妙観であり、
これがまた先ほどの「石垣島」水槽同様、ホモサピエンスのつがい共の発情を急速に促していたと思われる。
まったくもってド許せぬわ。


※エースの風格.



こちらは、この水族館の顔たる「サンシャインラグーン」と呼ばれる大水槽。
全国レベルで見れば面積自体は中程度と思われるが、その大きさに似合わぬ奥行きの広さ、
もしくはそう見えるように施された視覚的な工夫や、全体の景観を際立たせている砂地面の見事な白さには
地味に驚かされたり。

で、右はこの水槽内のぬし的存在と思われる「マダラトビエイ」。
「オニイトマキエイ」ほどではないにせよ、その長い尻尾を優雅にくねらせつつ水中を華麗に
「滑空」していく様は一見の価値ありだと思う。



続けてこの「サンシャインラグーン」内の見どころを連発で挙げてみよう。
左は「トラフザメ」、若干茶色がかった表面層に比べて、ぬけるような白さが目立った裏面が印象的だった。
サメ展示としては「ネコザメ」や「ドチザメ」同様、ありふれたタイプの、いわゆる「駄鮫」の部類の筈だが、
見方一つによってこうも上物の観賞物になるものか。

そして右側、エイだかサメだかどっちつかずの形状をしているこれは「シノノメサカタザメ」、
実際にはエイの仲間だそう。過去の記憶を辿るかぎり、これまで四国の「足摺海洋館」でしか
お目にかかったことがない代物だけに、わりかしレアな部類に入るのではなかろうか。
まだ小さいようだったが、大きくなれば3メートル近くにまで達する種だけに、このまま順調に成長すれば、
この水槽の目玉となる可能性大だろう。
おそらく見ごろとなる2年後、2014年あたりにこの水槽前をもう一度訪れてみようと思う。



観賞物たる魚自体は変り種ではないものの、その状態が面白かったものを2点ほど。
左は「ニセゴイシウツボ」の少々レアな遊泳シーン。ちょうど水槽内の清掃をしていたダイバーさんが、
岩場の中に隠れていたところを引っこ抜いてくれたので、すかさず激写してみた。
魚にとってはいい迷惑だろうが、エンタ的に見るならこの水族館は大変よく「出来ておる喃」だ。

その右、タイの仲間と思わしき小魚にひたすらケツっぺたをつけ狙われているのは「ナルトビエイ」さん。
本来なら「本日の801」コーナーに取り上げるところなのだが、観察する限りその想いはどうやら
一方通行な模様だったので、不憫な片思いさんと解釈してここで紹介してみた。



「水中パフォーマンスタイム」と題したダイバーのお姉さんによる魚の餌付けショーがあったので、
頃合いを見計らって観賞してみた。色鮮やかなブルーのダイバースーツを着たお姉さんが、
これまた色とりどりな無数の魚達に取り囲まれているその絵ヅラはとても美しくて幻想的なものであり… 
と同時に、殺人魚の群れに襲われた美女が瞬時にして骨だらけにされてしまうという「ピラニア3D」の
1シーンをも想像してしまった自身の不謹慎っぷりを少々反省。
ちなみに「ピラニア3D」自体は、頭にB級が付くものの、相当よく出来たパニックホラーだと思うので、
その手のものが好きな方には断固お勧めしておく。


※イカちゃん、マジ、イカちゃん.

人工環境下での飼育はかなり難しいとされている「イカ」の部類を扱った「海の忍者」コーナーがあったので、
その中でも特に目立っていたヤツを、舐めまわし舐りつくすがごとくネチネチ観賞してみた。




左側は「コブシメ」の成魚版。
幼魚ならともかくここまでデカい個体を見るのは初めてだったので、思わずギョッとなる、イカんイカん。
……え、えと、この種はウツボに似ているとの理由から白黒の縞模様を嫌うそうで、
それを見るだけで小さく萎縮してしまうとのこと。
イカの中では屈指のデカさを誇っているにもかかわらず、結構な臆病者のようだ。

右いってみよう、「コウイカ」、というかコウイカ自体が「目」カテゴリーなので、これはその中の一種。
ちなみに左の「コブシメ」もコウイカ目。タコ、ホヤなどの無脊椎動物の中では全身に占める脳の割合が
最も大きい種族だそうで、進化の過程が一歩間違えば地球の覇権をとっていたのはコレだったかもしれないと思うと、
少し退廃的ロマンを感じなくもない。



続けていこう、左は「ヒメコウイカ」。
ただでさえ色彩変化に芸達者なコウイカ系の中にあって、瞬時に体色を変化させる程の技をもつトップ級の忍者イカ。
華麗さという点から見ても1級だと思われるので、ここを訪れた際にはまず率先してチェックかと。

で、右の小まっちいのはおそらく「ミミイカ」の一種。
どこかグロテスクなイメージがあるイカだが、これを見ればその先入観は覆るんじゃないかと思う。
てか完全に可愛い。おそらくポイントは口元の吻の長さ、これが長いか短いかの絵ヅラで随分と印象は異なるものだ。


※グレイシーの血族、薄味系.

ひき続いて「水辺の旅」をテーマにした、アマゾン・アフリカ・東南アジア系の水槽から何点か。
この水域系においては、いつも「ピラルク」を筆頭とするトンデモ系ばかりを紹介しているような気がするので、
たまにはインパクト薄めの地味系を取り上げてみることにする。



銀色の体にビッと通っている黒ラインが特徴的な左の奴はインドネシア近海に棲む「アポロシャーク」、
「鯉」というありふれた種の仲間であるわりにその外見がクールということで、地味に人気があるらしい。
かなり気が荒いので混泳には注意が必要とのことだが、そんな気分屋さんと同水槽内にて共存していたのが、
同じく「鯉」の一種である右の「シルバーシャーク」。
「アポロ」さん程ではないにせよ、背びれと尾びれのツートンカラーはかなりイケてる部類に入るんじゃないかと。
ちなみに性格は極めて温和とのこと。
クールな「アポロ」と、マイルドな「シルバー」、かなり相性マッチな組み合わせなんじゃないかと思う。



亜熱帯の汽水域環境を彩る植物サイドの主役、「マングローブの森」を再現した水槽にて、
密集することでそのインパクトを何倍にも高めていた「一は全、全は一」な魚達を取り上げてみよう。

まず左は南米に棲むナマズの一種である「ピメロディア・ピクタス」。
その長い口髭を水槽底面を這わせながらの集団待機の図はかなり異様な景観だと思う。
実際、周囲の子供は完全に怖がっていた。

で、その右は琉球列島以南に分布する「ヒメツバメウオ」。
トランプのダイヤのような、その平べったい体を目まぐるしく回転させつつ、
密集しながらマングローブの枝の隙間を泳ぎ回るその様に、万華鏡との類似性をみて、しばし心奪われたり。
うん、この水族館には、魚類観賞の楽しさを王道的に満喫させてくれるような展示が特に多いような気がする。


※せめてカエルらしく.

この水族館のリニューアル前の長所、「爬虫類系に対する強み」の遺伝子は、
リニューアル後のそれにもきっちり受け継がれていた。
ということで、「カエル」を筆頭に「トカゲ」「ヘビ」「カメ」など、両生類系の展示も豊富なこの水族館にあって、
これまでのシリーズで紹介してきたカエル系とカブらないものを、2点ほど取り上げてみる試み。



左は「サビトマトガエル」、シーラカンスで有名なマダガスカル島にのみ棲息する固有種。
目が覚めるような朱色で人気だった「アカトマトガエル」なる同属がワシントン条約により輸入禁止になった為、
その代用品としてにわかに注目を浴びているらしい。

で、その右は「モウドクフキヤガエル」。
その用途がネーミングだけでここまで一目瞭然になってしまうカエルもそうはいないと思う。
ちなみにその毒素はコンマ1ミリグラム程度で人間をも死に至らしめるという自然界最強レベルで、
一匹のカエルから取れる量を換算すると190人分にもなるらしい。
しかも触っただけでアウトいう本気で洒落にならないホンマモンさんなだけに、ガラス越しで本当に良かったなと。


※なにげない工夫こそが.



中庭スペースで一番目立っていたのがこの「アシカ」専用プール。
円形のチューブ型構造をしているこの水槽、アシカの遊泳シーンを様々な角度から観察できる上に、
見た目も面白く、更にはアシカショー待ちの時間つぶしに最適とあって、相当の人数がこの周囲に集まり
記念撮影などをして楽しんでいた。
この構造上の工夫は、わりとありがちそうにみえて、その実かなり斬新な部類に入るんじゃないだろうか。


※麗しのペンギン君.



水族館でペンギンといえばその種は「フンボルト」が大方を占めるのだが、
この水族館にいたのはそれの亜種たる「ケープペンギン」だった。

飼育員のお姉さんをじっと凝視しつつ、エサを今か今かと待つ姿はどうしようもなくラブリーとしかいいようがない。
しかもこのプール、わりと柵が低いので、少し手を伸ばせばその愛くるしいペンちゃんに触れられなくもないのである。
が、かつて「松島水族館」にて上記同様の注意書きを無視して軽々とガブられた経験を持つミーとしては、
ここは自重せざるをえなかった。



ちなみにこのペンギン・プール、向かって左側の方に人工の滝が設置されていて、
一定周期毎にやってくる怒涛の奔流が圧倒的な水流をもってして、呑気に水面を泳ぐペンギンをもみくちゃにしまくっていた。
が、当の本人はその勢いにめげるどころか、むしろ自らの翻弄されっぷりを積極的に楽しんでるご様子。
その光景の中に楽天的民族の筆頭たるイタリア人スタイルを見て、やはりペンギンはいいものだと
ありし日のマ・クベのように呟く。まったくペンギンは何度見てもいい、その自由気ままっぷりが何よりもいい。


※驚嘆のエンターテイナー.



ペンギン・プールの向こう側には、ここのリニューアル前の名物キャラだった「ペリカン」さんがいらっしゃった。
1日に2回しかないペリカン餌付けショーまであと少しだったので、寒風吹きすさぶ中を懸命に耐えつつ、
そのファニーな顔を眺めて時間を潰すことに。

しかしリニューアル前はもう少し広々としたプールの中に展示されていた筈が、今はどうしてこんな立方体プールの中に?
と少々首を捻ったのだが、その謎はショーが始まってみてすぐに解けた。
なるほど、本来の飼育スペースはこの裏手にあって、この立方体プールはどうやら餌付けショーの見映えをよくする為に
設置されたものらしい。



それにしてもだ。これを見た途端、自分でもびっくりするくらい「えーーーーっ」となった。
特に餌付けショーというものに視覚的な期待は一切していなかった分、その驚きはより大きかった。
いやいや、この首のありえない伸びっぷりはマジないわーと呟かざるをえないこと受け合いだ。
既にここを見てしまった方においては、その衝撃度は少々薄まるだろうがそれでも見る価値十分にアリと
太鼓判を押すほどまにで、このショーは必見だと思う。


※どきどきアニマル☆ぱにっく.

上記に挙げたアシカ、ペンギン等の海獣類の他にも、
水族館というよりどちらかと言えば動物園にマッチするような哺乳類が何点か展示されていたので、
その中でも特に目立っていたものを少しばかり取り上げてみようと思う。



というわけで左は「ムツオビアルマジロ」。
その鈍重そうな外観とは裏腹に、実はこっちが想像する以上に素早く動いて、
周囲の客のカメラ視点を翻弄しまくっていた。

そんな彼に追いかけ回されていた右の奴は「フェネック」。
動物園などではアライグマと並んで可愛い系小動物の筆頭格だが、
ここではアルマジロの慰み者にしかなっていないようで少々同情。



で、こちらが「ミナミコアリクイ」、
みんながしきりに上を見上げているので何を見ているのかと思いきや、コレだった。



ほとんど手がかりのない壁をよじ登った末に天井へ張り付いたり、
木の枝の上を頼りなく歩いて見ている客達をやきもきさせたりと、その動きの多彩さにおいては他の追随を許さない模様、
故にここの哺乳類系展示のエースと認定。
今後とも賑やかしキャラとして、この水族館を華やかに盛り上げてほしいと思う。



総合.

多少手狭だったといはいえ、ただでさえ元々のクオリティが折り紙付きだった水族館が更にパワーアップ、
しかもそのベクトルは確実に「コジャレ」感に向いていると思われ。
つまりオンリーロンリー野郎にはますます入りづらい水族館となってしまった。
敷地面積の狭さを「見せ方」及び「魅せ方」の工夫でどこまでカバーするか、そのお手本のような水族館だと思うので、
ミー同様の独男および毒男諸兄においては、精神修行の一環として、周囲をうろつく大量のカップルをものともせず、
堂々と館内中央を闊歩していただきたいと思う。

ファミリー ★★★★☆ リニューアル後とあってフルハウス
カップル度 ★★★★★ 退かぬ媚びぬ省みぬ
わびさび ★☆☆☆☆ 元より期待していない
学術度 ★★☆☆☆ 何故かグレードダウン?
お得感 ★★★☆☆ 大都会のド真ん中という立地環境を考えれば
建物装飾 ★★★★☆ 入り口付近はムード満点
水槽装飾 ★★★★★ ムーディ極まる
総合調和 ★★★★☆ ますますの充実
憩い場所 ★★☆☆☆ カップルだらけの中、憩えるか
磯コーナー ★☆☆☆☆ とりたてて記述すべき項目なし
ペンギン度 ★★★☆☆ 翻弄されまくり
レア度 ★★★☆☆ イカちゃん、充実
総合 ★★★★☆ あくまで私的観点と個人的意見から


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