サンシャイン国際水族館

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※入館



池袋はサンシャインシティ・ビルディングの10階に位置するこの水族館、
ロケーション的にはかなりのハイソ系なだけあり、その入り口付近の外観にもどこかこう洗練されたものを感じた。
まあそれが必ずしもプラスに働くことばかりではないのがこの業界の難しいところでもあるのだが、
この雰囲気から察するにここのそれの狙いはそれなりに成功しているように思えた。


※何気ない工夫こそが



入り口付近にて水槽を宝石箱に見立てた上で、南国系の魚ばかりをディスプレイしているスペシャルコーナーを発見。
華やかな見た目も手伝って行き交う人々の視線をひときわ力強く惹きつけていた。
「サンゴ礁に住む魚たち」でひとくくりにされがちなこの手のアレも、アイデア一つで凡庸なそれの何倍にも活きるというもの。
洗練されているのは外観だけではないということか。




そんな宝石箱コーナーから2点ほどご紹介。
左側のは「アカモンガラ」。
カワハギの仲間であり、サンゴ礁や岩礁の潮の流れのあるところに生息、ときに大群をつくって泳ぐそう。
しかしまあそのノッペリしたツラはなにごとだと思いきや、むしろ突っ込みどころは別にあった。
えーと体色が「アオ」いのに「アカ」モンガラとはこれ如何に? 答え→歯が赤いからだって。ふーん。
微妙な怒りを発しつつ、速やかに次の水槽へと足を向ける。

で、右側のが「アマノガワテンジクダイ」。
インドネシアのバーンガイ諸島近海にしか生息していないテンジクダイの仲間だそうで、
その特徴的な体型やくっきりとしたツートンカラーの体色を持つことなどから観賞用として非常に高い人気を誇る魚らしい。
なるほど、見た目と名前の調和バランスが実にうまくとれている、こら人気が出るのも頷けるというものだ。
魚たるものかくあるべし、その辺りアカなんとかさんも見習ってほしいものだ。


仄暗い水の底から.

そらく海洋系ロマン譚においては最上位クラスに位置すると思われる深海ジャンルの
魚類さん達を扱った水槽があったので、心の臓をドキムネさせながら早速鑑賞してみることに。



で、これは「
アカイサキ」。
イサキの名を冠するわりにその正体は「ハタ科」のなんちゃって系。
水深100m程度の沿岸浅所〜深所間の岩礁域に生息、釣り人の間ではマダイ釣りの外道としてその名を馳せていたり。
あと刺身にしたり皮を付けたまま湯引きにして食すると激ウマということで、食通の間でもそこそこ有名だったりするらしい。



でもってこれは刺身で良し・焼いて良し・煮ても良し、深海のイチローこと「タカアシガニ」さん。
世界最大の甲殻類であり岩手県〜九州西岸以南の水深200〜600m 付近に生息、深海生物のお約束に習い、
その生態系から産卵のしくみ・寿命に至るまで分からないことだらけのカニの王。

まあ我々人類にとっては「焼く・食す・ウマー」の三段論法さえ通用すればこと足りるから別に謎が多くても
まるで構わないのだが、第9使徒マトリエルばりな異質たる外観および普通にひくまであるそのデカさの方には
確実に捨て置けない何かが。次にその長〜い足の可動性をきめる最重要ポイントたる接合部に見入り、
それが球体間接を採用していないことに対して真剣に首をひねる。深海はオタクにとってもこのように謎だらけだ。


無個性讃歌.



円筒系の狭っこい水槽の中をひたすら回りながら集団で泳いでる「マイワシ」さん達にしばし見入る。
「魚へん」に「弱い」というその名前(鰯)まんまな虚弱性を補う為の行動習性だそうだが、
細かいメカニズムはあまり解明されていないらしい。
集合の中の個よりも個を互いに補完しあっての集合を優先させたその姿に社会の縮図を垣間見て、
その中における自分の役割についてしばし静かに考える。
過去とは、未来とは、そして人生とは… 答えは全てイワシの中にある。(といいなあ)


グレイシーの血筋



見栄えのきいたコーナーを安易に作りたいならとりあえずアマゾンやっとけとの水族館限定な「お約束」事項は
ここにもしっかりと適用されていた。

左の方は「アリゲーターガー」。
北米圏限定でなら最大級の淡水魚なのだが、南米はアマゾンの王者「ピラルク」のインパクトが絶大すぎるため、
その影に隠れてコイツ自身の名はあまり知られていないという少し可哀想な位置づけにあるお魚さん。
ちなみにここ日本でも飼育しきれなくなった心ない熱帯魚マニアの無断放流によって、一部河川に釣りキチ三平もかくや
という騒ぎを引き起こしていたりするらしい。
そりゃ近所の一般河川にてこんなワニワニしいの目撃しちゃったら普通にびっくりするしか。

で、右側のはたぶん「アイスポッド・シクリッド」の一種。
これもアマゾン流域に数多く生息する代表的な魚でありその体色に様々なバリエーションがあることから
一部マニアの間では結構な引き合いがあるらしい。
ただ熱帯魚の中でもこういったアマゾン系は餌代が半端なくかかることから、
手を出すにゃこれまたパない覚悟が必要らしく、そういう意味じゃ一見優雅に見える熱帯魚飼育も
わりかし極道な趣味だったりするのかも。



ちなみにこのアマゾン水槽、中にいたのは魚のみならず、鳥や、はたまたヒューマンまで?
まあ水槽の地上部に魚以外の生物を住まわせるというのは、見栄えがきくわ、水生生物とは違った動きも楽しめるわで
コレなかなかいいアイデアだと思うので、管理はさぞかし大変だろうが今後ともどんどんやっていってほしいものである。
ちなみに鳥の方は「ショウジョウトキ」、人間の方は「飼育員さん」。


※館内散策.

館内散策中に目立った魚類を各コーナーより数点ほど紹介してみる試み。



まず沖縄は「慶良間の海」コーナーより。
まず左はおそらく「ハナヒゲウツボ」の雌。
数あるウツボ種の中でも特に鮮やかな体色と変わった形状を持つが故、マニア色の濃い魚を好む一部ダイバー達に人気らしい。

で、右が「ヒゲハギ」。
西部大平洋に生息するカワハギの仲間であり、その名前は顔だけでなく体のあちこちにあるヒゲから由来しているそう。
このヒゲを海藻に見せかけて外敵の目をごまかしているらしいが、いまいち小手先だけの逐電といった感は否めないような。



で、これが「イソバテング」。
この種のメスは海綿生物の体内に卵を産みつけるという変わった習性を持つ。
カイメン内部は外敵に狙われにくく、また水もよく循環し、更に抗菌性まである為、素晴らしく高機能のゆりかごになるらしい。
なるほど、流石はスポンジの原材料、そのお役立ち度及び奉仕精神たるや並じゃない。



次は大西洋のコーナーより「ルックダウン」を紹介。
カリブ海周辺に生息するアジの仲間であり、とにかく食欲が旺盛な魚で、その薄い体のどこに入るのかというぐらい
餌を食べる食いしん坊らしい。
名前の由来はその平べったくて絶壁状態な頭部に付いている眼がまさに「見下ろしている」ようだから、とのこと。
そのあまりの薄さ故、横から正面に位置を変えると消えるように見えるため、鑑賞していた子供達が
「忍者みたい!」「忍者魚だ!」と騒いでいた。魚類の世界じゃ不細工きわまりない体型や面構えをしていた方が
むしろ人気モノになれるようだ。



マングローブの構成種「ヤエヤマヒルギ」を実際に群生させてその生態系を再現している、
アカデミック・ポインツの高いコーナーもあった。
根元でたむろしているのは「テッポウウオ」。
ツェペリさんの波紋カッターもあわやという口腔部からの水流噴射により水面上の葉に止まった昆虫などを
撃ち落として捕食する行動がよく知られている有名魚だが、子供達や大きなお兄さんの間じゃ「ウ」抜きの
「テッポウオ」の方がメジャーな模様。
「え?テッポウオだろ?」「この表示間違ってんじゃね?」 うむ、ポケモン恐るべし。



館内散策のラストは綺麗系で〆ることにする。「グレートバリアリーフ」のコーナーより。
ウメイロモドキ」「キンギョハナダイ」「ハコフグ」ら煌びやかな体色の魚達が思い思いに描くステップにより、
さながら天然の万華鏡がそこに形造られていた。至福のひととき…


※せめてカエルらしく

やたらとサイケな色彩模様のカエルばかりを展示している場所を見つけてゲコっとなる。
この鮮やかな色は警告色と呼ばれ、彼等が毒を持っていることを敵に知らせるものであるらしい。
つまりは「毒ガエル専門」コーナー?こういった特殊系ジャンルに特化したコーナーは学術面のみならず、
エンタの側面からみてもかなり満足度が高いと思われ。



で、左の方が「アシグロフキヤガエル」、右が「イチゴヤドクガエル」。
このヤドク系の毒性はインディオが吹き矢の先端に塗るほど強力であり、一匹で10人は殺せると言われているらしい。
人間社会における危険性の色分けは「青→安全・黄→注意・赤→止まれ」と相場が決まっているものだが、
ここ毒ガエルの世界においては青だろうが黄色だろうが当然赤だろうがオールアウトな模様。
自然界は人が生きていくにはあまりに厳しすぎる。


※大海の放浪者



その特異な外見から英語では「頭だけの魚」こと「headfish」と命名されている有名魚中の有名魚、
マンボウ」さんを見つけて嬉々とする。
頼りがいのありそうで、かつ柔らかさを存分に秘めたその迫力満点のボディにズブズブ埋まってみたいとの
根源的欲求を見ているものに自然と生じさせる彼の存在は、我々百貫系のデブサイクにとっての全ての希望でもある。

成長すると体長は3メートル、重さ1トンにまで達し、鈍重だが重厚かつ頑健であることにかけては
他の追随を許さないこの巨大魚だが、当然のごとく生まれたては極小サイズであり、更には受動的に海中を漂うのみ
という怠惰このうえないライフスタイルも手伝ってか、幼少期においてはキロ10円以下であるミニマムな駄魚の
いいカモにされまくるため、そんな環境下で成魚にまでなれる固体の数はコンマ以下だそう。
その絶望的な確率を数の論理で補うため、雌が排出する卵の数はなんと魚類最高の3億個。
その体型どころか生き方まで不器用かつ不自然きわまりない魚ではあるが、だからこそ多くの人々に愛される魚でも
あるのだろう。


※よーしよしよしよし@ムツゴロウ



更に階段を登ったところに、デパート屋上のようなオープンスペースを発見。
そこに鎮座…いや直立ましましていたのはかのご高名な「フラミンゴ」さん。
どちらが主かはともかく動物園をも兼ねる水族館はわりと多いが、
この手のアニマルさん展示はかなり珍しい部類に入るのではなかろうか。

ましてや「ペリカン」とまでなれば。ちなみに正式名称は「コシベニペリカン」。
その名前の由来である腰のピンク色は羽を広げないと見えないそうなので10分ほどその場に待機し、
今か今かとその刻を待ちわびていたが構えたカメラのシャッターが押されることはついになく…無念である。


※麗しのペンギン君



もちろん水族館付属の動物園といったらコレでしょ!
的な癒されアニマル・ナンバーワンのアレもしっかりいらっしゃった。
「至福」という言葉の真の意味を知りたくばここに来るがいい。
動物天国、今ここに極まれり。ペンギン王国万歳! 
ま、こいつら自体にやる気はまるでないんスけどね。
ま、その無気力感全開なペチペチとした歩き方こそに心癒されるんで、別にいいんスすけどね。



そんな彼らに引っ張られ、更にやる気をなくすラッコ達。
(ラッコは神経質なので、こういった表示があるときは大抵メンヘル真っ盛りと思って間違いない)
無気力感はこうして伝染していくということへの警鐘を重く受け止めつつ、ミーはこの水族館を後にするのであった。



総合.

交通の便の良さ、全方位的な視点からみたロケーション、
ハレとケをしっかりおさえた展示コーナーの数々は、都市型水族館の完成系に加えて
その先の方向性まで明示しているといっても過言ではないほどのクオリティを持つと思われる。
あえて欠点を探すならその欠点がないことこそが、独特の「味」や「雰囲気」といった
オカルト要素が入りこむ隙を与えてくれないことぐらいだろう。
極めて万人向けゆえ、世の中に捻じ曲がった不満を持つミーのような人間以外になら
自信をもってオススメできる。

ファミリー ★★★★☆ 歩けば当たるほど
カップル度 ★★★★☆ 消えてくなってほしいほど
わびさび ★☆☆☆☆ ハイソ系とは同居せず
学術度 ★★★☆☆ 十分に親切
お得感 ★★☆☆☆ 最高級環境なだけあり、かなり割高
建物装飾 ★★★★☆ 洗練の一言
水槽装飾 ★★★★☆ 各コンセプトにマッチ
総合調和 ★★★★☆ 万人向け
憩い場所 ★★☆☆☆ これ!といった場所なし
磯コーナー ★★☆☆☆ とりたてて記述すべき項目なし
ペンギン度 ★★☆☆☆ やる気のなさピカイチ
レア度 ★★☆☆☆ 規模のわりには普通
総合 ★★★☆☆ あくまで私的視点より


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